魚の健康成分「EPA」を飲みやすいドリンクやおいしい加工食品で

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イワシなどの青魚に多く含まれる健康成分EPA(エイコサペンタエン酸)。日本水産では、早くからEPAを摂取できる特定保健用食品を手がけています。2016年からは、機能性表示食品にも幅広く取り組み、EPAの認知拡大を進めています。

継続して摂取するためドリンクや日々の食品で

「海から、健康 EPA life」ブランドロゴ「海から、健康 EPA life」ブランドロゴ

 イワシなどの青魚に多く含まれる健康成分、EPA。日本水産では、水産資源を持続的に活用しようと1920年に水産会社として日本初の研究所を設立し、以来、長年さまざまな水産資源の有効利用を研究してきた。その中で、EPAに着目し、80年ごろから千葉大学医学部と共同研究を開始。90年には世界で初めて医療用医薬品を持田製薬と共同開発した。

中島秀司氏中島秀司氏
馬場みのり氏馬場みのり氏

 さらにこの技術を食品に応用し、2004年に発売したのが「イマーク」だ。ドリンクタイプで、1日1本飲むことでEPAが600mg摂取でき、血中中性脂肪が約20%低下するというデータが出ている特定保健用食品。発売時から現在まで、通信販売のみで展開している。その経緯を、同社ファインケミカル事業部ヘルスケア課課長の中島秀司氏は次のように説明する。

 「EPAは継続して摂取することで血中中性脂肪の低下や血流改善などが期待できるのですが、実はその効果は非常に体感しにくい。脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞といった循環器系の疾患になり難い体質として過ごせる、つまり『何事も起こらない』ことが一番の効果なのです。『イマーク』発売時、EPAの認知が低い中で継続して飲んでいただくことを考えたとき、店頭販売では難しいと判断しました」

 発売から12年、中性脂肪が気になる中高年層を中心に認知、支持も徐々に広がってきた。「さらに幅広い層へEPAの認知を広め、摂取してもらうためには、日頃の食卓で口にする食品への展開は必須」と中島氏。同社では2年前、機能性表示食品の制度スタートを前に、「機能性食品推進部」を新設。「これまで健康食品に特化してきたEPAを、当社の『食品』『水産』『ファイン』の三つの事業を横断して幅広く展開していくことが目的でした」と、機能性食品推進部機能性食品推進課課長の馬場みのり氏は説明する。昨春より毎日おいしく手軽にEPAを取るためのブランド「海から、健康 EPA life(エパ ライフ)」を立ち上げ、EPAを強化した冷凍食品、ソーセージやちくわ、缶詰といった加工食品を機能性表示食品として発売を順次開始した。食品の場合、「機能」を前面に押し出すとおいしさが伝わらないという側面もあるため、その訴求には気を配っている。対象商品には、お客様に摂取量がわかりやすく伝わるブランドロゴを付け、機能性を訴求している。

「海から、健康 EPA life」の機能性表示食品

「海から、健康 EPA life」の機能性表示食品

健康意識の高い新聞読者にしっかりと機能性を訴求する

2016年9月28日付 朝刊2016年9月28日付 朝刊504KB
2016年10月25日付 朝刊2016年10月25日付 朝刊2.3MB

 コミュニケーション手段として活用しているのが、新聞広告だ。昨年9月には「イマークS」の全15段全面広告を出稿。「イマーク」シリーズの発売12周年という節目もあり、改めて機能や効果を簡潔にまとめ、お試しセットの告知もした。中島氏は新聞広告の効果、特性をこう評価する。

 「新聞広告をきっかけにお試しセットを申し込んだ方は、その後、継続的に購入してくださるケースが多い。継続飲用が望ましい『イマークS』にとって、新聞は非常に親和性が高い媒体と捉えています」

 さらに、「特に朝日新聞は真面目で知識欲が高い読者が多い印象で、そうした読者に対してしっかりと当社の取り組みを訴求できたと感じています」と中島氏は評価する。

 10月には、神奈川県の黒岩祐治知事と同社代表取締役社長執行役員の細見典男氏が紙面に登場。「神奈川県と弊社が連携し、健康寿命への取り組みを進めること、そしてEPAの認知拡大が目的でした」と馬場氏は語る。

 また、この広告には社内的な意味合いもあったという。

 「全社員がEPAをしっかりと認知し、一丸となって取り組んで行くという意識醸成のインナーブランディングの効果も期待しました」と馬場氏。工場などにはこのクリエーティブをポスターにして掲出、営業は顧客との商談に活用した。

 今後の展望、課題を聞いた。

 「健康機能を表示する食品は、漠然と『健康にいい』ではなく、何にどういいのかをしっかりとアピールすることが重要と考えます。『イマークS』の主成分であるEPAであれば、中性脂肪を下げるのはもちろん、健康寿命をおびやかす心血管疾患などの予防にEPAが有効であるという数々のデータを提示できます。医師など識者と連携しながら、関心の高い層に向けセミナーなどを開催していく考えです」と中島氏。利用者層を広めるため、将来は店頭販売等での展開も視野に入れているという。

 機能性表示食品はようやくラインアップが出そろった。今後は、店頭での消費者とより深いコミュニケーションのフェーズに入る。

 「課題は、ブランドロゴを付けても数が少ないと売り場で埋もれてしまうこと。缶詰とソーセージを一つの売り場で集合陳列するなど、流通の協力を仰ぎながら、場合によっては競合他社と連携することも含めて検討し、機能性表示食品の活性化につなげていきたい」と馬場氏は話す。機能性表示食品に特化できるドラッグストアとのタイアップなど、チャネルも含めて開拓していく考えだ。