「eスポーツ」

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「eスポーツ」とは、「electronic sports」の略称で、コンピューターゲームをスポーツ競技として捉える際の名称。体育のような身体競技ではなく、チェスや将棋のようなブレーンスポーツに分類される。

 「eスポーツ」市場は、世界全体でみると2018年段階で約1,000億円、今後2021年までCAGR(年平均成長率)27%の成長が見込まれ、2022年には約3,000億円まで拡大するといわれている。また現在の市場構成はその約6割を広告収入・企業協賛が占めており、その後をメディアライツ等が続く。

 特に近年、北米・アジアにおいて成長が著しいが、それらは約20年をかけて成熟、大衆化されてきた。それに比べると日本は未だ黎明(れいめい)期にある市場だが、海外の流行やゲームユーザー人口の多大さから海外以上の成長が期待されている。その表れとして、日本国内においてeスポーツに関する報道は爆発的に増加し、2018年の報道数は2014年の120倍以上となっている。

 もちろん、eスポーツを取り巻く環境のすべてが順風満帆なわけではない。ゲームをスポーツと認めるべきかといった議論や、プレーヤーへの誤解や偏見、選手の地位向上、法的な規制などまだ課題も多い。また、そもそも「eスポーツ」は後付けの言葉であり、様々なゲームコミュニティーが古くから自主自立で大会を行ってきた背景があるのだが、一部のファンからは昨今の過熱ぶりを前に、プレーヤー目線の失われたビジネス優先の市場となることに不安と嫌悪を感じる声も聞こえる。

 したがってどこまで予測通りに市場拡大していくか不明確な部分もあるが、それでもマーケティング観点からの期待値は高い。eスポーツの認知で最も高いスコアをあげているのは10-30代の男性若年層であり、そのスコアは2017年時点14.4%だったものが、2018年には41.1%まで伸長。テレビの視聴率が低下し、デジタルのシェアが拡大する10-30代男性は、従来のマスメディアで捕捉することの困難なターゲットとなりつつあり、今後eスポーツを通したアプローチの期待できるターゲットである。

 そしてそのeスポーツファン層の興味関心を深掘ると、彼らはゲームだけでなくスポーツや音楽、映画等のエンターテインメントに高い関心を持ち、それらへの支出を惜しまず、デジタルコンテンツへの抵抗も少ない、これからのマーケットにおける有力な顧客層だということがわかる。また彼らはスマホを中心に生活しながら、SNS利用者と活用度のスコアが共に高く、自ら積極的に情報を発信していく、情報サーチ、シェアに活発なデジタルエンタメ男子でもある。

【eスポーツ興味層 時間やお金をかけたい興味関心分野】

<博報堂自主調査 調査概要>
調査目的:eスポーツプレイヤー、ならびにeスポーツ興味関心層の生活意識・興味領域を明らかにする。
調査条件:除外:広告・マーケィング/配信対象:10-40代の男女 5,000名 ※人口構成比で回収
調査方法: Webアンケート調査
調査期間:2018年9月

 さらに彼らの多くはeスポーツイベントに協賛した企業へ軒並みポジティブな反応を見せており、「ありがとう〇〇社!」といったブランド担当者にとって喜ばしいツイートも多い。eスポーツは、マスでは獲得の難しいターゲットと企業のエンゲージメントを大きく高めることができる可能性を秘めたコンテンツであることが伺える。

 eスポーツは参加者が観戦者となり発信者となるという、SNSが主要コンテンツとなる現在において、ある意味、時代に即したスポーツコンテンツである。すべての課題が解決されるにはまだ時間を要するだろうが、それでもこれらを乗り越えうる機運と勢いは日ごとに高まっており、更なる市場の拡大が期待される。

加藤俊太郎(かとう・しゅんたろう)

博報堂 コンテンツビジネス室 ビジネスディベロップメントディレクター

営業として、家電、出版、映画、ゲーム等の業界を担当しアカウント業務全般に従事。 2012年より営業業務と並行して、営業ノウハウとコンテンツ系クライアント担当から得たコンテンツビジネスナレッジを活かしながら、コンテンツビジネスのプロデュースを本格化。