サザンオールスターズ(以下、サザン)は、35年前の6月25日に「勝手にシンドバッド」でデビュー。その記念の日に、新聞の二連版広告と広告号外で活動再開を発表した。広告号外は全国都市部の通勤時間帯の駅前などで配布した。
これまでもこの日に合わせて新曲を発表するなどしてきたが、今年はデビュー35周年。15周年、20周年、30周年と、節目で華々しいパフォーマンスを打ち出してきたグループだけに、「そろそろ動き出すのでは……」と期待に胸を膨らませていたファンもいたかもしれない。
デビュー35周年の節目に重大ニュースを発表
「サザンの再始動が正式に決まったのは3月初旬です。ファンの皆さんに再会するなら、やはり節目の年がふさわしいという判断だったと思います」と語るのは、ビクターエンタテインメントの宣伝スタッフ。新聞で発表した理由について、こう続ける。
「サザンは国民的グループなので、読者層が幅広い新聞での告知が効率的ではないかと思っています。特に朝日新聞は、サザンの活動のビジョンを示したい時のメディアとしてこれまでもたびたび広告を掲載してきました。社会的な話題として広がりやすいメディアだと思っています」
広告号外の配布は、5年前の活動休止宣言の際に起こった現象をヒントに企画された。当時も新聞広告でニュースを発表し、さらにその広告紙面を増刷して街頭で号外のように配布した。これが話題になったという経験を踏まえて、今回は当初から広告号外の発行を決めた。
広告号外では、8月7日にニューシングル「ピースとハイライト」が発売されること、8月10日から始まる全国5カ所の公演を告知。新聞本紙の全30段広告でも、同様の情報が告知された。
今回特徴的だったのが、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアでの盛り上がりだ。「うれしい!」「待ってました!」「早く新曲が聴きたい!」という書き込みが相次いだのだ。
朝日新聞で活動再開を発表
2013年6月25日付 朝刊 全30段
2013年6月25日付 広告号外
社会的な意味合いを含んだ歌詞に反響が続々
8月7日のシングル発売後、ソーシャルへの書き込みはさらにヒートアップした。その多くが、「ピースとハイライト」の歌詞への反応だった。
「何げなく観たニュースでお隣の人が怒ってた」「教科書は現代史をやる前に時間切れ」「歴史を照らし合わせて助け合えたらいいじゃない」といった歌詞の内容は、日本と隣国との関係を憂え、平和を呼びかけているようにも受け取れる。
「実は活動再開にあたって、私たちスタッフは当初、お祭り的な新曲キャンペーンをイメージしていました。しかし桑田さんは、今回の復活は派手なお祭り騒ぎという一面だけではない、という思いを持っていました。メンバーの衣装や広告クリエーティブがいつものサザンより控えめだとお気付きになった方もいるかもしれませんが、そこにはそんな意向も反映されているのです」
なお、サザンの新曲は、桑田氏が自身のラジオ番組で歌詞を朗読してから、初めて曲とともにお披露目するのが通例となっている。しかし、「ピースとハイライト」の歌詞は、発売の約1カ月前から紙メディアに載り始めた。結果として、詞の内容がよりクローズアップされることとなった。
「発売日(8月7日)の朝、朝日新聞で展開した広告も火付け役を果たしたと思います」
この日の広告は二連版で、小山薫堂氏や太田光氏など、サザンのファンを自認する著名人たちが復活に寄せたコメントを紹介。「ピースとハイライト」をはじめとするサザンの名曲の歌詞を「天声人語」風の体裁で掲載した。
また、新曲発売を記念し、コンサートツアーのある横浜、大阪、名古屋、仙台では、イベント「ピースとハイライト展」を展開。新曲4曲を深く掘り下げると同時に、サザンの35 年の軌跡とともに、朝日新聞の紙面を通して世相を振り返ることができるコーナーが好評を博した。
「サザンの曲と社会の動きがどうリンクしているか、ずらっと並ぶCDジャケットと新聞記事で一覧できる展示です。朝日新聞社には、35年分、250点もの紙面データを提供していただきました。改めて振り返ると、『ピースとハイライト』という曲の持つ社会性が、朝日新聞との様々な接点を生んだのかなと思います」
シングル発売日に掲載された広告(抜粋/2013年8月7日付朝刊)
サザンオールスターズ ピースとハイライト展(横浜会場)