本格的な冬が到来。空気が乾燥するこの季節、家事や仕事で手作業をする人の悩みに応えてきたハンドクリームのロングセラー商品「ユースキンA」。製造販売するユースキン製薬の企業広告が11月6日付朝日新聞の朝刊と夕刊に掲載された。この広告展開の狙いについて聞いた。
生活に寄り添う商品を様々なシーンで表現
2010年から始まった「がんばる手に、“ありがとう”。」とうたう同社の企業広告は、今年で5年目を迎えた。「当社の企業姿勢や思いはもちろん、主力商品である『ユースキンA』のメッセージも伝えたいと続けている広告展開です」と、同社営業本部企画部CCグループ広報宣伝チームリーダーの高橋千明氏。
毎年、広告のメーンビジュアルは「働く手」だ。「改めて自分や大切な人の手を見つめてもらうきっかけになってほしい、という思いを込めています」(高橋氏)
同じ日の朝刊と夕刊に出稿する展開は、同社にとっても初の試み。「毎日朝夕と配達される新聞は、生活に密着した媒体です。消費者の皆さんの生活に寄り添い、働く手を応援したいという『ユースキンA』のメッセージととても親和性が高いと考えました」と高橋氏。
朝のひんやりとした空気感を青い光で表現した朝刊の広告には、農業や新聞配達に従事する人や、お弁当を作るお母さんなどの手が、またオレンジの温かみのある光が感じられる夕刊の広告には、スーパーでレジを打つ人、仕事を終えて家路につく父親などの手の写真が飾り、朝と夕方それぞれの「働く手」のシーンを表現している。
「ハンドクリームの広告というと、女性のスラリとしたきれいな手を連想される方が多いと思いますが、当社の商品は性別や年齢を問わず、手荒れに悩む幅広い方々に使っていただきたいという思いがあります。その思いを込めて、老若男女問わない表現を意識しました。幅広い読者層を持つ新聞も、当社のコミュニケーションにはとてもふさわしい媒体です」(高橋氏)
実はこれらの手は、モデルではなく一般の人々の手だ。初回からリアルな働く手にこだわり撮り下ろしている。同社の本社がある町で長年付き合いのある商店などにお願いに行くと、「ユースキンさんなら」と快く引き受けてくれるという。
「地元の方に支えて頂いていることを実感しました。撮影時には『こんなときに手が荒れるんだよね』といった声をうかがうこともでき、改めてハンドケアの大切さに気付かされます」(高橋氏)
すべての手荒れに悩む人に届けたい
掲載後、同社のお客さま相談室には、「ユースキンがこういう広告を出してくれるのがうれしい」といった声が寄せられたという。「長年愛用して下さっているお客さまに、商品イメージと違和感のない広告を届けられたのではと、思いが伝わったようでうれしかったですね」と高橋氏。読者調査のJ-MONITORにも、「毎朝お弁当を作っている自分の手に『ありがとう』と言われた気がした」といった回答があり、「企画の意図がしっかり伝わった」と高橋氏は手応えを語る。
同社にとって、年に1度、全15段のカラー広告を出稿することは社員も注目しているという。「私たちの会社や商品の姿勢を確かめるいい機会になっています」と高橋氏。実は、クリエーティブには、社長をはじめ役員も制作現場に参加し、議論を重ねるほど。まさに全社を挙げて思いを込めている広告だ。
商品によっては、ウェブや交通広告などにも出稿するが、「ユースキンA」のこのコミュニケーションについては新聞のみで展開してきた。「新聞は、読者が受け身ではなく能動的に『読む』媒体なので、企業やブランドの思い、メッセージを伝えるにはふさわしいと考えます」と高橋氏。
「各世帯に配達され、一枚一枚めくりながら読む。読者と広告の一対一の温かみのあるコミュニケーションができる新聞広告は、当社のイメージや商品の特性にも合っているととらえています」
誕生から58年経った今も、売り上げは毎年伸びている「ユースキンA」。長年の愛用者が多いが、「男性など、まだまだ届いていない層もある。商品の特長を知っていただければ、まだまだ伸びる商品だとも思っています」と高橋氏。ここ数年は、衛生的で環境に優しいポンプタイプや、持ち歩きに便利なチューブタイプなど、使用シーンに合わせたパッケージ形状の改良などにも力を入れている。
今後については、「『ユースキンA』はクチコミやサンプリングで地道に愛用者を増やしてきたハンドクリーム市場を代表する商品です。様々な実験で得られた手荒れ対策などの情報発信を通じて啓発活動にも力を入れながら、当社の理念である『長く愛される商品作り』をこれからも続けていく考えです」