地域農業をささえ、農家をはじめ地域住民の生活を豊かにするため、さまざまな活動をおこなっているJA(農業協同組合)。「社会における問題は自分たちの課題」という意識で、地域に密着した取り組みを続けています。JA全中は、JAグループを代表して農業者の意見をまとめ、政府に伝えたり、広く国民へのメッセージを発信しつづけています。
地域から逃げない 文化の担い手でもある職員
農業協同組合は、第2次世界大戦後に農村部の貧困を解消する目的で、国策として農家のために作られた組織。だが、現在は農村部でも非農家が増え、その役割は多様化している。
「今では農業振興に加え、地域の住民を含めた、農村の活性化を目指す地域の協同組合としての性格もあわせ持っています」と話すのは、全国農業協同組合中央会・広報部長の樋口直樹氏。今では、地域のJAが担う役割は多岐に亘る。その根底にあるのが、農家と地域の人たちの生活を豊かにし、日本の食を守ること。JAグループの活動すべてが、社会貢献だとも言えるだろう。
JAの職員は、地域の課題に応じた農家のサポートという日常業務に加え、農村部の祭りや消防団の活動など、地域の文化の担い手としても活躍しているという。
「株式会社であれば、事業がうまくいかなければ撤退します。けれども、JAは各地域にずっと寄り添い続ける。言い換えれば、地域から逃げず、責任を持つという覚悟がある。だから、地域社会における問題は自分たちの課題であるという認識で取り組んでいます」(樋口氏)
課題は多岐に亘るというが、食料自給も日本の大きな問題の一つ。
「食料の安全保障という面から、自分たちの食料を自分たちで供給できる体制を作ることが大事。また、日本の各産地が自分たちの農産物を主張できる強みを持ち、ブランド化を進めることも重要です。最近は、「夕張メロン」のように、地理的表示保護制度(GI)という産品の名称(地理的表示)を知的財産として保護する制度もできました。既にいくつかの産品がブランドとして登録されています。こうした動きは、輸出を拡大するためにも必要なことです」と話す。
地域農家の現状とメッセージを新聞広告に込める
消費者に安全なものを安心して食べてもらいたい、という課題もある。日本の農産物の安全性をアピールするため、子どもや母親を対象にした食育のワークショップなどを、各地のJAが開催しているという。
さらには、地域の活性化にも取り組んでいる。地域で安心して暮らせるよう、地域のJAでは、デイケアサービスなどの介護事業や健康管理活動を実施し、また厚生連病院も各地で展開している。
「地域の人が健康で元気に暮らせるような取り組みを提供し、助け合い活動もサポートしています。こうした取り組みは行政や企業と連携をとりながら、取り組んでいます」と説明する。
「私たちJA全中の役割は、自主的に活動するJAを支援し、一方でJAグループを代表し、グループ全体の方針を策定したり、政府へ農業者の要望を伝える役割を担っています」(樋口氏)
コミュニケーションツールとして活用しているのが新聞だ。東日本大震災とそれに伴う原発事故の影響を今も受ける福島農家の現状を広く伝えるため、2016年3月4日朝刊では、全15段広告を掲載。「福島のものづくりは、日本でいちばんの安心づくりだ。」というキャッチコピーは、非破壊検査機器を導入して安全管理をしていることを伝えたものだ。
「震災から5年が経ったいま、改めて福島を産地の一つとして紹介したい、という思いがありました。だから、できれば『あんぽ柿』のビジュアルだけで展開したかった。けれども、地元で働く農家の方々からは、放射能にまつわる不安を取り除くために、最先端の機器を導入してチェックしていることをアピールしたいという声があり、二つのビジュアルを融合したデザインに決まりました」と明かす。
この広告には、JAグループは震災のことを忘れず、これからも被災地を応援していくという強いメッセージも込められている。
今後については、樋口氏は次のように語る。
「復興を応援する広告に加え、地域の農家やJAの取り組みを広く国民に対して積極的に情報発信することを続けてゆきたいと考えています。JAとはどういう組織か、地域で様々な役割を担っていることを伝えていくのもJA全中の使命。行政だけではできないこともJAと連携することでできることもあるはずです」