2010年の朝日新聞元旦別刷りスポーツ特集(第3部)の広告枠は、マクドナルド一色となった。フロントページと終面もほぼおおいつくすラッピング広告は、朝日新聞社としても初めての試みで、各方面で大きなインパクトを持って受け止められた。
新年の幕開けに変わらぬ企業姿勢を約束
企画の意図について、マーケティング本部 マーケティング展開部 メディア&PR担当マネージャーアソシエイトの大内めぐ美氏はこう語る。
「確かなおいしさと品質、楽しいと感じてもらえる店づくり、満足につながるサービスなど、マクドナルドの取り組みを今後も継続していくことを、新年の幕開けに改めてお客様にお約束しました。当社は食をめぐる新しい価値を提案し続けていますが、コミュニケーションにおいても挑戦する姿勢を受け止めてもらえるのではないかと考えました」
同スポーツで特集では、現役選手やかつての名選手が、2月のバンクーバー五輪、6月のサッカーワールドカップ南アフリカ大会という2010年の大イベントへの期待を語ったインタビュー記事が掲載された。スポンサーとして五輪やワールドカップを長く応援してきたマクドナルドの広告と記事との親和性は高い。
告知内容は、企業メッセージ、キャンペーンの告知、新商品の紹介など多岐にわたったが、すべてに門松をあしらったロゴを展開し、「お正月ムード」で統一した。
2010年1日1日
元旦3部スポーツ別刷り A面
フロントページは、目に鮮やかな正月らしい赤を下地に、大きく「あーん」の文字。音引きの「ー」は「マックフライポテト」だ。ボディーコピーに目を移すと、「…と口を開いたら、2010年も食べはじめよう。そして笑いはじめよう……」と続く。
「人と人、笑顔と笑顔をつなぐ空間でありたいとの思いを伝えました。元旦に多くの企業が新年のあいさつをこめた広告を掲載する中、マクドナルドらしいシンプルで遊び心のあるクリエーティブで独自性を打ち出しました。特にポテトの写真にはこだわり、長さや曲がり方がベストと思える1本を選びました」
ページをめくると、渦巻き状の文字が目に飛び込んでくる。暗示をかけられた気分で文字を追っていくと、注文を受けてから作り、できたてを届ける「メイド・フォー・ユー」のシステムについて理解が深まる。写真は定番メニューの「ハンバーガー」だ。
そのとなりの面では、元旦から期間限定のもれなく当たるキャンペーン「福めくりポテト」を告知。「キャンペーンは時期的に大変好評でした。正月料理じゃないものを食べたいという人が多かったのかもしれませんね」
予想を超える反響に手応え
さらにページを繰ると、全5段広告を見開きで展開。右面は、着物姿の家族や友人同士が「朝マック」を楽しむ様子を「楽しい会話が聞こえてくるような動きのあるシーン」に仕上げた。
左面は、昨年から東京地区を中心に力を入れている「マックカフェ」を紹介。そのアピールは、次ページの二連版30段に続く。「昨年11月から展開している平成中村座一門を起用したキャンペーンの一環で、歌舞伎とコーヒーという新鮮な取り合わせのインパクトを改めて狙いました。はからずも元旦にふさわしいビジュアルになりました」と大内氏。
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さらにめくっていくと、1月15日から3カ月をかけて4種のバーガーを次々と繰り出す「ビッグ・アメリカ」キャンペーンの二連版30段の広告があらわれる。商品コンセプトに沿ったテキサス、ニューヨーク、カリフォルニア、ハワイのイメージ写真すべてに「M」マークが隠されているところが心憎い。
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終面を飾ったのは、ドライブスルーのイメージ広告だ。「すがすがしい朝の雰囲気を伝えたかったので、美しい朝焼けを求めて数日かけて撮影しました」と大内氏は明かす。
広告の手応えについてはこう振り返る。
「プロモーション商品を大きなビジュアルでアピールしたいと考え、新聞広告を選択しました。また、企業メッセージを伝えるうえで、今回朝日新聞から提案いだいた企画がぴったりなのではと考えました。記事を読んで『スポーツモード』になっている読者に、静かなブランド浸透がはかれたことや、平成中村座が登場する広告でふだんマクドナルドをあまり利用しない方々にも興味を持っていただいたことなど、さまざまな手応えを感じました」
また、『ビッグ・アメリカ』は、大きなビジュアルで4種のコンセプトをまとめて紹介したのはこの新聞広告だけで、メディアからの取材依頼をはじめ、紙面に対する反響はものすごいものがありました。じつは、販売に先がけ、試食会や限定店舗での先行販売を行ったのですが、広告を見て来てくださった方も多く、さらにそこからブログやツイッターへの書き込みが一気に増えていきました。迫力のあるビジュアルが話題づくりの起爆剤となったわけです」
実際、「テキサスバーガー」は爆発的な売れ行きを見せ、1月17日に同社が創業以来最高全店売上高28億1,180万円を記録したのも、この新商品の貢献が大きいとされる。
「これからもお客様に喜んでいただけるさまざまな価値を生み出していきたいと思います。コミュニケーションも今回のように有意義な挑戦を重ねていきたいですね」