政治、経済、そして環境問題や災害など、地球規模で起きるさまざまな問題に取り組むのが独立行政法人国際協力機構(JICA)だ。JICAの中で特に一般市民に近いボランティア事業を担当している青年海外協力隊事務局募集選考課長、古田成樹氏にお話をうかがった。
活動本来の姿をきちんと伝えたい
── JICAのコミュニケーションについてお聞かせください。
JICAとしては、ODAを中心とした発展途上国への支援について認知を広めようと、主に新聞記事などマスコミに取り上げてもらうための広報活動をしています。広告を使ったコミュニケーションは少ないのですが、青年海外協力隊やシニア海外ボランティア等のボランティア事業に関しては、市民参加型のボランティアですので、新聞、交通広告などを活用し、広く応募者も募っています。
── 3月30日付朝日新聞に全面広告を出稿されました。
青年海外協力隊を始めとする海外ボランティアは、開発途上国の国づくり、人づくりに身をもって協力するものです。名称の認知は高いのですが、具体的な活動の種類や内容についてはあまり理解されていません。ボランティアということもあって、「きつい」「自己犠牲で奉仕する」といった印象が強いようです。調査をしても、活動については評価が高いのに、「身近じゃない」「かっこよくない」といった回答が多数を占めます。また、たとえ本人がその気になっても、少子化の影響もあって、家族など周囲の理解が得られず、踏み切れないというケースも少なくありません。
いずれにしても、JICA自体の活動やボランティアの活動の内容に踏み込んだ広報が十分でなかったという反省がありました。今回の新聞広告では、地球環境やアフリカの貧困などグローバルな課題への取り組みについて説明しました。また、「地球環境に貢献するシゴト。」というコピーには、「シゴト」とカタカナで表現することで、青年海外協力隊の経験をひとつのキャリアとしてとらえてもらいたいという意図をこめました。
── 新聞広告のメリット、期待することはありますか。
シニア海外ボランティアについては、参加者の平均年齢が58歳で新聞の読者層と重なるため、非常に重要なメディアととらえています。また、先ほども触れましたが、家族の理解を得るという意味では、青年海外協力隊の親世代に訴えることもできると考えます。
── 今後の展望は。
広告や広報に使える予算が削減される方向にあって、いかに効率よく展開するかが課題です。そのためにも、高まる世界情勢への関心とうまくつながるような表現や発信方法を模索していきたいと考えています。ボランティアに関しては、人生計画にかかわる部分もあるため、認知し、関心を持ってから実際の行動に移すまで長い時間を要します。国際協力について芽生えた思いを次の一歩につなげるきっかけになるようなコミュニケーションを、地道に、かつタイミングよく発信していきたいと考えています。