活字の力と面白さをテーマに「書き下ろし100冊」を刊行

 2009年に創業100周年を迎える講談社。これを記念して今年11月から2年間にわたって進める「書き下ろし100冊」の刊行企画について、同社100周年特別企画統括文芸局次長の金田明年氏にうかがった。

金田明年氏 金田明年氏

── 企画の内容と背景についてお聞かせください。

 文芸、児童書、ノンフィクション、学芸書の各分野におけるベストセラー作家を中心に、書き下ろしで100冊、作品を執筆してもらうという企画です。

 近年は、作家の方が書き下ろし作品を発表する機会が減っています。文芸誌等に連載したものをまとめて、単行本として発表することが通例となっているからです。

 一方で、そうした連載作品よりも、単行本になってからまとめて読みたいという方が圧倒的に多いのが現実です。そのため、作家が世に作品を発表してから、実際に大多数の読者の手に届くまで数年もの時間がかかることがあります。

 ところが書き下ろしなら、手に取った読者すべてがファーストリーダーですし、作者が書き終えたばかりの作品を、読者にいわば産地直送のようにお届けできる。

 そこで、創業100周年を機に通常の出版形態とは異なる特別な試みとして、書き下ろしにこだわった企画の準備を2005年から進めてきました。100年間の感謝を込めた読者の皆さんへの「ギフト」でもあるのです。

── 8月24日付朝日新聞に全15段広告を出稿されました。

 執筆予定の方々を発表するとともに、9月27日に行われたキックオフ・イベントである講演会の参加募集も兼ねましたが、予想を上回る応募に手応えを感じました。

 活字の力、活字の面白さを見直したいという本来の企画目的を考えると、発表媒体を新聞とするのはとても自然なことでした。ビジュアルは、100冊統一で本の帯をデザインしていただく祖父江慎氏にお任せしました。

── 独特のキャラクターが印象的です。

 祖父江さんが持たれている講談社のイメージは、「常に、前を向いて歩く」だそうです。それを表現していただきました。

── 今後の展開は。

 11月から奇数月ごとに刊行していきます。この100冊から大変な傑作が生まれていくと確信していますので、2年間、尻すぼみになることなく「次々大作が発表されてすごい!」と言われるように、編集だけでなく販売・宣伝も全社一丸となって取り組んでいきます。

8/24 朝刊
吉田修一著『元職員』
本多孝好著『チェーン・ポイズン』