インターネットやIT技術などのデジタルを活用したマーケティングをデジタルマーケティングといいます。現代では、情報技術やスマートフォンの普及に伴い、さまざまな場面でデジタルデータの取得が可能です。それに伴い、企業の多くがデジタルマーケティングに取り組むようになり、企業成長のためにも欠かせない要素の一つとなっています。この記事では、デジタルマーケティングの概要や種類、メリット、デメリットやWebマーケティングとの違い、生成AIの応用方法などを紹介します。

Getty Images

デジタルマーケティングとは

　そもそもデジタルマーケティングとは何でしょうか。
　ここでは、デジタルマーケティングについて詳しく解説します。

デジタルマーケティングの定義

　デジタルマーケティングとは、デジタル技術によってオンラインで得られるデータを活用したマーケティング手法のことです。
　デジタル技術には、WebサイトやSNS、スマホアプリ、検索エンジン、ビッグデータなどが含まれます。
　現代はスマートフォンを一人ひとり持つ時代となり、消費者は商品やサービス購入の前に口コミやECサイトをチェックして時間をかけるようになりました。
　消費行動も多様化しており、商品やサービスを販売するためには、ユーザーに合わせた訴求を行う必要があります。
　そこで重要になってくるのが、デジタルデータを駆使したデジタルマーケティングです。

デジタルマーケティングとWebマーケティングの違い

　WebマーケティングはWebを中心に展開するマーケティングであるため、デジタルマーケティングに包括されるマーケティングです。
　ここでは、デジタルマーケティングとWebマーケティングの違いを解説します。

デジタルマーケティングの範囲とWebマーケティングの範囲

　デジタルマーケティングの範囲とWebマーケティングの範囲を図で表しています。
　デジタルマーケティングはオンライン上のマーケティング活動すべてを指しますが、WebマーケティングはWeb上だけの活動に限定されるのが違いです。
　例えば、SEOやオウンドメディアはデジタルマーケティングとWebマーケティングそれぞれに該当します。しかし、AIやビッグデータを用いたマーケティングはデジタルマーケティングとなります。

共通点と相違点

　デジタルマーケティングとWebマーケティングの大きな相違点は活動目的です。
　Webマーケティングはサイトに訪問してもらい、最終的に利益につながるユーザーを獲得することが目的となります。一方、デジタルマーケティングはサイトへの訪問を促すだけでなく、サイトを訪問した顧客の育成や見込み顧客の発掘も目的です。
　なお、どちらもデジタル技術を駆使してマーケティング活動を行い、オンライン上で顧客にアプローチするという点では共通しています。
　また、両者の厳密な使い分けは決まっておらず、企業や業界によっても使い分けが異なる場合もあります。

デジタルマーケティングの種類

　デジタルマーケティングにはどのような種類があるのでしょうか。
　ここでは、デジタルマーケティングの主な種類を紹介します。

コンテンツマーケティング

　コンテンツマーケティングは、Webサイトや動画、ホワイトペーパー などのコンテンツを用いたマーケティング手法です。
　広告のように直接購入を促すのではなく、ユーザーが抱える課題やニーズに応じた情報を提供し、見込み顧客に育てます。
　Webマーケティングではオウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディアを組み合わせたトリプルメディア戦略も効果的ですが、その中でオウンドメディアはコンテンツマーケティングに包括される媒体の一つです。コンテンツマーケティングにより、SEO対策の強化につながるメリットもあります。

SEO（検索エンジン最適化）対策

　デジタルマーケティングにおけるSEO（検索エンジン最適化）とは、検索結果で自社サイトを上位に表示させるための施策です。
　SEO対策を行い、検索エンジンに評価されてクリックしやすくなることで、自社サイトへの流入数を増やせます。
　そのためには、Webサイトをユーザーに有益なものにし、サイト構造をエンジンにわかりやすい状態に保つことが重要です。

メールマーケティング

　メールマーケティングとは、メールを用いて顧客とコミュニケーションを取り、最終的にコンバージョンに導くマーケティング手法です。
　見込み顧客の育成やサービス、商品の購入、顧客との関係維持、セミナー集客、ブランディングなどの目的で用いられます。
　ユーザーに継続的にメールを送ることにより、商品やサービスに触れる頻度が高くなり、信頼度や愛着が湧きやすくなります。商品やサービスへの理解度が深まり、リピート顧客の増加にもつながるでしょう。

SNSマーケティング

　SNSマーケティングとは、SNSを活用して商品やサービスの認知度向上、販売促進、ブランド構築などを行うマーケティング手法です。
　具体的には、SNS広告、SNSアカウント運用、SNSキャンペーンの実施などがあります。
　SNSを利用する一般消費者や企業は増加しており、商品やサービスによっては検索エンジンよりもSNSで情報を集めるユーザーが多い場合もあります。
　また、商品やサービスの購入を決定づける要素として口コミも大きく、SNSの口コミ次第で売上が大きく変わることも少なくありません。
　そのため、今後もSNSマーケティングはさらに重視されることが予想されます。

インフルエンサーマーケティング

　インフルエンサーマーケティングとは、特定の分野や領域において影響力を持つインフルエンサーに製品やサービスを紹介・宣伝してもらう施策です。
　従来は自社から消費者に対してメッセージを発信するのが中心でしたが、潜在顧客に興味を持ってもらいにくいという課題がありました。
　インフルエンサーマーケティングでは、すでにフォロワーから信頼されている人を介して、消費者の観点から共感性の高いコミュニケーションが可能です。
　潜在顧客に商品やサービスに興味を持ってもらい、認知度の拡大や購買につなげることができます。

デジタルマーケティングが重要な５つの理由

　デジタルマーケティングは消費者のニーズを満たし、企業の利益を最大化するために欠かせません。
　ここでは、デジタルマーケティングが重要な5つの理由を解説します。

① データ分析に基づく戦略と意思決定

　デジタルマーケティングは、顧客との接点がデジタル化した現代において、データ分析に基づく戦略や意思決定を行ううえで重要です。
　収集したデータを基に意思決定や課題解決を行うアプローチをデータドリブンといい、データドリブンによって正確で信頼性の高い意思決定が可能になります。
　消費者の選択肢が増え、消費者行動の多様化や複雑化が進んでいる昨今において、データドリブンは必要不可欠です。また、データに基づく判断は、偏見や主観などを取り除くことができるため、誤った判断による経営のリスクを減らすことにもつながります。

② 広範囲なリーチと精度の高いターゲティング

　デジタルマーケティングは、多種多様なプラットフォームへの広範囲なリーチと精度の高いターゲティングにより、見込み層の高いユーザーにリーチできます。
　例えば、SNS広告は広告配信を行う際にユーザーの年齢や性別、興味関心に合わせた広告を表示させることが可能です。不特定多数にアプローチするのではなく、ターゲットを絞り込んだ効果的な訴求を行うことができます。

③ 高いコスト効率

　コストを抑えながらマーケティングを行うためにも、デジタルマーケティングは欠かせない施策の一つです。
　デジタルマーケティングは、比較的低コストで広告やプロモーションの展開ができます。
　例えば、Googleなどの検索連動型広告はクリックされた場合にのみ広告費がかかるため、余分なコストが発生しません。
　予算が限られている場合や予算を抑えたい場合にも、少ない投資で広い範囲にリーチできます。

④ データ収集と改善におけるスピード感

　デジタルマーケティングは、リアルタイムでのデータ収集や改善ができることも大きな特徴です。従来のマーケティングでは、キャンペーンの効果測定に時間がかかり、データ収集が難しいという課題がありました。
　その点、デジタルマーケティングにおいて企業はターゲットの行動や反応をすぐに察知し、迅速に戦略を調整することが可能です。
　例えば、リアルタイムでのデータ収集から特定の商品の売上が伸びていることが把握できた場合、即座にプロモーションを展開することで売上を大きく伸ばせる可能性があります。
　情報の詳細や重要性などをいち早く把握できれば、ビジネスチャンスの獲得だけでなく、リスク回避にもつながるでしょう。

⑤ 顧客とのエンゲージメント強化

　デジタルマーケティングは、顧客とのエンゲージメント強化のためにも重要です。
　エンゲージメント強化とは、企業と顧客との信頼関係や絆を深めることです。エンゲージメントが高いほど顧客は企業や商品、サービスに愛着や信頼を持ちます。
　デジタルマーケティングがエンゲージメント強化につながる理由は、WebサイトやSNSなど、さまざまなプラットフォームを通じて顧客とのコミュニケーションが可能なためです。
　デジタルマーケティングでは顧客データを活用して一人ひとりに合わせた商品提案やコンテンツの提供ができます。また、SNSやWebサイトでの行動データから、タイムリーなプロモーションやサポートも可能です。
　これらを通して顧客との接点を増やすことにより、顧客との関係性が深まり、長期的な収益にもつながるでしょう。

生成AIとデジタルマーケティング

　近年、デジタルマーケティングで重要度が高まっているのが生成AIの応用です。
　ここでは、生成AIとデジタルマーケティングについて解説します。

生成AIの具体的な応用方法

　生成AIは、コンテンツ制作、広告運用、ターゲティングに資するセグメント作成、予測分析などさまざまな用途で応用できます。
　生成AIをデジタルマーケティングに生かすことにより、業務効率の向上やコスト削減、リスク低減などにつながるでしょう。単純作業や流れ作業の負担を減らし、施策立案や戦略立案に時間をかけることができるため、精度の高いマーケティング施策の打ち出しも可能です。

コンテンツ制作の自動化・量産

　デジタルマーケティングに生成AIを応用することで、コンテンツ制作の自動化や量産が可能です。通常、コンテンツ制作は時間がかかる業務であり、自社リソースの圧迫や外注コストがかかるなどの課題を抱えている企業も多くあります。
　生成AIを用いることで自動的にコンテンツ制作ができるようになり、リソースやコストをかけることもありません。
　例えば、生成AIで文章や画像、動画、広告文などを簡単に短時間で作成できます。コンテンツ制作に割く時間が減ることにより、施策立案に使える時間が増え、より正確性の高い戦略が実行できます。

広告クリエイティブの最適化

　生成AIを用いることによって、広告クリエイティブの最適化を図ることができます。
　広告のキャッチコピーやデザインを制作するにあたって、A/Bテストを何回も繰り返しながら適切なものを見極めなければなりません。
　その点、AIを活用するとビッグデータの分析結果をダイレクトに活用できるため、文章やデザインを効率的に作り出すことができます。広告クリエイティブの最適化にかかるリソースやコストを減らしながら、品質の高い広告クリエイティブを生み出すことができます。

顧客データと予測分析、ターゲティング

　生成AIは膨大な顧客データを通じ、顧客のパターンを特定し、将来の傾向を予測分析できます。
　顧客データとして挙げられるのは、顧客の購買履歴、Webサイトでの行動履歴、問い合わせ内容、SNSの投稿内容などです。これらのデータから、顧客がどの商品やサービスに興味を持っているかや、購入頻度、季節ごとの購買パターンの把握ができます。
　過去データから学習したAIは、次に顧客がどのような行動を取る可能性が高いか予測分析します。これにより、購入頻度が高い顧客には定期購入プランの訴求、低額商品の購入が多い顧客にはクーポンの発行など、顧客の特性に合わせた施策が実現可能です。

顧客満足度を向上させるチャットボットとカスタマーサポートの強化

　近年、生成AIによるカスタマーサポートの強化やチャットボットの導入をする企業が増えています。
　AIチャットボットを導入することで、顧客や社内からの問い合わせに対し、自動で回答を生成できます。AIは過去のやりとりデータを集め、適切な回答を自己学習できるため、頻繁に寄せられる問い合わせの回答パターンを学習して自動応対が可能です。
　近年は学習データの蓄積量が多くなったことで、人間と会話しているような自然な文章を生み出すこともできます。
　また、オペレーターが対応を行う際にも、AIに必要な資料の提示をしてもらったり、音声録音の自動要約をしてもらったりなど、さまざまなシーンで活用できます。

デジタルマーケティングのメリット・デメリット

　デジタルマーケティングを行うにあたって、どんなメリットやデメリットがあるかを把握しておく必要があります。
　ここでは、デジタルマーケティングのメリット・デメリットを解説します。

デジタルマーケティングのメリット

　デジタルマーケティングのメリットは以下の通りです。

• ユーザーの行動をリアルタイムに把握できる
• 複数チャネルでアプローチできる
• ターゲティングの精度が高い
• コストパフォーマンスが高い
• 顧客とのコミュニケーションを活発化できる
• 新しいビジネスチャンスを創出できる

　デジタルマーケティングのメリットを生かすことで、効果的なマーケティング活動が展開できます。
　WebサイトやSNSなど多様なチャネルでアプローチでき、従来のマーケティング手法に比べて低コストで高い効果を得られることもメリットです。
　各チャネルで獲得したユーザーにはAIチャットボットやメールマーケティングなどを活用し、疑問や課題を解決できる仕組みを作っておくとリード育成にもつながります。

デジタルマーケティングのデメリット

デジタルマーケティングのデメリットは以下の通りです。

• 専門的な知識やスキルが必要になる
• 情報漏洩やサイバー攻撃のリスクがある
• 競合と差別化を図ることが難しい
• トレンドに依存しやすい

　デジタルマーケティングは最新のトレンドや技術に依存しやすいため、顧客がトレンドに乗らない場合は成果が出にくいデメリットがあります。また、専門的な知識やスキルが必要となることや、セキュリティの面でのリスクにも注意が必要です。

効果的な活用方法と施策

　デジタルの特徴は数値化できることです。デジタルマーケティングを効果的に活用するためには、目的やターゲットに合わせた施策を選定して戦略的に運用することが重要です。
　運用においては、ターゲットに合わせた施策を選定し、KGI・KPIを設定したうえでPDCAサイクルを回す必要があります。
　KGIを最終的なゴールとして設定し、それに基づいて中間指標であるKPIを設計します。このプロセスにより、進捗状況を数値化して明確な道筋を描くことができます。

デジタルマーケティングの始め方

　デジタルマーケティングはどのように始めたらよいのでしょうか。
　ここでは、デジタルマーケティングの始め方を解説します。

目標設定と戦略立案

　デジタルマーケティングでは、まず明確なゴールを決めて、そのうえで目標設定や戦略を立案します。
　目標設定では戦略の立案をスムーズに行えるように、具体的で測定可能な成果を明確に定義することが重要です。対象となる商品やサービスにおいても、デジタルマーケティングが果たすべき役割を明確にしましょう。
　例えば、デジタルマーケティングで「月々の売上を10％増やす」「月間の問い合わせ件数を10件増やす」などです。
　そして、これらの目標を達成するために、「SEO対策に力を入れて認知度を増やす」「SNS運用を始めてキャンペーン情報を発信する」などの具体的な戦略を立案します。

用意するツールとリソース

　デジタルマーケティングの成功のためには、ツールとリソースを活用して効率的に運用することが重要です。
　デジタルマーケティングに使用するツールとして以下が挙げられます。

• プロジェクト管理ツール
• 顧客関係管理ツール
• コンテンツ作成ツール
• SEO管理ツール
• ソーシャルメディア管理ツール

　デジタルマーケティングではこれらのツールを組み合わせて活用することで、効率的で効果的なマーケティングができます。
　また、デジタルマーケティングには、データ収集や分析、AIの取り扱いなど、専門的なスキルを持つ人材が必要不可欠です。
　社内にデジタルマーケティングに強い人材がいない場合は、即戦力として外部リソースを活用しつつ、社内育成を進めていく必要があります。

全体のフローとポイント

　デジタルマーケティングでは、大きく分けて以下の流れがあります。

1. 認知と集客：SEO、SNSなど
2. リード獲得：問い合わせ、資料ダウンロードなど
3. 売上最大化：アプローチの強化、フォームの改善など

　それぞれのフェーズでは実施すべき施策が異なります。
　例えば、集客が上手くいっていない状態であれば、SEOやSNSなど集客につながる施策を強化しなければなりません。
　また、集客ができているものの、問い合わせや資料ダウンロードにつながらない場合は、自社商品に興味を持ってもらうようにユーザーとコミュニケーションを取るための施策を実施します。
　マーケティング全体の流れからデジタルマーケティングの全体像を整理し、サービスの課題に合わせて施策を組み合わせていくことがポイントです。

デジタルマーケティングの資格

　デジタルマーケティングの知識を深める方法として、関連する資格取得を目指すという方法もあります。
　ここでは、デジタルマーケティング関連の資格について解説します。

役立つデジタルマーケティング資格

　実際の業務においても役立つデジタルマーケティング資格として以下が挙げられます。

• ウェブ解析士
• Google広告認定資格
• Webアナリスト検定
• マーケティング・ビジネス実務検定
• Googleアナリティクス個人認定資格

　デジタルマーケティングだけを詳しく取り扱った資格はありませんが、上記の資格取得のためにはデジタルマーケティングの知識やスキルも必要です。
　これらの資格を取得することにより、デジタルマーケティングの知見を深めることができます。

資格取得のための学習ツール

　デジタルマーケティングの資格を取得するためには、学習ツールの利用がおすすめです。
　例えば、Googleスキルショップでは、Google広告やGoogleアナリティクスなど、Googleが提供するツールの使い方を無料で体系的に学ぶことができます。また、Googleデジタルワークショップでは、e-ラーニング形式でデジタルマーケティングの知識を無料で学ぶこともできます。
　これらの学習ツールはデジタルマーケティングの資格取得だけでなく、デジタルマーケティングの知識やスキルを深めるための方法としても効果的です。
　目的や目標に応じて自分に合った最適な学習ツールを選びましょう。

デジタルマーケティングまとめ

　デジタルマーケティングにはさまざまな手法があるため、目的やターゲットを明確にし、ユーザーを理解したうえで最適な戦略を立てることが重要です。
　目的を明確にしたら、それを達成するためには何が必要かどうかを把握する必要があります。そもそも目的が課題解決に合っていない、目的に対する施策が適切でなければ、デジタルマーケティングで成果を出すことは困難です。
　また、デジタルマーケティングではデータ収集やデータ分析も必要となるため、これらを実行するためのリソースや環境を整える必要もあります。
　自社にデジタルマーケティングのノウハウがない場合は、高い専門性やスキルを持つ外部の組織やプロの人材に相談・依頼するのも方法の一つです。