書店フェアの夏の風物詩ともいえる「新潮文庫の100冊」。39年目の今年は3回シリーズで(7月5日、19日、26日付の朝日新聞)広告展開した。
1976年から続く定番の夏フェア
時代を映すキャンペーンの軌跡
石平聡氏
現在、新潮文庫はじめ3社が書店店頭でしのぎを削る夏の文庫フェア。「読書の時間がたっぷりある夏休みに、中高生はじめ若い層に内外の名作・話題作を読んでもらいたい。そのきっかけを仕掛けたい、というのが『新潮文庫の100冊』フェアの当初からの目的です」と話すのは、新潮社広報宣伝部次長の石平聡氏。1970年代前半の文庫創刊ラッシュを経て、文庫本は「古典名作の双書」から「現代エンターテインメント作品の軽装版」へとその性格を進化させ、文庫市場は一気に拡大した。
そんな中、古典名作と現代作家の話題作100冊を選書した「新潮文庫の100冊」フェアが76年にスタートする。「読書する人」の裾野が一気に広がったこの時期、新潮文庫は仲畑貴志氏、糸井重里氏といった気鋭のコピーライターや人気タレントを広告に起用、80年代から90年代にかけて「文庫=娯楽文化の王道」「夏休み=書店に足を運ぶ時」といったイメージを定着させていく。
1976年7月24日付 朝刊 全15段
ゲームなどの娯楽が台頭、文庫市場が縮小に転じた90年代後半には、読書をすすめるキャラクター「Yonda?」が新潮文庫の広告に登場。「2冊読んだら必ずもらえる」ベタ付けのグッズプレゼントなど「読書」をより身近にしてライトユーザーを開拓。さらに「本好き層」の目に見えない連帯意識に形を与えた「Yonda?」のキャンペーン展開は書店員の絶大な支持を得ていった。
「新潮文庫の100冊」の新聞広告は全15段での出稿が続いたが、2012年に「本屋さんへ行きましょう。」という全5段広告と「注目の新刊」を取り上げた全5段見開きとを組み合わせた展開へとかじを切る。石平氏によれば「従来の、フェアそのものをアピールする広告ではなく、具体的な商品を通してフェアを訴求する見せ方を試みました。「ネット」時代により「新聞」を生かす広告表現はないかと。まあ、『Yonda?』という強いシンボルがベースにあるからこその表現とも言えますが」
「この夏話題の作品」を軸に
書店に誘う「ニュース」を発信
「この秋、新潮文庫はおかげさまで創刊100年を迎えました。それに先立つ形となった今年の『新潮文庫の100冊』フェアですが、新聞広告でも今までにない新しい試みをしています」(石平氏)
まず、7月5日付の広告で100冊の書目と定番ならではの知名度を生かしたキャッチコピーで、書店でのフェアのスタートをアピール。次に2週後の19日付で、夏目漱石『こころ』とジブリ映画の原作『思い出のマーニー』の2冊を取り上げ、さらに翌週26日(土)付では、今夏限定のプレミアムカバー版8冊(『こころ』『人間失格』『羅生門・鼻』など)を取り上げた。「連載から今年で100年ということで朝日新聞紙上で大反響をよんでいる『こころ』と、同じくこの夏話題のジブリ映画『思い出のマーニー』は、普段の読書界の話題とは次元の違う、まさにホットな『ニュース』です。今年はぜひ『新潮文庫の100冊』をそれとリンクさせて発信したいと考えました。『この夏限定』のプレミアムカバーにも新聞広告らしいニュース性がある。3回にわたって同じ朝日新聞の2面にカラーで出稿したことで、フェアの店頭イメージとの連動も図れました」(石平氏)
2014年7月5日付 朝刊 全5段
2014年7月19日付 朝刊 全5段
2014年7月26日付 朝刊 全5段
学校が夏休みに入る7月20日ころが「新潮文庫の100冊」の売り上げのピーク。石平氏は今後の展望を次のように語る。「若い層に『読書は人生をちょっぴり豊かにするよ』とアピールする『原点』ともいうべき思いは、広告を通して変わらずしっかりと伝えていきたいですね。加えてこれからは、「夏目総選挙」(主催・朝日新聞社、特別協力・新潮社)のような、学校の教育現場と新聞社や出版社が連携した取り組みも大切になってくると思います。「社会的信頼度の高さ」では、「新聞」は他のマスメディアを圧倒していますから」
1985年7月12日付 朝刊 全15段
1998年7月7日付 朝刊 全15段
2013年7月1日付 朝刊 全15段
2012年7月5日付 朝刊 全5段
2012年7月13日付 朝刊 全5段×2