観光面での両国間の友好・交流を、モザイクアートで後押し

 外国人観光客誘致のための観光振興活動を展開する韓国観光公社。1962年時点では2万人あまりに過ぎなかった韓国への外国人観光客は、2005年には600万人を突破。世界27カ国30支社規模でのプロモーションで、韓国への興味関心を、今や世界中で喚起している。大阪支社でもこのたび、特筆すべきキャンペーンの事例が生まれた。

個人単位の「外交」である観光 楽しかった思い出写真を募集

姜 熙珠氏姜 熙珠氏

 「旅の思い出写真でImagine your Korea」の名のもと、2015年4月1日~10月31日の期間、朝日新聞社と共同で開催したキャンペーン。折しも日韓国交正常化50周年の節目に、このキャンペーンを企画・担当した姜熙珠(カン・ヒイジュ)氏は、実施の背景をこのように語る。

 「旅行先へ行き、現地の人と触れあえる観光は、個人ができる『外交』の一つと考えます。両国関係の影響もあり、2012年秋以降、韓国を訪れる日本人観光客は減少していますが、そんな環境にあっても、観光面で『友好』『交流』の機運を高めたい、と願いながら企画したものです」

 中でも、日本人観光客それぞれの思い出が凝縮された韓国での「旅行写真」に着目。楽しい思い出とともに撮影された写真を募集し、集まった写真で1枚のモザイクアートをつくる趣旨のキャンペーンを、自社ホームページ、公式フェイスブックおよびツイッター、朝日新聞広告紙面上で告知した。広告紙面では、同国の人気アイドルグループ「BIGBANG」を起用し注目を集めたことも奏功。「フェイスブックのメッセージ添付およびツイッターのハッシュタグ『#韓国旅行思い出写真』と、個人情報を問わないSNS経由での応募を促しました。私たちも堅苦しくなく、送る側も気軽に送ってもらえたのではと思います」

 期間中、集まった写真は実に計2,277枚にのぼった。

 「やはり多かったのが食べ物の写真。中には、普通の観光客はまず食べないような通な料理もありました」。観光客の主目的がグルメであることを再認識できた一方で、意外と多かったのが空の写真だったという。「その他、変わったところでは、天井や道路の溝の模様など。一枚一枚を見ていくと、名所旧跡やグルメだけでなく『こういった韓国も、日本の皆さんには響くんだ!』と驚くこともしばしば。私たちにとっても意味のあるキャンペーンでした」

ユーザー発信の情報を有効に、説得力をもたせてモザイクアートに

 募集終了後の制作期間を経て、モザイクアートが新聞に掲載されたのは12月18日。集まった写真は全15段の迫力あるモザイクアートに姿を変えた。キャッチコピーは「思い出つながる、韓国の旅」。同社のブランドメッセージ「Imagine your Korea」もデザインされた。

 「モザイクアートだからこそ、みんなで一つのものをつくるというつながり、ひいては友好・交流のメッセージを表現できました。私たちの立場から『韓国は素晴らしいですよ』とアピールするよりも、実際にこれだけたくさんの日本人が韓国に行き、それぞれの思い出を作り、帰国したことが一目でわかる紙面。韓国の魅力を伝えるには、何よりの説得力ですね。同じ日本人が発信する情報は、信頼性も高いと思います」。旅行者一人ひとりの「韓国」が凝縮された紙面を手に、姜氏は振り返る。

 モザイクアート完成までの途中経過をフェイスブックでリアルタイムに公開したのもユニークだ。応募者からすれば、自分が送った写真の現在を確認でき、キャンペーンをより自分ごととして認識してもらえる。「あなたの写真が新聞紙面に使われるというだけで、リワードはなくてもやりがいがあるはず。韓国ファンを増やすにはこうした参加型の色をより強くした仕掛けが有効だと実感しました」。一連の取り組みは、大きな予算をかけずに効果を上げた事例として評価され、広告活動優秀事例にも選ばれた。

 数あるメディア媒体から、新聞広告を軸にキャンペーンを展開した理由については「応募した人にとっても、結果が紙で形となって残ることが大きかった」と話す。モザイクアートのインパクトの強さは、そのサイズも明暗を分ける。そうした意味から新聞広告全15段のサイズは適切だった、とも振り返る。

 「例えばスマホでの情報発信は、何よりも分かりやすくしないとすぐに離れられてしまいます。ローディングの時間や、スクロールの長さも影響します。その点、新聞は、私たちの方から伝えたい、読み取ってほしい情報を、一覧性のある定型サイズのもと提示できますから、興味をもってじっくりと読んでいただける層には適した媒体だと思います」

 今回のキャンペーン事例は、今後のプロモーション活動にも大きな示唆を与えてくれることとなった。「たとえばイベントにしても、これまでは私たちが見せたいもの、伝えたいものを一方的に壇上から伝える形のものが多かった。今回の新聞広告のように、ユーザーどうしが、そしてユーザーと私たちが、つながりを感じられ、かつ深く交流できるものになればいいですね」

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2015年4月10日付 夕刊 大阪本社版 2015年4月10日付 夕刊 大阪本社版
2015年12月18日付 夕刊 大阪本社版 2015年12月18日付 夕刊 大阪本社版