モノを精密に動かし、止める「モーションコントロール技術」を中核技術とし、航空機、鉄道、自動ドアなど、様々な領域で最先端のテクノロジーを提供しているナブテスコ。2013年より朝日新聞朝刊にて、見ル野栄司氏のマンガを起用したシリーズ広告を展開しています。
主なターゲットは就職活動中の学生たち
ナブテスコの事業範囲は、産業用ロボットの関節に使われる精密減速機、パワーショベル用の走行ユニット、舶用エンジン遠隔制御システムなど、多岐にわたる。だが、その高い技術と製品は、一般の人の目には触れにくい。そこで、「ナブテスコってナンデスコ?」というキャッチフレーズを掲げ、企業の実態を伝える告知活動を行っている。総務・人事本部 総務部 IRチームの成夢希氏はこう話す。
「主にBtoBの会社なので、産業界には企業名や技術力が知られていますが、一般的な認知は決して高くありません。ものづくりの会社として常に理系の優秀な人材を求めており、特に、就職活動中の学生さんに当社の活動を知っていただきたい。そのために告知活動を強化しています」
2013年から展開しているのが、見ル野栄司氏のマンガを起用したキャンペーンだ。見ル野氏は、元エンジニアで、ものづくりの人々の姿を描いた『シブすぎ技術に男泣き!』(中経出版)などの作品で知られる。その鋭い視点で、製品技術の特徴や、開発者の思いをマンガ化した。第1弾の全15回シリーズは大好評で、掲載広告をまとめたリーフレットは、取引先や大学の就職部に向けたコミュニケーションツールとなった。
2014年には、約3カ月にわたって計46回の小型シリーズ広告を展開。全シリーズを「ものづくりカルタ」にして読者プレゼントとしたところ、500人の募集に対して約5,000人もの応募が集まった。
「過去2回の朝日新聞キャンペーンに加え、テレビCMも展開したことで、社名の知名度は少しずつ高まっています。さらなる飛躍を目指し、昨夏から今年3月にかけて、全12回の広告を掲載しました」
継続的な告知活動が社内の相互理解に寄与
「今日はナンデスコ??」というキャッチをつけたシリーズ第3弾では、知りたがりの息子と、息子の疑問に答えられない父親が新たに登場。この親子と、すっかりナブテスコ通となった見ル野氏とのかけ合いを通して同社の技術を伝えた。「海の日」「機械の日」「空の日」など、毎回記念日にちなんだ製品や技術を紹介した。
「当社には、精機・鉄道・舶用・航空宇宙・パワーコントロール・住環境という六つの社内カンパニーがあります。各カンパニー社長の声も掲載し、事業の方向性を明確に示しました」
さらに、今シリーズをまとめた卓上カレンダーを制作。12月3日の「カレンダーの日」に読者プレゼントの告知を行ったところ、500人の募集に対し、6,590人もの応募が集まった。
「予想以上の応募に驚きました。カレンダーは、社員や取引先にも配るために5,000部作りましたが、人気があって、あっという間になくなりました(笑)」
同部部長兼IRマネージャーの松本敏裕氏は、次のように語る。
「小学校や中学校の先生から『授業で使いたい』という問い合わせも複数ありました。朝日新聞の読者層に教育関係者が多いからか、そうしたご要望はこれまでもありました。日本のものづくりをわかりやすく伝える教材にしていただいているようです」
一連の広告には、インナーコミュニケーションの意図もある。同じ会社でも、他事業がどのような活動をしているのか、日々の仕事ではなかなか把握できないからだ。
「新聞キャンペーンは、社員の相互理解にとても役立っています。見ル野氏の観察眼とマンガの力のおかげで、工場の職人たちも面白く読んでくれています。小谷和朗代表取締役を筆頭に、次の展開を楽しみにしている社員も多いんですよ」(松本氏)
同社への就職希望者は、ここ数年で大きく増えているという。継続的なブランド訴求の成果が、少しずつ現れていると言っていい。
「優秀な学生の採用をめぐる企業間の競争は激しくなっています。そうした中での就職希望者の増加は、明るい材料です。一方で、ライバルはこれまで同規模の企業であったのですか、知名度の高い大手になってきており、手ごわくなっています。知名度が高まったがゆえのうれしい悩みです」
見ル野氏によるシリーズ広告が、マンガに親しんでいる若者世代の心をつかんで、ものづくりに興味を持つきっかけとなり、ひいてはナブテスコに興味を持ってくれるようになればいいと、松本氏は締めくくった。