2013年より朝日新聞朝刊にて、見ル野栄司氏のマンガを起用したシリーズ広告を続けているナブテスコ。今年は8月、高校野球特集面で14回にわたり「ナブテスコヒーローズ」と題したシリーズ広告を展開した。
困難に打ち勝った高校球児とエンジニアに親和性
ナブテスコは、モノを精密に動かし、止める「モーションコントロール技術」を中核技術とし、航空機、鉄道、産業用ロボット、建設機械、自動ドアなど、様々な領域で最先端のテクノロジーを提供している。主にBtoBのビジネスだが、ものづくりの会社として常に理系の優秀な人材を求め、特に、就職活動中の学生に同社の事業内容や高い技術力を伝えるための告知活動に力を入れている。
今回のシリーズでは、精機・鉄道・舶用・航空宇宙・パワーコントロール・住環境という六つの社内カンパニーごとに、技術開発やシステムメンテナンスの現場で活躍するエンジニアをフィーチャー。見ル野氏が直接取材を行い、ものづくりのヒーローとしてキャラクター化した。例えば、「鉄道カンパニー編」では、雪国の線路の分岐器の誤作動を解決する技術を紹介。雪を吹き飛ばす装置「エアージェット」を開発したエンジニアの苦労や工夫を伝え、マントをひるがえして世界に羽ばたく「鉄道雪害対策ヒーロー エアージェット」を登場させた。
「エンジニアの試行錯誤や試練に焦点を当て、当社独自のテクノロジーと『現場力』を伝えました。掲載面を高校野球特集面に統一したのは、困難に打ち勝って上のステージに進むことができた高校球児と当社のエンジニアに親和性があると考えたからです」と語るのは、総務・人事本部 総務部の首藤枝里氏。
ヒーローとして取り上げる人材や技術のセレクションは、開発の経緯をよく知る事業部門の人々が行った。4回目となる広告企画ということで、現場から「こういう人材や技術を」という声が積極的にあがったという。
「企画への理解を得るのに時間がかかった初回に比べて、インナーコミュニケーションのハードルが下がったと実感しています。また、回を重ねるごとに若手のエンジニアや女性のエンジニアの登場が増えており、学生への訴求につながればと思っています」と語るのは、同部部長の松本敏裕氏。
マンガを担当した見ル野氏は、元エンジニア。自身で技術部や工場をめぐり、製品誕生の背景を細かく観察した。「エンジニアの 『真面目さ』を熱く描いてくれました。それこそが私たちがシリーズを通して伝えたかった当社の特長です」(松本氏)
就職活動中の大学生やその下の世代をねらう
今回は、ものづくりのヒーローたちが勢ぞろいする「ナブテスコ学習帳」のプレゼント企画も実施した。読者の応募はもとより、取引先や社員からも「欲しい!」という反響が多くあったという。小学生の母親から、「子どもに見せたいので、シリーズをまとめたコンテンツを出してほしい」との声も。同社のサイトで見ることができるよう準備中だという。
「小中学生にもナブテスコに親しんでもらいたいとの思いで、プレゼントを学習帳にしました。また、その親御さんに、『こういう会社なら、子どもが就職しても安心、信頼できる』と思っていただけたら、という願いもありました。何年後かの就職活動時に、親子で名前を思い出してもらえたらうれしいですね」(首藤氏)
シリーズ第1弾の全15回シリーズをまとめたリーフレットは、もともとはインナーブランディングの目的で作成したものだ。海外での事業展開も行っているため、リーフレットの英語版と中国語版も作成した。これらのリーフレットは、結果として現在も、取引先や大学の就職部に向けたコミュニケーションツールとして活用している。
「マンガだと事業の活動や目に見えない技術についてよくわかる上に、とても日本らしいコミュニケーションツールだと大変好評です」(松本氏)
新聞広告に加え、テレビCMでも社名と事業内容の認知の向上に努めている同社。就職希望者は、ここ数年で大きく増えている。継続的なブランド訴求が寄与していると言っていい。
「就職希望者が増えている一方で、ライバルはこれまで同規模の企業であったのが、重工メーカーや自動車メーカーなどの大手になってきており、人材獲得競争の厳しさは変わっていません。効果的なコミュニケーションを続けていく必要があります」(松本氏)
その一つとして、地方出身の学生への訴求強化を図っている。
「当社は地方にも技術開発の現場や工場を持つので、そこでの勤務を志向する優秀な学生は貴重です。JターンやUターンを考えている東京の学生への訴求も含めて、あらゆる可能性を模索しています」(首藤氏)
同社に関するSNSの書き込みなどを日々追い、近年は広告に関する前向きな反響が増えていることから、オフラインメディアとオンラインメディアの連携も含め、若年層が反応するような施策を検討していくという。