L字型のインパクトある変形広告が1月24日付の朝日新聞朝刊に掲載された。
「1月31日 日本女性の肌へ」というコピーとともに、サンプルプレゼントが告知されている。しかし、具体的にどんな商品なのかといった詳しい情報には触れていない。このティーザー広告を皮切りに、翌日から6日間にわたり小型広告を掲載。「発売まであと6日」「5日」「4日」……というカウントダウンの展開だ。「強さ」「極限環境」「肌クオリティ」と、毎日キーワードが明かされていく。
そして1月31日。新商品「マイクロ エッセンス ローション」の詳しい内容が、全15段広告で明らかにされた。
日本女性のニーズをかなえた 米国本社も期待する新商品
「『マイクロ エッセンス ローション』は、日本女性のニーズに応える処方を実現した、日本市場向けの大型新商品です」
そう話すのは、エスティ ローダー事業部マーケティング本部プロダクトマーケティング スキンケアプロダクトマネージャーの齋藤友紀子氏。そもそも同社の本拠地・米国には「ローション(化粧水)」というカテゴリーはないが、日本ではほとんどの女性が洗顔後にローションを使っている。米国本社が日本オフィスからのリクエストに応えて実現したという。日本女性が好む「シャバシャバ、シャッキリ」としたテクスチャ(触感)で、彼女たちが化粧水に求める「肌への浸透力」を重視した、まさに日本女性に向けた商品だ。
社運をかけたともいえるほど力を入れた新商品の懸念は価格だった。
「本体価格が1万円を超えるので、国内外のメーカーのローションと比べても割高だということがハードルになるかもしれないと」と齋藤氏。そして、今回のキャンペーンの意図について、こう語った。
「使い心地、価格に見合う処方の良さを、ぜひ多くの方々に実感していただきたい。そのために大規模なサンプリングによるトライアルキャンペーンを実施することにしたのです。その展開メディアとして、店頭への誘客でこれまでも高い実績がある新聞広告の活用を決めました」
キャンペーンは、1月24日の変形広告のサンプル引換券、カウントダウン期間の小型広告をエスティ ローダーの店頭に持参するとサンプルがもらえるというもの。ローションは1回使っただけでは使用感や肌への効果が実感しにくいということもあって、サンプルは一週間たっぷり使える15ミリリットルサイズ。とくに金曜日だった掲載日の直後の週末には、新聞広告のサンプル引換券を持った多くの女性が来店した。中には、カウントダウンの小型広告を6日分まとめて店頭に持ち込んだ人も。齋藤氏はターゲットに確実に届いたという実感を持ったという。
「毎朝届いて習慣的に読む新聞、しかも小型広告は天気予報の横のスペースという注目されやすい位置だったこともあり、毎日読者の皆さんの目に留まったようです。サンプリングへの誘導はもちろん、カウントダウンによるリマインドと期待感の醸成に結びついたと評価しています」(齋藤氏)
広告には、店頭でカウンセリングをするビューティーアドバイザー(美容部員)のモチベーションアップというインナー効果もねらった。店によっては休憩を取る暇もないほどの来客にビューティーアドバイザーも対応に追われたが、新商品の手応えが実感でき、売り場の士気も上がったという。
2014年1月 エスティ ローダー 小型広告シリーズ
読者の目を留める工夫 L字変形スペースや小型広告の活用で
広告コミュニケーションは、新聞をはじめ、テレビ、雑誌、交通広告、ソーシャルメディアやバナー広告などのオンラインと、メディアミックスで展開している。その中で新聞広告の特性を、齋藤氏は次のように評価する。
「店頭への集客についてこれまでも効果を上げてきた実績がありますし、読者層がある程度見えているのも新聞ならではの特性です。媒体としての信頼感、ステータスもあるので、ブランドの「宣言」とも言えるメッセージを発信していくには、最もふさわしいメディアととらえています」
今回の広告キャンペーンについては、
「新聞広告にはリーチする力はありますが、目に留まらなければ意味がありません。その点について、L字型の変形広告や、連日の小型広告でカウントダウンといった使い方が功を奏しました。新聞広告におけるチャレンジができたととらえています」
新発売と同時に、エスティ ローダーで不動の人気を誇る美容液「アドバンス ナイト リペア」など4アイテムとセットにしたお得な「ローション セット」を限定販売したこともあって、売り上げは好調に推移した。「1本使い切った後に、リピートしていただくことが重要。今後は、その後の購入を促進するキャンペーンを展開していく考えです」と齋藤氏。同ブランドですでにロングセラーになっている「アドバンス ナイト リペア」との併用による相乗効果などについても訴求していく、という。
「『マイクロ エッセンス ローション』は、メーク先進国の日本をハブにアジア地域でも大規模に展開し、エスティ ローダーの基幹商品として育てていきます。常にブランドとして新鮮であり続けるためのコミュニケーションにも力を入れていきたいですね」(齋藤氏)