5月30日、人気韓流スター、チャン・グンソクさんの等身大写真のエリア広告が大きな話題になった。
新聞4ページ分を横につなげた「パノラマワイド」という印刷で、彼のほぼ全身の写真が収まっている。ファーストアルバムの発売告知で、広告主は発売元のポニーキャニオン。東京・大阪・名古屋本社版配布エリアで計50万部を本紙に折り込んで配布した。朝日の読者であっても全てに配布されないため、当日朝のテレビ番組やソーシャルメディアで知ったファンなどから「どうやったら手に入るのか」といった問い合わせがポニーキャニオンや朝日新聞に殺到した。
本人がいない発売日にいかに盛り上げるかがミッション
「パノラマワイド」の提案に即決断
チャン・グンソクさんのファーストアルバムのプロモーションは新聞広告を軸に展開された。その経緯について、音楽事業本部JKSプロジェクトの黒沢美樹さんは次のように語った。
「チャン・グンソクは、韓国をはじめ日本や中国などアジア圏で活躍しているアーティストです。アルバムリリースのタイミングで、ショーケース・ライブや握手会を開催するなど、日本では当たり前とされるプロモーションが難しいことは想定していました。たとえ発売当日に本人が日本にいなくても、日本中が話題となるようなプロモーションを仕掛けることが、私たちに託されたミッションでした」
新聞で何かをしたい。その思いはプロモーションの方向性を決める早い時期から考えていたという。
「マーケティングのチームから、新聞に掲載されたアルバムの記事や広告を切り抜いて『これを予約したい』とCDショップに持ってくる方も多いと聞いてから、新聞広告で何かできないかと考えるようになりました。また、チャン・グンソクは昨年、歌手デビューして以来、ファンの年齢層がぐっと広がりました。今では子どもから大人まで、親子でファンという方も多くいらっしゃって、本当に幅広い年齢の方が応援してくれています。そうしたことから、年代を問わず自宅に情報を届けられる新聞は雑誌に比べて効率がいいメディアだと思っていました」(黒沢氏)
プロモーション方法を考える上で黒沢氏がこだわっていることは、誰もやったことのない新しいこと。根底には、コアなファンはもちろん、ファン以外の人たちにもチャン・グンソクという存在、魅力を知ってもらいたいという強い思いがある。
「そう考えているときに、朝日新聞社から、新聞4ページ分を横につなげる4連版の『パノラマワイド』という広告の提案がありました。この紙面を活用すればアーティストの等身大写真の掲載も可能だというのです。最初に聞いたときは一体どんな感じなのかイメージできませんでした。アーティストの等身大写真を掲載することは朝日新聞でも初めてだったからです。実際に等身大写真を入れた見本紙を見せていただいて、その迫力に引きつけられ、即決しました」(黒沢氏)
限定配布だからこその盛り上がり テレビやソーシャルメディアで大反響
2012年5月30日付
エリア広告特集 1-4面
広告を掲載した当日の朝、テレビ各局のワイドショーで取り上げられ、ソーシャルメディアでも話題となった。早朝からポニーキャニオンと朝日新聞社には、予想をはるかに上回る数の問い合わせが寄せられた。朝日新聞社では、掲載日から2日間で4万件を超える反響があった。
「当日の朝からネットやツイッターをチェックしていたら、『チャン・グンソクの広告をゲットするように妻に頼まれた』『親戚に配布されているか聞いてみた』『上司も探している』など、チャン・グンソクという名前が飛び交っていました。広告が家に届いたかどうかだけで、多くの人たちが彼の名前を発していたんです。つぶやいていた人の中には、彼の顔と名前が一致しない人や、歌手として活動していることを知らなかったという人も多くいたはずです。そういう人たちにこそ、チャン・グンソクという存在を知ってもらいたかったのでその部分については狙い通り、大成功でした」(黒沢氏)
有名アーティストの等身大写真が初めて新聞広告として掲載されたことに加え、東京・大阪・名古屋本社版配布エリアで合計50万部と、配布地域と部数を限定したことも、反響を増幅させた要因の一つだったといえる。
「朝日新聞を購読している全世帯に届くのでは面白みに欠けるのではないか、と考えていました。もちろん、予算との兼ね合いもありましたし、届く家と届かない家があるということについては、ファンの方の不満も募るだろうな・・・という葛藤もあり・・・、伝わらなければ意味がないですし、ある程度は部数を限定したほうが、より話題になると考えたのです。伝言ゲームのように広告の話題が拡散されるよう、多すぎず、少なすぎずの部数を決めました。およそ10~15軒に1軒くらいの割合で届くのが約50万部だと教えていただき、それがベストだろうと決断しました。10万部なら、100万部ならと何度もシミュレーションをして、ぎりぎりまで悩みました」(黒沢氏)
チャン・グンソク自身も満足 CD売り上げも週間1位
さらに、新聞広告の特性について。
「例えばアーティストの写真が雑誌に掲載される際、見開きの継ぎ目や折り目が顔にかからないように配慮します。新聞の場合、等身大写真は顔の位置が中央の折り目に来てしまうのですが、配達用に折るわけですから仕方がありません。紙なので水でぬらしたら破れてしまいます。だからこそ、ファンは宝物のように大事にしてくれるはずです。こういう新聞らしさを生かしたほうが面白いと思いました」
「掲載する写真は厳選しました。等身大と裏面の4種類の写真はすべて、誰が見てもかっこいいと思ってもらえる、今のチャン・グンソクの最高の写真を選んでいます。残念ながら新聞広告を入手できなかった方のために、同じデザインのポスターも制作しました(※アルバム購入者に抽選でプレゼント)。でも、みんなが心からほしいのは顔に折り目が付いていても破れやすくても、新聞広告の方だと思います」(黒沢氏)
2012年5月30日付 エリア広告特集 5-6面
このプロモーションは、全社をあげて取り組むプロジェクトで、予算を効果的に使うというプレッシャーもあった。新聞広告のほか、液晶ビジョンなどの屋外広告によるプロモーションも展開した。
発売日の翌週火曜日に発表されたオリコンの「CDアルバム週間ランキング」で見事1位を獲得。海外男性ソロアーティストのファーストアルバムでの1位は史上初という。発売当日、アーティスト本人によるプロモーションを行わず、発売1週間で8万8千枚を販売した。
「韓国の所属事務所もチャン・グンソク本人も、今回の新聞を使ったプロモーションにはとても満足してくれています。チャン・グンソクはセルフプロデュース能力がとても高い人です。発売の数日後、2日間のオフを利用してプライベートでこっそり来日したんですが、CDショップで自分で購入したCDにサインをして、「僕のこと知ってる?チャン・グンソクだよ、CDあげる!」って、道ゆく人に突然声をかけて、一緒に写真を撮ったりしていたんです。その様子が彼自身のツイッターにアップされたので、ファンの間では大騒ぎになりました。新聞広告で話題となった直後、さらに新しいネタを振りまいていしまう、そんなアイデアマンのチャン・グンソクに私たちも負けてはいられません(笑)。現在、ファンも世間も、チャン・グンソク本人もアッと驚くような次の作戦を練っているところです」(黒沢氏)
新聞広告でさらに知名度が上がったチャン・グンソクのプロモーションに終わりはない。今後の彼の活躍に、多くの日本のファンの期待が集まっている。