「基礎化粧品の詰め替え用」を業界で初めて手がけたのは、ちふれ化粧品だった。1974年、「今あるものを大切に」というスローガンのもと商品化。当時の日本には、詰め替えて使うという行為は今のように一般的ではなく、それは、まさに時代を先取りした挑戦だった。
「今あるものを大切に」
その思いが生んだ詰め替え商品
「高度成長が続いてきた当時は使い捨てが当たり前のような世相でした。そうした中、1973年に第一次オイルショックが起こり、資源には限りがあると社会が気付き始めました。また、オイルショックの影響から多くの企業が商品の値上げに踏み切りました。そんな中、『100円化粧品』など消費者視点の低価格商品を手がけていた当社は、価格据え置きと、そのためにできることとして、限りある資源を大切にする取り組みに着目。詰め替え商品の開発に至ったのです」
同社の事業開発本部宣伝広告事業部宣伝広報課係長の大﨑直人氏は、当時の時代背景や商品誕生の経緯をそう語る。
革新的な取り組みから40年という節目の今年、同社では様々な情報発信を企画している。その幕を開けたのが、まさに40年前の商品発売日にあたる6月25日に朝日新聞朝刊に掲載された全面広告だ。
「商品のターゲットである女性はもちろん、化粧品にはなじみのない男性の方にも、広く当社の取り組みや、環境や資源を大切にする企業姿勢を理解してもらいたい。そのために新聞広告は最適な媒体だと判断しました」(大﨑氏)
水色が基調のさわやかなクリエーティブ。清潔感やみずみずしさを表現し、「当社のことを初めて知る方にも、そうしたイメージを感じてもらえれば」と大﨑氏。40年前の挑戦、環境や省資源への思いと取り組みをつづったコピーは、詰め替え商品のパウチパックから注がれた水滴のデザインの中にしたためられている。「商品一滴一滴に思いを込めている。そんな当社の思いが表現できれば」。当時のことを知る数少ない役員にヒアリングしたり、古い資料をひもといたりして、大﨑氏がまとめあげた渾身(こんしん)のコピーだ。
また、どんな商品に詰め替えがあるのかがわかるように、本品と詰め替え商品の写真も掲載した。詰め替え商品を同社の広告に載せることはあまりないという。
広告掲載後、「ちふれが先駆けて詰め替え商品を発売したことを初めて知った」「40年前からなんて、その先見の明のある取り組みはすごい」といった感想が読者から寄せられた。「女性からはデザインがかわいいと好評でした」と大﨑氏は笑顔を見せる。
誠実な企業メッセージを新聞読者に発信
広告紙面を社内に張り出したことで、「詰め替え商品発売40周年」の意識も共有化された。また、営業部隊がステークホルダーや小売店などの流通関係者に、同社の考え方を改めて訴求するツールとして有効活用できたという。
「信頼性の高い新聞は、環境保護や省資源への考え方を持つ企業からのメッセージを発信するのには、最もふさわしいメディアだと捉えています」と大﨑氏は、新聞広告の特性を説明し、「ウェブやテレビCMだけでは伝えきれない内容、届きにくい層にも発信していけたらいい」と期待を寄せる。
40年前に詰め替え用商品を発売した6月25日は今年、日本記念日協会に「詰め替えの日」として認定された。これからもウェブやテレビCM、PR活動など、40周年を軸としたコミュニケーションを展開していく考えだ。大﨑氏は次のように言葉を結んだ。
「詰め替え用商品を先駆けで作ったのは当社ですが、愛用してくださる方々、賛同してくださる方々がいたから40周年を迎えることができたと考えます。そうした人々への感謝の気持ちを、この記念の年に発信していきたいと思っています」