「ONE PIECE展」開幕 ウェブと連動して大人気マンガの世界観をシェア

 年の暮れも押し迫った2011年12月18日。集英社の『週刊少年ジャンプ』『Vジャンプ』など4誌連合のイベント「ジャンプフェスタ2012」で、ある発表があった。大人気マンガ『ONE PIECE』の作者、尾田栄一郎氏自らが「2012年3月に『ONE PIECE展』を開催する」と明らかにしたのだ。翌19日には、『週刊少年ジャンプ』本誌、そして、朝日新聞紙上で大々的に告知。23日には会期の第1期分のチケット発売が開始された。

200人余りの「WANTED」が飾るインパクトある見開き広告で
「シェア」する楽しみをアピール

小笠原尚子氏 小笠原尚子氏

 「1997年の連載開始から15年目を飾る、『ONE PIECE』初の記念すべき展覧会ということで、貴重な原画はもちろん、巨大なスクリーンのシアター、登場人物の実物大フィギュアの展示、インタラクティブアートなど、単なる原画展ではない体感型のイベントになっています」と、集英社宣伝部雑誌宣伝第2課主任の小笠原尚子氏。コミュニケーションの戦略については、次のように説明した。

 「展覧会のキーワードは『シェア』。ファンのみなさんに様々な形で参加し、共有していただける内容です。コミュニケーションについても同様で、ファンが参加したくなる、シェアしたくなるプランニングを進めました」

 12月の発表とともに「ONE PIECE展公式サイト」をオープン。このサイトを中心に段階的にコミュニケーションを展開してきた。発表直後のティーザー期は、展覧会の会期を3期間に分けてチケットを販売するといった情報を発信。続いて、コミックス65巻を発売した2月3日から「WANTED MAKER」がスタートした。『ONE PIECE』ではおなじみの海賊の手配書「WANTED」を、自分の写真とつけたい名前で作れるというウェブコンテンツだ。

 「発表から展覧会のスタートまで3カ月余りと期間が長かったので、ファン、読者の皆さんにいかにワクワク感、期待感を持って注目してもらうか。そして、参加する楽しみを感じてもらうか。その部分を、まずウェブコンテンツとして展開しました」(小笠原氏)

 そして、開幕当日の3月20日、朝日新聞朝刊に見開き全30段の告知広告が掲載された。「WANTED MAKER」の登録者の中から募集し、選ばれた約200人分の「WANTED」が並ぶ壮観なクリエーティブ。ところどころにマンガの人気キャラクターも配されていて、ファンの目を楽しませてくれる。「まだ『WANTED MAKER』を知らなかったファンの方にもしっかりとアピールできたようで、掲載後、アクセス数、『WANTED MAKER』登録者数とも一気に跳ね上がりました」と小笠原氏。さらにこう続ける。
「体感型の展覧会であるという具体的な展示内容を、限られた紙面の中で伝えるのは正直言って難しい。しかし、このインパクトある広告を入り口にサイトに来ていただくことで、展覧会についてはもちろん、イベント自体に興味を持って参加していただけたらと主催者内で考えました」

2012年3月20日付 朝刊

2012年3月20日付 朝刊

ウェブコンテンツと連動することで展覧会前後も世界観を堪能できる仕掛けに

 幕が上がった展覧会は、予想を超える盛り上がりを見せている。来場者数は4月6日で10万人を突破、同月中に20万人に達し、5月17日には30万人を超えた。毎週、最新号の『週刊少年ジャンプ』に掲載された生原稿の展示や、展覧会のために尾田氏が描きおろした幅約1メートルの大きなサイズの原画など、この会場でしか見られない展示品の数々に、多くの来場者が足を止め、魅了され、物語の世界に浸っている。

 展覧会を見終わっても、「ONE PIECE展」の世界観はまだまだ終わらない。来場者は会場を出る前に「ビブルカード」を受け取る。原作に出てくる、別名「命の紙」と呼ばれるファンには言わずもがなの意味深いアイテム。このビブルカードでサイト内の「“10,000 PIECE” PROJECT」に参加することができる。カードのシリアルナンバーを入力すると、1万ピースのジグソーパズルの1ピースを埋めることができるのだ。

 「パズルが出来上がるためには自分が参加しなければならないし 、自分一人の力でもパズルは仕上がらない。『仲間』とシェアすることで初めて完成する仕掛けです」(小笠原氏)

 自分の「WANTED」を作って登録すると、サイト内の情報を見たり、週に1度更新される「ONE PIECE 検定」を受けたりすることで懸賞金額が上がっていく。金額が上がるたびに様々なイベントが発生し、『ONE PIECE』の世界観をウェブ上でも楽しむことができる。自分の「WANTED」をツイッターやフェイスブックのアイコンにすることも可能で、アイコンに使えばさらに賞金が上がる仕組みだ。そして、会場では、応募者の中から日替わりで選ばれた3人分の「WANTED」が入り口に掲示される(「Today's WANTED」)。

 「サイトで楽しんでから、展覧会に行き、見終えた後もまたサイトで『ONE PIECE』の世界観を堪能していただく――。そんなふうに展示会場の中でも外でも、「ONE PIECE展」を満喫していただけたらうれしいです」(小笠原氏)

 2009年には『週刊少年ジャンプ』の広告として、朝日新聞で9ページにわたって『ONE PIECE』の全面広告を展開するなど、同社は新聞を使ったコミュニケーションには力を入れてきた。新聞広告を使うことについて小笠原氏は、「インターネットのように自ら情報を取りに行く媒体と違い、新聞広告は幅広い年代、属性の読者に情報を届けることができます。今回も全30段の広告をきっかけに、サイト自体を楽しんだり、展覧会に足を運んでくれたりしたファンが増えたと実感。開幕当日の宣伝として、新聞広告は最も適していたと改めて感じています」と語った。

 「ONE PIECE展」は6月17日まで、東京・六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催。

尾田栄一郎監修 ONE PIECE展 ~原画×映像×体感のワンピース

開催期間
2012年3月20日(火・祝)~6月17日(日) 会期中無休
開館時間
10:00~22:00(最終入館は21:00) ※入館時間は1日6回
開催場所
森アーツセンターギャラリー(東京・六本木ヒルズ)
                      東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52F
主催
朝日新聞社、集英社、東映アニメーション、アサツー ディ・ケイ、フジテレビジョン、森アーツセンター
公式サイト
http://onepiece-ten.com