2019年は「パルコイヤー」 その始まりを宣言した元日広告

 パルコにとって、2019年はメモリアルイヤーだ。池袋PARCOが開業して50年目という節目の年に、新しいプロジェクトがスタートする。錦糸町PARCOをはじめ、沖縄・浦添、川崎に続き、秋にはパルコの旗艦店である渋谷PARCOが再開。2019年は、まさしく「パルコイヤー」と言えるだろう。その始まりを社内外に宣言するために、パルコは2019年元日の朝日新聞朝刊に全15段の広告を掲載した。

2019年1月1日付 朝刊0.6MB

元日広告の一番の狙いは、社内の連帯感を高めること

 パルコの歴史は、1969年開業した池袋PARCOから始まった。その4年後の1973年、パルコの2号店として渋谷PARCOが開業した。渋谷PARCOは、渋谷の駅から離れた坂の上に店舗を構え、地域と一体となって発展してきた。商業施設の枠を超え、アート・カルチャーを発信する情報発信拠点としてさまざまな挑戦を行い、時代の一歩先を行く「パルコブランド」を築いた旗艦店である。

2019年1月25日付 朝刊1.3MB

 渋谷PARCOは、2016年夏から建て替え工事のため一時休業していたが、2019年秋に再開することが決まっている。2019年は、池袋PARCOが開業して50周年という節目の年。さらに、錦糸町をはじめ、沖縄・浦添と川崎にて新しいプロジェクトが始動する。そんなメモリアルイヤーである2019年の元日、朝日新聞朝刊に全15段の広告を掲載した。その背景について、パルコの都心型店舗グループ本部 マーケティング担当 部長の伊藤智人氏は次のように話す。

 「パルコの原点である渋谷PARCOの再開では、新しい時代に向けて自分たちのDNAを塗り替え、ファッションビルの在り方を再定義していきます。ターニングポイントとなる2019年を『パルコイヤー』ととらえ、全国のスタッフと一体となって盛り上げていこうと考えました。そんなパルコイヤーの始まりを宣言するにあたり、一番ふさわしいメディアは新聞の元日広告だと考えました」

 特に意識したことは、社内への浸透だったという。新しいプロジェクトに関わる人たちだけでなく、全国のパルコで働くスタッフにも「今年、パルコは次の50年に向けて、新しいチャレンジをする」ことを周知させ、連帯感を高めていくことが、新聞広告を掲載する狙いの一つだった。「パルコのDNAを塗り替えていくためには、スタッフのモチベーションを高めていくことが不可欠。新しい年が始まる元日に新聞広告を掲載することで、50周年を迎え共有すべきミッションの再確認を目指しました」と伊藤氏は振り返る。

 新聞広告のビジュアルは建て替え工事中の渋谷PARCOの写真を使用し、「50年目の、新しいパルコ。」というコピーを採用。これまでの50年を踏まえつつ、これから進化していくパルコへの期待値を高める内容だ。コピー入りの50周年ロゴも制作し、今年の会社の年賀状の絵柄としても使用した。「広告の内容に関する議論は、自分たちがこの1年、何をどう伝えていけばいいのか考える機会にもなり、非常に意義があったと思っています。広告制作に携わるスタッフ同士の連帯感も高まりました」

初売りに並んだ来店客に、スタッフが広告の増し刷りを配布

各店舗で配布した増し刷り裏面1.0MB

 インナー向けのコミュニケーションを新聞広告で発信するメリットは、必然的に全国の読者にも情報を届けられることだ。パルコのスタッフの家族や、テナントの企業、販売員など、ステークホルダーなどにも伝わる可能性が高い。新聞広告の内容は、SNSでも拡散されていたという。「元日、SNSをチェックしていたら、広告のビジュアルや渋谷PARCOに関する情報を話題にしている人が何人もいました。新聞をシンボリックなメディアとしてとらえ、そこから情報を派生させていくことは、むしろ今っぽい発信方法だと感じています」

 元日の広告は増し刷りされ、裏面には建て替え中の渋谷PARCOの情報などを、新聞の記事風に仕立てて掲載した。その増し刷りは、全国のパルコに送り、初売りに並んでいる来店客にパルコのスタッフが手渡ししたという。「お客様に自ら配り、それを読んでいる姿を見ることで、スタッフの意識は高まったと思います。広告では伝えきれないことを記事面で補足できたので、口コミで情報拡散してもらうメディアとして、効果がありました」

 元日広告と増し刷りをセットにして展開することは、パルコ側からの提案だった。「立体的なキャンペーンになると考えたからです。増し刷りの裏面には朝日新聞の題字が入っているのですが、それも魅力の一つ。題字があることでニュースのようなイメージになり、オフィシャルな情報であることが伝わると思います」

伊藤智人氏

 また、同タイミングで、特設ウェブサイトも制作。牧山浩三社長のメッセージをはじめ、パルコに縁のあるクリエーターのインタビューも公開している。最後に伊藤氏は今後の展開について、こう意気込みを語った。「駅から離れた場所で、街とともに発展してきた渋谷PARCOのDNAを、どんな風に塗り替えていくか。皆様の期待を裏切らないためにも、大きく飛躍する必要があると思っています。秋の開業をさらに盛り上げていくための仕掛けも、いろいろ企画している段階です。社内での一体感も、さらに高めていきたいと思っています」