目を引く分割スタイルで訴求した出版広告

 宝島社は、6月11日付朝日新聞夕刊1面に『シャーロック・ホームズの冒険DVD BOOK』の分割広告を出稿した。同社宣伝部・宣伝部長の新井浩志氏に聞いた。

 

目標は、あまり書店に行かない層にも届く広告

宝島社宣伝部・宣伝部長 新井浩志氏 宝島社宣伝部・宣伝部長 新井浩志氏

――変形広告を活用された背景やねらいは?

 当社は従来の雑誌や書籍にはとどまらない新たなコンテンツを開発し、展開しています。たとえば、ブランド最新カタログにオリジナルのブランドアイテムを付録につけた「ブランドムック」や、作品の解説ムックにDVDがついている「DVD BOOK」などがあり、好調に推移しています。これらは、書店やコンビニエンスストアといった流通ルートを駆使した、いわば「本屋さんでバッグやDVDを売る」という新しい試みです。これは、従来の雑誌や書籍とは違う層が書店に足を運んでくれることを狙ったものです。そういった層に情報を届けるには、本が好きな層に訴求する従来の出版広告のスペースや形態とは違ったものがいいのではないかと、変形広告に注目しました。夕刊1面の分割広告は、これまで海外ファッションブランドが上手に活用しています。このスペースならば、「ふだん書店には足を運ばないけれどブランド品には興味がある」という人や、映像作品がほしい人などにも見てもらえるのではないかと判断しました。

――クリエーティブで工夫された点は?

2009年6/11 夕刊1面 2009年6/11 夕刊1面

 分割広告は、意外性はあるのですが、ともすると二つの別々の広告に見えてしまいがちです。色調を合わせたり、右から左へ誘導する矢印をアイコンとして配置したりするなど、左右の広告が呼応するように見せる工夫をしました。また、新しいタイプの商品なので、どこで買えるのかをしっかりと伝えるために、「お求めは全国書店まで。インターネットでもお求めいただけます。」と、書店やウェブサイトに誘導する文言を入れました。

――反響は?

 「シャーロック・ホームズの冒険DVD BOOK」は、広告が載った日の夕方には売上数がグンと上がり、広告効果の高さを実感しました。非常に売れ行きがよいため、書店や取次店といった流通関係からも好意的にとらえてもらっています。

――今後の展望をお聞かせください。

 当社のコンテンツは非常に一般性が高く、この意味では、本というよりも消費財や日用品のようなものだと考えており、宣伝やマーケティングについても書籍としての手法ではなく、日用品のように訴求すべきだと思っています。こうしたこともふまえ、スペースの使い方だけでなく、広告表現についても、届けたい層にきちんと届くような工夫を常に考えていきたいですね。