100年の資産と101年目からのさらなる変革を 企業の歩みや思いとともに読者に届ける

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昨年創業100周年を迎えたパナソニック。創業者・松下幸之助氏の「良い商品ができれば、メーカーには、それをより早く、広く、正しくお客さまにお伝えする義務があり、そのための宣伝活動である」という言葉を大切に受け継ぎ、自社のアイデンティティーや商品特性を伝え続けている。

人々の暮らしとともに歩んだ 企業の歴史100年を振り返る

2018年3月9日付 朝刊 大阪本社版 1.1MB

2018年3月9日付 朝刊 東京本社版939KB

 パナソニックは企業宣伝や製品広告の企画・制作部門を社内に置き、多岐にわたる事業分野からテーマを厳選、訴求している。昨年は創業100周年にちなんだ広告が読者の心をとらえた。2018年3月9日に展開した企業広告を担当したパナソニック ブランドコミュニケーション本部 宣伝部 企業宣伝室 室長(兼)コーポレート宣伝課課長の山崎晋吾氏は次のように語る。

 「100周年に際して、創業者・松下幸之助が存命だったらどんなメッセージを発信したか。お客さまへの感謝の気持ちではないか。日本全国すべての方に手紙をしたためたかったに違いない──。そんな思いから、地域との絆をテーマに47都道府県ごとに異なる表現で感謝の思いを伝えました。おかげさまで全国から好意的な反響が届きました」

 掲載から3週間ほど経った頃、掲載写真について「懐かしい風景を覚えている。広告がすてきな贈り物になりました」という感想が届くなど、紙面を保存して見返していた読者もいたという。

 18年11月22日付朝日新聞朝刊では、1918年から現代までの家族の姿を新聞記事とともに振り返る「100年家族新聞」を掲載。企画したパナソニック アプライアンス社 日本地域コンシューマーマーケティング部門 コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部 クリエイティブ課担当課長の高須泰行氏はこう話す。

 「家族という視点で新聞の縮刷版を振り返ったところ、子育てや家事、共働きの増加や高齢化など、社会課題と表裏一体の話題がたくさん見つかりました。記事を通して人々の暮らしの変化や普遍的な価値観を伝えられるのではないか。そう考えました。BtoC商品の広告を制作する部署なので異色の提案でしたが、社内の賛同を得て実現しました。記事は内容が充実している朝日新聞から350点ほど選び、その中から45点をレイアウトして、計60段で展開しました」

2018年11月22日付 朝刊 1.6MB

2018年11月22日付 朝刊 3.0MB

2018年11月22日付 朝刊1.1MB

 記事とともに、創業者がコピーを書いた「買って安心・使って徳用 ナショナルランプ」の広告や、1950年代から長年愛されたキャラクター「ナショナル坊や」の描き下ろし四コママンガも掲載し、読者を楽しませた。

 また、同社は朝日広告賞の常連でもある。二股ソケットをテーマにした広告(1989年度)や、虹こう彩さい認証入退室管理システムをテーマにした広告(2003年度)など、数多くの広告が最高賞に輝いている。

1989年3月27日付 朝刊100KB

2003年12月18日付 朝刊343KB

 「当社のいずれの商品にも『人のために』という創業者の思いが貫かれています。二股ソケットは、一部屋に一つの電源しかなかった時代に、電気をつけながらアイロンがけなどの家事ができるようにと開発されました。二股ソケットをテーマにした広告の掲載日は1989年3月27日、松下幸之助が亡くなったのがその翌月4月27日。この時に改めて先の広告が注目され、訴求力が強まったという話を、当時の担当者から聞いています」(高須氏)

平成の30年で注目度が高まった コト訴求と社会課題の解決

 100年の歴史を持つ同社のコミュニケーションは、平成の30年でどのような進化を遂げたのだろう。

山崎晋吾氏

 「当社が掲げる『A Better Life, A Better World』というブランドスローガンが象徴しているように思います。つまり商品のスペックをアピールするモノ訴求から、商品がもたらすより良い暮らし、より良い世界をアピールするコト訴求へ。この流れが顕著だったと思います。また当社は、松下幸之助の『企業は社会の公器である』『良い商品、良い事業を知らしめることは義務である』という言葉を指針とし、社会課題を解決する様々なBtoB事業を発信してきました。そうした情報が、SDGsなどへの人々の意識の高まりとともに届きやすくなった時代でもあったと思います」(山崎氏)

 この30年はメディアの多様化が進み、自社サイトやSNSによるコミュニケーションが大きく発展した。同社も公式フェイスブックや公式インスタグラムを通じて約100万人のフォロワーとつながっている。

 「SNSは個人とフラットにつながれるツール。詳細な情報をフェイスブックで、ビジュアル的なときめきをインスタグラムで提供するなど、商品やメッセージに合うメディアを選んでコミュニケーションしています。新聞は事実性や信頼性があるので、今回の『100年家族新聞』のように企業の想いを発信したい時に最適なメディアだと思います」(高須氏)

高須泰行氏

 「新聞は『この朝・この夕方』をめがけて各家庭に配布できるので、日本全国のお客さまに感謝の気持ちを一斉に発信する企画は、新聞以外に考えられませんでした。紙の手触り、ペラッとめくる音、インクのにおいなど、五感に訴えられるのも他にない魅力だと思います」(山崎氏)

 最後に今後のコミュニケーションの展望についても語ってくれた。

 「平成には『失われた20年』がありましたが、新元号に変わると早々に東京オリンピック・パラリンピックがあり、2025年大阪万博も決まりました。世の中が活気づき、明るい未来への期待が高まる中で、前向きなメッセージを届けていきたい。マスメディアとSNSの連携などにまだ工夫の余地があると思うので、面白いことに挑戦していきたいですね」(高須氏)

 「創業100周年を迎えた昨年のキーワードは「Trust」と「Change」。それは今後も変わりません。100年培ってきた価値ある資産と、革新的であり続ける企業の姿を、バランス良く伝えていけたらと思います」(山崎氏)