場所などの特定地点を示す「位置データ」と、スマートフォンなどから生成される生活者の「屋外行動データ」を組み合わせたものが「位置属性データ」。位置情報をマーケティングに利活用していくための重要な要素となる。
これまで位置情報は、地図情報や施設検索といったコンシューマー向けサービスにおける拠点情報としての利用に限定されており、企業のマーケティング活動への活用は十分に進んでいるとは言いがたかった。マーケティング活動への活用が進まない背景には、利用されていた位置情報が、商業施設の住所情報や営業時間といった「場所」に関連する「位置データ」のみであったことがあげられる。
しかし、近年のテクノロジーの進化や急速に進むスマートフォンの普及により、スマートフォンのGPS等を通じて生活者の「屋外行動データ」を生成・収集しやすい環境が整ってきた。以前から使われていた「位置データ」と、スマートフォンを中心に生成・収集される「屋外行動データ」を組み合わせたものが「位置属性データ」と呼ばれる。
この「位置属性データ」を活用することにより、「どの生活者が、いつ、どのような店舗や施設を訪れたのか?」「いまこの店舗・施設を訪れている生活者が誰なのか?」ということがわかるようになったため、位置情報をマーケティングに活用する可能性が高まってきており、近年注目を集めている。
具体的には、カーナビゲーションシステムやカーナビアプリ。これまでは「位置データ」を活用した経路案内や施設検索の用途のみで用いられていたが、今後本格化するコネクテッドカー時代では自動車などの移動体そのものがICT端末としての機能を有していくため、ドライバーの走行データなどの「屋外行動データ」も生成できるようになり、カーナビゲーションシステムやカーナビアプリをドライバーに対して有益な情報を提供できる情報媒体としてマーケティングに利活用することが可能となる。
例えば、カーナビゲーションシステムやカーナビアプリ上で周辺のコンビニを検索したドライバーに対して、リアルタイムに最も近辺にあるコンビニのキャンペーン情報を提供し当該店舗まで案内するといったような活用方法や、ドライバーの過去の走行履歴をもとに趣味嗜好(しこう)を推定し目的地をカーナビ上でレコメンドするといったような活用方法が考えられる。
さらに今後は、「位置属性データ」とオンラインデータとの融合にも注目が集まっている。「位置属性データ」をもとに顧客セグメントを作成して、当該ターゲットにオンラインで情報を提供することなどだ。例えばリアル店舗への来訪頻度が下がった顧客にオンライン接点(ウェブサイトやデジタル広告)で再来店を促進するなど、「位置属性データ」を活用して、オンラインでの多様な顧客接点を横断したマーケティングが可能となる。
このように、特定の場所を示す「位置データ」と、スマートフォンなどから生成される「屋外行動データ」を組み合わせた「位置属性データ」により、位置情報のマーケティングへの活用がより進んでいくことが想定される。
カーナビアプリの活用例
博報堂DYメディアパートナーズ データドリブンメディアマーケティングセンター ビジネスディベロップメントスーパーバイザー
SIer(システムインテグレーター)での大規模案件のプロジェクトマネージャー、インターネット事業会社にて事業サービス開発に従事した後、2015年博報堂に入社。2016年より博報堂DYメディアパートナーズ兼務。デジタル領域を中心に「位置属性データ」を活用した新規メディアサービス開発を担う。