全30段×2回の企業ブランド広告がグループを一枚岩に

 目標や思いを全従業員が共有することで、総合力をいかに発揮できるかは、グループ企業にとって大きな課題だ。90社2万9千人を抱える日本ハムグループにとっても例外ではない。今年2月には社内外に対してブランディングを進めることをミッションとした特別部隊のコーポレート戦略タスクフォースを立ち上げた。そして、コミュニケーション施策の一つとして、7月29、30日の2日間にわたり、全30段の企業広告を朝日新聞朝刊に出稿した。マーケティングチーム マネジャーの高崎賢司氏は「グループ内外に向けて、日本ハムのグループ力とメッセージを発信していくのが狙いでした」と語る。

大自然の雄大なビジュアルがグループのスケール感を表現

高崎賢司氏 高崎賢司氏

 7月29日付の広告は、雲が浮かぶ青く広い空が印象的な風景のビジュアル。これは、オーストラリア・クイーンズランド州にある同社グループの6千ヘクタールもの自社農場を撮影したものだ。30日付は、北海道・知床半島を臨む地の鶏舎と、隣り合った広大なタマネギ畑を写した美しいビジュアルが飾った。

 「鶏、豚、牛の三畜種を肥育、処理、加工、販売・マーケティングまでのバリューチェーンを持つのは、世界でも日本ハムグループだけです。この最大の強みを表現するスケール感のあるビジュアルを――。そんな構想を当初から描いていました」と高崎氏。だが、自然が相手の撮影は一筋縄ではいかなったという。雲と空とのコントラストを表現したかったオーストラリアは天気が良すぎて雲ひとつない晴天が続き「雲待ち」を、一方、北海道は季節外れの長雨が続き「太陽待ち」を、と撮影隊は数日間にわたる苦労を余儀なくされたという。しかしそのかいあって、「自然の雄大さ、食品グループとしての清潔感、国内外での事業展開の規模感を表現できる素晴らしい写真が撮れました」と高崎氏は自信を見せる。

 美しい風景に配されるコピーには、同社が消費者、社会、そして従業員に対する「4つの約束事」――①生命の恵みを大切にして②品質に妥協することなく③「食べる喜び」を心を込めて提供する④時代に先駆け食の新たな可能性を切り拓(ひら)き、楽しく健やかなくらしの貢献する――に託した。そして「この約束事を胸に責任と誇りを持って仕事をする従業員一人ひとりによって、日本ハムグループは成り立っている。その意味を込めて『Made inニッポンハムグループ』のコピーで締めくくりました」と高崎氏。

 さらに、紙面にはグループ企業の社名、グループ企業が手掛ける商品写真を掲載。お肉、ハムやソーセージはもちろん、ヨーグルトやピザもあり、グループが手掛ける商品の幅広さ、多彩さ、規模感が伝わってくる。これらの商品は7~8月にかけてスーパーや量販店などで展開した「ニッポンハムグループフェア」の対象商品でもあり、紙面ではフェア内容を案内するウェブへの誘導も図った。

 もう一つのこだわりが、広告の左下に配したグループのシンボルマークだ。日本人には青字でカタカナ表記の「ニッポンハム」のロゴになじみがあるが、アルファベットのロゴにすることで、グローバル市場での認知の浸透はもちろん、グループ従業員が「グループとして仕事をしている」という思いを一つにしていくことを目指している。

 「グループのシンボルマーク、社名と商品を結びつけて認識してもらうことで、『ニッポンハムグループの会社の商品だからおいしい、安心』と、国内外の消費者に感じてもらえるように、モノづくりとブランディングを進めていく考えです」(高崎氏)

2013年7月29日付 朝刊 全30段 日本ハムグループ

2013年7月29日付 朝刊

2013年7月30日付 朝刊 全30段 日本ハムグループ

2013年7月30日付 朝刊

2万9千人のグループ社員に届けたメッセージ 消費者にはブランド力を訴求

 掲載後の反響は上々だった。社外からは「見開きでインパクトがある」「グループのスケール感が伝わってきた」、グループ内からは「シンボルマークに真っ先に目が行った」「自分たちが品質に妥協せずに作った商品が紹介されていて、誇りを感じた」といった声が聞こえてきたという。「伝えたいメッセージが、伝えたい層にきちんと届いた。強い手ごたえを感じています」

 新聞広告を活用したことについて、高崎氏は次のように説明する。
「デジタルによってコミュニケーションの新たな可能性は広がりつつありますが、ともすれば無機質になりがち。今回のようなスケール感のある広告は、紙面を開いたときの感動、質感や手触り感などを演出したかった。それには新聞しかないと考えたのです」

 グループがその総合力をもって目指す経営をすべての従業員に理解してもらうため、高崎氏は国内外の拠点に足を運ぶ日々だ。その際、グループ全体で取り組んでいるという実感、責任、誇りを持ってもらうためにも、今回の新聞広告はそれらを再確認する有効なツールとして機能しているという。

 グループとしては現在、7%強である海外売上比率をまずは10%を目標に、主にASEAN地域、北米での事業強化に取り組んでいく考えだ。
「日本において、一般家庭はもちろん、流通、外食産業といった取引先の幅広いニーズに合わせた商品開発をしてきたノウハウがある。世界に誇るバリューチェーンとこのノウハウを最大の強みに、現地の事情、ニーズに合わせた展開を進めていきます」と高崎氏。さらにこう続けた。
「そのためにも、グループが一枚岩になって総合力を発揮していくことが重要。まずは、インナーコミュニケーションでグループ従業員一人ひとりの意識の共有を図っていきます。その上で、グループのブランド力を国内外の消費者に向けて、しっかりと訴求していく考えです」