四角い形のチョコレートでおなじみの「チロルチョコ」。1962(昭和37)年の発売から長年にわたって愛されている定番商品だが、さまざまな味の商品を開発し、セブン-イレブンとの限定コラボ商品「ガンダム30周年記念シリーズ」を発売するなど、時代のニーズをとらえた商品展開にも積極的に取り組んでいる。
「目新しいこと」にこだわりながら商品が持つ「癒やし」や「安らぎ」を表現
同社はこの秋、人気商品の「きなこもちチョコ」シリーズのプレゼントキャンペーンを行った。対象商品についている応募券をはがきに張って応募すると、抽選で3,000人にきなこチョコの形をしたオリジナルゆたんぽが当たる、というキャンペーンだ。
10月11日には、朝日新聞朝刊にキャンペーンの告知広告を出稿した。ウェブ上に告知ページを設けたほか、雑誌数誌にも広告を掲載した。だが、あくまでも告知のメーンは新聞広告で展開したという。
チロルチョコ代表取締役の松尾利彦氏は「キャンペーンの告知では、こちらは内容をしっかり伝えたいし、応募する側も活字できちんと確認したいはず。テレビCMなどではあっという間に流れていってしまいますが、活字媒体ならばゆっくりと見ることができる」と説明する。
広告は、記事下3段の見開きと、右紙面に5段分がせり出したような逆L字形の変形広告。「ありきたりな広告にはしたくなかった。スペース自体は大きくなくても、どこかに視覚的なフックがほしいと考えていたところ、朝日新聞でこの変形広告が実施可能とわかり、出稿に踏み切りました」と松尾氏は振り返る。今回は、商品を買った人だけが応募できるクローズドキャンペーンだったが、新聞広告の告知効果もあり、すでに約9万通の応募があるという。
2009年10月11日付 朝刊
2008年9月18日付 朝刊
同社は昨年秋にも、朝日新聞にキャンペーン広告を出稿している。昨年は、「チロルチョこたつ」というこたつが当たるキャンペーンの告知だった。こちらはだれでもが応募できるオープンキャンペーンだったこともあり、40万通近くの応募があった。おばあちゃんとネコがこたつでほっこりしている、ほのぼのとした雰囲気のクリエーティブが印象的だ。今回のきなこチョコのキャンペーン広告も、全体に使われた黄色と、かわいらしいきなこチョコのキャラクターの表情から、温かみが伝わってくる。
「チロルチョコが提供するものには、『癒し』や『安らぎ』といった精神的な部分もあります。そうしたチロルチョコらしさと、景品や広告に関する私たちのアイデアを、長年信頼関係のあるクリエーティブディレクターが形にしています」(松尾氏)。景品がゆたんぽやこたつ、というのも、どこかノスタルジックだ。
今後の広告宣伝戦略について聞くと、「普通のことをするつもりはない。目新しいことにこだわっていきます」。アイデアマンとしても知られる松尾氏は「おもしろいことを思いついたら、やらなくていいと言われても広告を出してしまうかもしれないですね」と、楽しそうに笑った。