ファン投票で選ばれたスターホースが一堂に会し、頂上決戦に臨むGⅠレース「有馬記念」。2013年は12月22日に開催され、ファン投票で1位だった「オルフェーヴル」が圧倒的なレースを展開。ラストランの大舞台で有終の美を飾った。このレースを盛り上げるため、巧みに事前告知を展開した日本中央競馬会(JRA)にキャンペーンについて聞いた。
多彩な広告紙面で「お祭り感」
有馬記念や競馬の魅力を立体的に
日本中央競馬会(JRA)は、このGⅠレースの広告キャンペーンを朝日新聞で大々的に展開した。同会広報部の桑原俊樹氏は、キャンペーンの狙いをこう説明する。
「有馬記念は一年を締めくくる『お祭り』で、競馬ファンの方はもちろん、競馬をしたことがない、あまり詳しくないという新たなファンを開拓するには絶好のチャンスです。普段は読者に競馬ファンの多いスポーツ紙を中心とした広告展開が多いのですが、幅広い層にリーチする一般紙が、競馬未経験の新たなファンを獲得するためには有効なメディアだろうと考えました。そうしたときに、有馬記念のお祭り感や競馬と競走馬の魅力を多様に表現できる、バラエティー豊かな広告商品の提案が朝日新聞からありました」
一連のキャンペーンは、有馬記念開催2週間前にあたる12月8日付の朝刊の全15段広告からスタート。17日夕刊には日刊スポーツが制作したスポーツ紙の体裁の広告紙面を折り込み、19日と20日の朝刊ではファン投票上位の馬を紹介する全5段広告を掲載した。
レース前日の21日は、朝刊で全出走馬を紹介する二連版・全30段、夕刊では、掲載広告すべてが有馬記念という「夕刊マルチ広告」を展開。そして当日は最終出走表の載った全15段広告、と、まさに手を変え品を変えてレースを盛り上げていった。
新聞紙面だけはでない。レース一週間前の15日には、衛星放送のBS朝日「テイバン.tv」本編に出演者が競馬を楽しむシーンを盛り込み、競馬の魅力を映像を使って訴えた。
2013年12月21日付 夕刊 マルチ広告 (東京本社版)
2013年12月21日付 夕刊 マルチ広告
「夕刊マルチ広告の強烈なインパクトには私たちも感動しました。最終面では有馬記念の広告をテレビ番組欄の上下に配置しましたが、日頃とは違うレイアウトにいい意味で違和感を持ってもらうことで、読者の目を引き付けることができたと評価しています」
そう語るのは、同じく広報企画課の橋本賢太氏。夕刊を使って、これまでの有馬記念の歴史と優勝した名馬を読者参加型のランキングで振り返るとともに、2013年のファン投票上位馬を朝日新聞記者の執筆で紹介。スマートフォンをかざすとオグリキャップが優勝した1990年の伝説のレースなど、これまでの名シーンが動画で楽しめるAR(拡張現実)も採り入れた。他面では、競馬場がファンだけでなく家族も楽しめるレジャー施設としての魅力があることも紹介した。
21日には本紙の他にエリア広告「メガ新聞」も発行。レースが開催される中山競馬場の周囲エリアを中心に10万部を配布した。新聞4ページ分(天地79センチ×左右106センチ)の巨大なポスターのようなサイズで、ファン投票1位のオルフェーヴルと3位のゴールドシップの躍動感ある迫力満点の写真が飾った。ネットでも大きな話題を呼んだ。
日本中央競馬会
日本中央競馬会
日本中央競馬会
日本中央競馬会
日本中央競馬会
日本中央競馬会
馬の美しさ、躍動感、ドラマ――
競馬の魅力を読み物やビジュアルで表現できる新聞
一連の広告は、ソーシャルメディアで拡散されたのはもちろん、競馬場や場外馬券場「ウインズ」に足を運ぶ熱心な競馬ファンや関係者からも「載ってたね!」と声をかけられたという。反響の大きさは数字にも反映し、当日の入場者数や売り上げは例年の有馬記念を上回った。
テレビCMも活用したが、「新しいファンを獲得するという狙いは、新聞広告だからこそ効果的に展開できた」と桑原氏は振り返る。
「有馬記念とはどのようなレースなのか、そこに選ばれたのはどういう馬なのか、新聞はしっかりと解説したり、読み物として表現したりできる。また、二連版やメガ新聞のように迫力あるビジュアルを見せることも可能です。特に競馬になじみのない皆さんには、馬の美しさ、躍動感、競馬というスポーツのドラマ性やロマンを訴求することが重要と考えており、その点において新聞は最適なメディアと評価しています」
橋本氏は、一般紙でコミュニケーションすることの意義を次のように話す。
「競馬ファンだけでなく、幅広い読者層を持つ一般紙で展開することで、『競馬が盛り上がっている』というムードを演出することができる。また、朝日新聞という信頼性の高いメディアに掲載することで、安心して楽しめるレジャーであると伝わると思います」
仕事をリタイアして時間的に余裕のあるシニア層、20年ほど前の競馬ブームを経験しながらも子育てや仕事で離れている40~50代、そして、まだ競馬になじみがない若い層など、新しいファンを開拓する余地はまだまだある。競馬の魅力を伝えるコミュニケーションは重要だ。次は、今年5月に開催される「東京優駿(日本ダービー)」に力を入れる。桑原氏はこう意気込みを語った。
「ファン投票でお祭り的に盛り上がる有馬記念に対し、3歳馬しか出走できない日本ダービーには、一生に一度しか出られない夢の舞台というロマンがある。その魅力を分かりやすく、かつ、心に響くようなクリエーティブや表現で伝えていきたいですね」
2013年12月21日付 エリア広告特集「メガ新聞」
片面が新聞4ページ分のサイズ(天地79センチ×左右106センチ)