人気の輸入車MINI(ミニ)の5ドア・ハッチバックモデル、MINI 5 DOORが昨年10月に誕生した。そのエントリーモデルであるMINI ONE 5 DOORのデビューフェア前日の1月30日、朝日新聞朝刊に全15段広告が掲載された。紙面の上半分は、不動産の広告を模したユニークなクリエーティブだ。5ドアのミニを「新築ワンルーム」にたとえ、広くなった室内を「間取り図」にして紹介。思わず目が留まるビジュアルで、デビューフェアへの集客にも貢献した。ミニはこれまでも朝日新聞紙上でユニークなクリエーティブの広告を展開している。新聞広告に何を期待しているのか、同社に聞いた。
世界共通のクリエーティブと日本ならではのアイデアで制作
「新聞広告で一番伝えたかったことは、5ドアのミニが発売されることです。ドアが増えたことによるベネフィットを、ミニらしく面白みのある表現で伝える方法を考えました」と話すのは、ビー・エム・ダブリューのMINIディビジョン ブランド・コミュニケーション&イベント マーケティング・コミュニケーション・スペシャリストの小林千帆氏。
5ドアモデルは後部座席が広くなり、乗員も4名から5名に増えた。また、ラゲッジルームも広くなった。そのことを楽しく伝える方法として生まれたのが、「マンションの間取り図」というアイデアだったという。「春の引っ越しシーズンに向けて、間取り図を見ている人も多いはずです。また、大人であれば一度は見たことがあるものですよね。ミニらしいアイキャッチになると考えました」と小林氏は振り返る。
新型ミニのキャンペーンは、テレビCMや屋外広告、ウェブ広告でも展開した。いずれも「ドアが増えた。遊び心は全開だ。」というキャンペーンのメインコピーを軸にした遊び心のある内容だ。
ウェブ広告にも、新聞と同様の間取り図の広告を掲載。さらに、公式フェイスブックアカウントに投稿したところ、約6,000の「いいね!」がついた。反応は非常に良かったという。「フェイスブックの投稿コンセプトは『エンタテインメント』です。ミニを知っている方、知らない方にでも響くコンテンツの展開を心がけています。現在、フォロワーは18万人ほどです。ファンに親しみを持ってもらえるように、文章も短めで広告色が濃くならないように工夫しています」(小林氏)。
テレビCMは、ドイツ本国で制作されたものを放映した。「ミニのキャラクターのスパイクというブルドッグが新型のミニに乗るとき、ドアが5枚に増えていて戸惑う、というユーモアのあるCMです」(小林氏)。
屋外のビルボードには、ミニがジェットコースターのようにレールに乗って降りてくる、ダイナミックなビジュアルを展開。表参道の交差点にある2つのビルの看板を連動させ、さらにビルの下には実車を展示した。
ドイツを拠点にグローバルで展開するミニの広告には世界共通のルールがある。
「新しく発売されるモデルのコミュニケーションカラーは全世界共通で使用されます。今回のMINI5ドアのコミュニケーションカラーはブルーでした。キービジュアルとなるクルマの写真は、本国で制作されたものの中から選びます。背景は黒。クルマと同じ色で縁取りをすることも全世界共通のルールです」(小林氏)。そうしたルールの中で、各国それぞれ工夫を凝らし、遊び心のある自由な表現をしているという。
顧客層が読む新聞広告 目を留めてもらい情報をしっかり伝える
同社のミニのキャンペーンでは新聞広告を積極的に活用している。これまでも、新聞1面の小型広告をジャックしたり、クリーンディーゼルモデルが誕生した際には、「ガソリンを与えないでください。」や「財布にやさしいニュースなので、経済面の横で広告しております。」などユニークなキャッチコピーで目を引くなど、新聞の特性を生かした広告を制作している。
11月22日付の全30段の広告は、新聞紙面を模した思い切ったデザインだ。左右に大きいビジュアルスペースを設けてディーゼルの経済性を巧みに表現。周辺部分ではこのモデルの特長を記事風に紹介、左下には「小型広告」をあしらう凝りようだ。
工夫にあふれた新聞広告の狙いについて小林氏は、「ミニは、人生を共に楽しむ相棒のような存在のクルマです。そんなミニの個性が伝わる広告を目指しています。さらに、ただユニークなだけでなく、多彩なモデルや燃費の良さ、パワーなど、プロダクトの特性や優位性もしっかり伝えていきたいと考えています。新聞はゆっくり読んでもらえるメディアなので、ビジュアルやコピーで目を留めてもらいながら、免税のことや月々の支払額などの情報なども含めて、バランス良く掲載するようにしています」と説明する。
さらに、「掲載日を特定できるので、ショールームで開催するイベント前日に掲載することが多いです。新聞は、ミニのメインターゲットである、35歳から50歳の男性が一番多く読んでいるメディアという認識ですが、幅広い層にリーチできると期待しています。今回、新聞広告にショールームの連絡先を入れたところ、掲載後に問い合わせが増えました。テレビCMとDMも同時期に展開しましたが、新聞広告の効果も大きかったと考えています。これからもミニらしさを表現しながら、ディーラー支援にもつながる広告を考えてきたいと思っています」と、今後への意気込みを語った
2014年2月27日付朝刊