スポーツ面の変形広告スペースでタイアップが実現

売り場のクロスMDのイメージを新聞広告上で展開

仲小路啓之氏 仲小路啓之氏

 今年7月12日、朝日新聞のスポーツ面見開きページに、ユニークなスペース使いのタイアップ広告が掲載された。右上半ページにキリンビール「一番搾り」、左上半ページに味の素「Cook Do」の「麻婆茄子」、見開き中央下の変形1ページに、シズル感の高い麻婆茄子をはじめとする中華料理の皿と冷えたビールがグラス2杯。「乾杯、ニッポン! カンパイ、中華!」というリードコピーが、全体を取りまとめる。

 「旬の『茄子』と冷たい『ビール』で日本の夏の食卓を盛り上げたいと考えました」と、キリンビール営業本部マーケティング部メディア室長の山下健一氏は、企画の趣旨を語る。

 さらに、「このタイアップ企画が、中華料理の家庭内におけるオケージョン拡大につながればと思いました」と、味の素広告部長の仲小路啓之氏も出稿の経緯を話す。

 「おいしいビールとおいしい中華のある最高にすてきな食卓」をテーマに、麻婆茄子とビールの相性の良さをアピールした今回のタイアップ企画。記事と広告を市松模様のように配した紙面からは、おいしそうなイメージが素直に伝わってくる。

 「このスペース使いとクリエーティブが、店頭での共同陳列を想起させてくれました」と山下氏は言う。斬新な広告スペースで注目度も高く、読者のみならず、両社の社内でも高い評価を得た。

効果的な売り場作りを2社が手を組んで促進

山下健一氏 山下健一氏

 数年前から、味の素とキリンビールは流通現場で、クロスMD(マーチャンダイジング)の手法を取ってきた。今回、協働して「食卓をもっと豊かに!」プロジェクトを展開し、その第一弾として「カンパイ、中華!」を実施した。

 「2社がタイアップすることで、生活者や流通に対して、旬の食材を使ったインパクトのある提案ができたと思います。また、店頭で共同陳列を行うことにより、棚のスペースを確保しやすくなり、商品の露出が拡大し、結果的に流通が消費をプッシュするという好ましい環境ができ上がりました」と、仲小路氏はタイアップの効果を語る。また、「常にお客様目線で、新たな食シーンを提案し続けることがキャンペーン全般を成功に導いた要因ではないか」と、山下氏は話す。

 今回、全国4千店舗で2社によるジョイント・キャンペーンを実施。売り場でのキャンペーンに加えて、初めて新聞やテレビCMなどのマス媒体で展開した。

 仲小路氏は、「新聞広告は幅広いターゲットにリーチできる上、読んでもらうことで理解を深めてもらえます。このキャンペーンではテレビスポットを中心に認知を高め、新聞広告でより認知と理解を深めることを目指しました。また、テレビスポットではリーチしにくい流通担当者へアピールしやすいことも、今回新聞広告を活用した大きな理由です」と説明する。さらに、両氏とも、2社がタイアップする際に、新聞広告は自由度が高いことが魅力だと話す。

Win-Winの関係を構築できる企画を追求

 今回のキャンペーンの成功に続いて、2社は今後どのような展開を図っていくのだろうか。

 「味の素にとって、本年度は『うま味』発見から100年目、来年度は『味の素』発売から100年目の年にあたります。こうした節目の時期を迎えるにあたり、今後はより一層広告・広報・販促が一貫した、効率よく連動した展開を図っていきたいと考えています」(仲小路氏)

 キリンビールの山下氏は、「9月から10月20日まで、『キリン“選ぼう ニッポンのうまい! 2008”プレゼントキャンペーン』を全国で実施しています。47都道府県の名物食材や話題の一品を賞品に採用することで、ビールをはじめとした当社商品とおいしい『食』の組み合わせを楽しむ喜びをお客様に提案していきます」と話す。

 今後様々な企業が、1社単独ではなくいろいろな形で連動し、クロス・マーチャンダイジングを行うケースが増えていくという。「他の企業や業種と手を組むことで互いの質を高め、win-winの関係を構築できるような企画を追求していきたいと思います」と山下氏は言う。

 これから先、どのようなコラボレーションが実現していくのか。味の素とキリンビールの想像力と企画力に注目していきたい。

2008年7月12日付 朝刊