コミュニケーション・デザイン・センター コミュニケーション・デザイナー 平野井宏典氏
ラジオテレビ&エンタテインメント局 ネットワーク3部 林 祥大氏
4月26日付朝刊で映画「テルマエ・ロマエ」と6社が賛同した広告を7ページにわたって掲載。めくってもめくっても、主演俳優の阿部 寛さんのビジュアルが現れることで話題となった。この企画に関わった関係者に、実現までのいきさつを聞いた。
昨夏から斬新なタイアップ広告を模索
「テルマエ・ロマエはヤマザキマリさん原作の漫画作品で、単行本は累計800万部を突破するコミックです。2010年にマンガ大賞と手塚治虫文化賞をダブル受賞されていますが、手塚治虫文化賞は朝日新聞社が主催しており、主演の阿部 寛さんは当時、朝日新聞デジタルの広告にも出演していた。そういうつながりがあったことから、朝日新聞での連合広告企画を提案しました」と話すのは、電通コミュニケーション・デザイン・センター、コミュニケーション・デザイナーの平野井宏典氏。
この広告企画の発端は昨年夏。同社ラジオテレビ&エンタテインメント局で、この映画を製作するフジテレビ担当の林 祥大氏からの相談がきっかけだった。
「原作のファンだったこともあり、阿部寛さんをはじめ豪華キャストによる映画化の話を聞いたとき、絶対にヒットすると思いました。なんとか電通も関われないかと平野井に相談したんです。そのときに出たアイデアが、阿部さんのビジュアルを使った新聞とのタイアップ企画でした」(林氏)
一般的に映画のタイアップ広告は、映画の世界観やメッセージと協賛企業のメッセージを重ね合わせる方法が主流。だが、今回は「風呂」という切り口で、企業の商品・サービスに関連づけるという、従来のタイアップ広告とは一線を画している。キービジュアルは、ローマ人に扮した阿部寛さんが、腰にタオルを巻き、片手にてぬぐい、片手に風呂桶を持っているというもの。しかも古代ローマ人の彫刻を彷彿(ほうふつ)とさせる全身白塗り姿。
「風呂桶と手ぬぐいの代わりにタイアップ企業の商品を持たせるというアイデアは、企画の最初の段階からありました。そんなユーモラスなビジュアルの広告が何枚も連続で掲載されたら、相乗効果もあって絶対に話題になると確信していました。映画製作側にも広告主にも、阿部さんの事務所にも胸を張って企画を提案できました。原作サイド、映画プロデューサー、宣伝プロデューサー、また阿部さんや、阿部さんの事務所の方々に賛同いただいたからこそ実現できたんです」(平野井氏)
映画製作側は負担する宣伝費以上のキャンペーン効果が期待でき、協賛企業は「テルマエ・ロマエ」というコンテンツや人気俳優の阿部寛さんと自社製品やサービスを絡めて広告できる。
「映画というコンテンツを使いながら、それぞれがメリットを享受できることを第一に目指しました」(林氏)
協賛広告主が自社キャンペーンでも展開
多数のタイアップ候補の中から最終的に賛同した企業は6社に決まった。「テルマエ・ロマエ」製作委員会による映画広告から始まり、共通のビジュアルで各社の商品・サービスに合わせた7本の紙面が並ぶ。1面の小型広告にも連合広告の告知を掲載して、企画への注目を喚起した。
また、今回の企画では、紙面にとどまらない立体的な展開を立案。協賛社に応じ、テレビCMやタイアップアニメーションの作成や屋外プロモーションを組み合わせた提案を行った。
「ロフト、大江戸温泉物語、TOTO、ジャパンゲートウェイ(レヴール)はオリジナルアニメを作成してウェブで配信しました。また、協賛社にも自社の売り場や販路を使って積極的に展開していただきました。ロフトでは全国の店舗で風呂グッズの特設売り場を開設するなどタイアップキャンペーンを実施。ジャパンゲートウェイは全国のドラッグストアで新聞と同じクリエーティブでポスターを設置。大江戸温泉物語は「テルマエ・ロマエ」にちなんだ館内装飾を、TOTOはフジテレビ内の球体展望台で開催したイベントにトイレを展示していただきました。
さらに、ジャパンゲートウェイはテレビCMも放映したのですが、阿部さんにご登場いただき、武内監督はじめ映画と同じスタッフで制作にあたりました。協賛社や映画関係者にも楽しんでいただき、従来の宣伝では実現しない広がりをもたせることができました。」(林氏)
新聞広告だからできる特定日での掲載。この紙面も公開日直前の4月26日「良い風呂の日」に合わせて掲載されている。「企画を立ち上げた当初から映画公開日の2日前の4月26日を『良い風呂の日』と設定し、照準を定めていました。『古代ローマと現代日本の“風呂”を巡る冒険を描く、時空を超えた入浴スペクタル』という映画にピッタリな日に掲載することができたと思います。」(平野井氏)
新聞広告は東京本社版朝刊に掲載。その結果、公開日直後の関東エリアの映画興行成績は予想を上回るものだったという。
「新聞ならではの幅広い年齢層の方に告知できたと思います。ツイッターやブログなどに取り上げてくれる若い人たちもたくさんいました。」(平野井氏)
紙面の広告掲載はなかったが、朝日新聞デジタルも、テルマエ・ロマエとタイアップしたCMを制作。編集ページでも「風呂特集」ページを特設し、ローマ支局や前橋支局などによる風呂や温泉についての取材記事を掲載した。
紙面展開を軸に、いろいろなタッチポイントで「テルマエ・ロマエ」や「風呂」の話題を目にすることになり、立体的な展開の企画になった。だからこそ、反響もさらに大きくなったということだろう。
2012年4月26日付 朝刊
朝日新聞デジタル×映画「テルマエ・ロマエ」スペシャルコラボCM
「古代人・阿部ルシウス タブレットに啞然」
■朝日新聞社からのニュースリリースはこちら
武内英樹監督がテレビCMを初メガホン!
朝日新聞デジタル×映画「テルマエ・ロマエ」スペシャルコラボCMを4月17日からオンエア324kb