1983年の開園から30周年を迎えた東京ディズニーリゾートでは、親・子・孫の3世代での来園を促す「3世代ディズニー」と称したキャンペーンを実施している。
昨年11月と今年1月には、朝日新聞の広告特集「ボンマルシェ」内で芸能人ファミリーが3世代でディズニーリゾートを訪れた様子をタイアップ広告で掲載した。専用のホームページも開設しており、3世代で一緒に楽しめるアトラクションの紹介をはじめ、3世代全員で泊まれるホテルやお得なチケットの案内など、祖父母である団塊世代を呼び込むマーケティングを行っている。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの営業本部営業一部営業四課係長の亀田美紀香氏と同係長の石田一仁氏に、「3世代ディズニー」キャンペーンを始めた経緯や目的などについて聞いた。
来園から遠ざかる年代層の誘引で「3世代」に着目
――「3世代ディズニー」を企画した経緯は。
亀田 東京ディズニーリゾートは「ファミリーエンターテインメント」をテーマに運営しており、メーンとなる客層はファミリー層です。子どもが成長して友人同士で来られるようになると、その親世代である40代後半以上の来園率が下がる傾向があります。この世代を「ニューエイジング層」と呼んでいるのですが、その「ニューエイジング層」に向けてどのようにアプローチしていくかが課題の一つです。この対策として、これまでも様々な取り組みを実施してきました。大人の女性同士での来園を促進するためのテレビCMをはじめ、「ディズニーのおとな旅」という切り口でホームページを開設したり、チケットと宿泊をセットにした「東京ディズニーリゾート・バケーションパッケージ」という豪華プランの提案をしたり、45歳以上の方限定のお得なチケット「45PLUSパスポート」(平日限定)などの販売もしています。そういった流れの中で派生的に出てきたのが、「3世代で来ていただく」というアイデアでした。
石田 3世代に向けたコミュニケーションを本格的に考え始めたのは2008年頃からです。少子高齢化を考えると、ファミリー層の母数は確実に減っていきます。直近の課題ではないのですが、先々を見据えて考えたとき、増やす余地のあるのは「ニューエイジング層」であり、団塊の世代が65歳を迎えた今は、定年退職をされて金銭的に余裕のある方も多い。特にかわいい孫への出費なら喜んで……という傾向も強い。そういった背景からも、3世代による来園に着目しました。
――朝日新聞の広告特集「ボンマルシェ」でタイアップ広告が2回掲載されました。
亀田 実際に感じたことや体験したことを記事にしたかったので、モデルではなく本物の3世代のご家族で遊びに来ていただけるキャスティングをお願いしました。私は、三遊亭好楽さんファミリーの撮影に立ち会ったのですが、本当に皆さんに楽しんでいただけたようで、笑顔の写真と一緒に、率直なコメントも掲載できました。「東京ディズニーリゾートは3世代でも楽しめる」ということを知っていただくには、じっくり読んでもらえる媒体で、しっかりと掘り下げて伝える必要があると感じています。祖父母世代はもちろん、その子ども世代も読んでいるメディアとして新聞はピッタリだと思います。
広告特集「ボンマルシェ」
遠方の来園者には宿泊を含む特別プランを告知
――新聞広告以外のプロモーションは。
亀田 雑誌広告の他、ラジオにも出稿しています。ラジオでは「おじいちゃん、一緒に行こうよ」と孫が誘いかけるようなストーリー仕立てにしたものもあります。祖父母を誘うのを決めるのは、母親(娘)ということもあるので、「今度はおばあちゃんたちを誘ってもいいね」と思わせるきっかけになるように工夫しています。「3世代ディズニー」のホームページを開設しているので、そこに誘引するためのバナー広告もインターネットサイトに出稿しています。「ファミリー=3世代」という発想につながるように、今年度からは広告のビジュアルにも、祖父母世代の写真を入れるようにしています。
石田 テレビCMは首都圏以外の地域で放送しています。宿泊が必要なエリアの方々に向けて、「せっかく行くなら、3世代で」というご提案をしています。祖父母が一緒だと予算の幅も広がりやすいので、ホームページでも孫の誕生日や家族の記念日に合わせた、ちょっと豪華なプランも紹介しています。リゾート周辺のホテルに宿泊していれば、途中で部屋に戻って休憩もできますので、祖父母世代の体力を心配されている方々にも安心して利用していただけます。また、子ども世代は首都圏に住んでいて、祖父母が地方に住んでいる場合、リゾート周辺のホテルで合流するというケースもあります。
――3世代マーケットを意識した今後の取り組みを教えてください。
石田 例えば、現行の広告コミュニケーションで45歳以上の方々が普通に楽しんでいるという印象づけができれば、現在30代の方々が40代になった時も、自然に違和感なく来ていただけるのではないかと考えています。まさに今はその基盤を作っている状況です。
また、具体的に決まっているものではありませんが、例えば、東京ディズニーシーの「トイ・ストーリー・マニア!」のような、どの世代でも楽しめるアトラクションの導入や、お子様や若いゲストが能動的に楽しめるプログラムと、親・祖父母世代の方が休憩できるような場所などの環境改善を組み合わせた投資などについて検討しています。