解説
2026.01.19

クロスメディア戦略とは? 担当者が知るべきメリットと成功のポイントを事例と共に解説

クロスメディア戦略とは? 担当者が知るべきメリットと成功のポイントを事例と共に解説

クロスメディア戦略とは、複数のメディアを連携させて相乗効果を狙うマーケティング手法です。この記事では、メディアミックスとの違いといった基礎知識から、戦略のメリット、成功させるための具体的な手順やポイントを解説します。成功事例も交えながら、明日から使える実践的なノウハウを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 企業のマーケティング担当者の皆様、「クロスメディア戦略」という言葉を耳にする機会が増えていませんか。消費者の情報収集行動が多様化する現代において、単一のメディアだけで広告効果を最大化することは困難になっています。そこで重要となるのが、複数のメディアを戦略的に連携させるクロスメディア戦略です。本記事では、クロスメディア戦略の基礎知識から、具体的なメリット、成功に導くためのステップ、そして実際の成功事例までを網羅的に解説します。

 クロスメディア戦略は、現代のマーケティング活動において非常に重要な概念です。まず、その基本的な意味と、混同されがちな「メディアミックス」との違いについて明確に理解しましょう。

 クロスメディア戦略とは、テレビCM、新聞・雑誌広告、Webサイト、SNS、イベントといった複数のメディアを単独で使うのではなく、それぞれを連携させて相乗効果を生み出し、マーケティング目標の達成を目指す手法です。例えば、テレビCMで「続きはWebで」と視聴者をWebサイトへ誘導するのは、クロスメディア戦略の典型的な例です。このように、各メディアの特性を活かしながら、情報を補完し合うことで、消費者の認知から興味、関心、そして購買行動までをスムーズに繋げることを目的とします。

 クロスメディア戦略とよく似た言葉に「メディアミックス」があります。メディアミックスも複数のメディアを利用する点では共通していますが、その目的が異なります。メディアミックスは、同一のコンテンツ(広告メッセージ)を複数のメディアで展開し、できるだけ多くの人々に情報を届けることで認知度を拡大することを主な目的とします。一方、クロスメディア戦略は、メディアごとに役割を持たせ、メッセージや表現を最適化しながらユーザーを異なるメディアへ誘導し、より深い理解や具体的な行動を促すことを目的としています。

戦略

目的

コンテンツ

メディア間の連携

クロスメディア

相乗効果による深い顧客理解と行動喚起

メディアごとに最適化

連携・誘導を前提とする

メディアミックス

認知度の最大化

同一コンテンツを多メディアで展開

各メディアは独立

【関連記事】なぜ新聞広告は「伝わる」のか? 信頼性・効果・クロスメディア戦略で考える新聞広告の価値| 広告朝日|朝日新聞社メディア事業本部

 デジタル技術の進化とスマートフォンの普及により、人々の情報収集の方法は劇的に変化しました。このような時代背景の中で、クロスメディア戦略の重要性はますます高まっています。

 マスメディアのみが主流だった時代、消費者の購買プロセスは比較的単純で、「AIDMAモデル」に示されるように、製品を知り(Attention)、興味をもち(Interest )、欲求をいだき(Desire)、記憶し(Memory)、最終的に購買に至る(Action)というステップで構成されていました。

 しかし、インターネットやSNSが普及した現在、消費者は商品を知ってから購入に至るまでに、検索(Search)、比較(Comparison)、検討(Examination)、共有(Share)といった複雑なプロセスを辿るようになりました(AISCEASモデル)。このように多様化した消費者のタッチポイントそれぞれに対応し、一貫したメッセージを届けるために、クロスメディア戦略が不可欠となっているのです。

 消費者行動の変化に伴い、各メディアが担うべき役割も変わってきました。テレビCMだけで購買が完結する時代は終わり、Webサイト、SNS、交通広告など、それぞれのメディアが持つ特性を理解し、認知、興味喚起、理解促進、購買といった各フェーズで最適な役割分担をさせることが求められます。クロスメディア戦略は、このメディアごとの役割を再定義し、統合的にプランニングするためのフレームワークとなります。

 Web広告の発展により、ユーザーが広告に接触してからコンバージョンに至るまでの行動を詳細に追跡できるようになりました。さらに近年では、テレビCMの視聴データとWebサイトへのアクセスデータを連携させたり、交通広告(OOH)の接触者数をインプレッションとして計測したりするなど、オフライン広告の効果測定技術も進化しています。このように、メディアを横断した効果測定の精度が向上したことで、各施策の貢献度を可視化し、データに基づいたPDCAサイクルを回すことが可能になり、クロスメディア戦略の有効性を高めています。

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 クロスメディア戦略を導入することで、企業は多くのメリットを得ることができます。ここでは、特に重要な3つのメリットについて解説します。

 それぞれの広告メディアには長所と短所があります。例えば、テレビCMは幅広い層に短時間で認知を広げる力がありますが、伝えられる情報量には限りがあります。一方、オウンドメディアやWebサイトは詳細な情報を提供できますが、それ単体で多くの人を集めるのは容易ではありません。クロスメディア戦略では、これらを組み合わせることで、テレビCMで興味を持ったユーザーをWebサイトに誘導し、より深い情報を提供するといった形で、お互いの弱点を補い合い、全体の効果を最大化することができます。

 クロスメディア戦略は、段階的に見込み顧客を絞り込み、質の高いリードを獲得することにたけています。まずマスメディアやSNS広告で広く浅くアプローチし、その中で商品やサービスに興味を持った、より購入意欲の高いユーザーだけを次のステップ(Webサイトでの詳細情報閲覧や資料請求など)へと誘導します。このプロセスを経ることで、最終的に購買や契約といったコンバージョンに至る可能性の高い、質の高い顧客を集めることができるのです。

 複数のメディアを連携させることで、各メディアがコンバージョンに対してどの程度貢献したのかを測定しやすくなります。例えば、どの広告からWebサイトへの流入が多いのか、どのメディアを経由したユーザーの成約率が高いのかといったデータを分析することで、課題点が明確になります。これにより、広告予算の最適な配分を検討したり、効果の低い施策を改善したりと、スピーディーなPDCAサイクルを回すことが可能になります。 

 クロスメディア戦略を成功させるためには、各メディアの特性を理解し、適切に組み合わせることが不可欠です。ここでは、代表的なメディアを3つのカテゴリーに分けて解説します。

 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4つの媒体は「マスメディア(4マス)」と呼ばれ、不特定多数の消費者に一斉に情報を届ける力に優れています。新商品や新サービスの発表時など、短期間で認知度を飛躍的に高めたい場合に効果的です。ただし、広告費用が高額になる傾向があり、詳細なターゲティングが難しいという側面もあります。

メディア

主な特徴

テレビCM

映像と音声でインパクトが強く、幅広い層にリーチ可能

新聞広告

信頼性が高く、広告の内容をしっかり届けることができる

雑誌広告

特定の趣味・好みを持つ層に深くリーチできる

ラジオCM

特定の時間帯や地域で繰り返し訴求でき、親近感を与えやすい

【関連記事】広告の態度変容からみた新聞広告の役割 ~情報感度に合わせたアプローチを考える~|朝日新聞 Business Hub

 WebサイトやSNS、メールマガジンなどのインターネットメディアは、情報の詳細性や双方向のコミュニケーションに強みがあります。マスメディアで興味を持ったユーザーを受け止め、より深い情報提供や関係構築を担う中心的な役割を果たします。低コストで始められるものが多い一方、情報が氾濫(はんらん)しているため、ユーザーに発見してもらうための工夫(SEOなど)が必要です。

 チラシ、ダイレクトメール(DM)、パンフレット、交通広告(OOH)といったアナログメディアも、クロスメディア戦略において重要な役割を担います。特定のエリアに住む人々や、特定の交通機関を利用する人々など、ターゲットを絞って物理的にアプローチできるのが特徴です。特に、Webにあまり触れない層へのアプローチや、手元に残る形での情報提供に有効です。

 効果的なクロスメディア戦略は、行き当たりばったりではなく、精密な計画に基づいて実行されます。ここでは、戦略を成功に導くための基本的な3つのステップを紹介します。

 まず行うべきは、自社の商品やサービスが「誰のためのものなのか」を徹底的に分析し、具体的な顧客像である「ペルソナ」を設定することです。年齢、性別、職業といったデモグラフィック情報だけでなく、ライフスタイル、価値観、情報収集の仕方といったサイコグラフィック情報まで詳細に設定します。ペルソナが明確になることで、どのメディアで、どのようなメッセージを伝えるべきかという戦略の根幹が定まります。

 次に、設定したペルソナが商品やサービスを認知し、最終的に購入や利用に至るまでの行動、思考、感情のプロセスを時系列で可視化した「カスタマージャーニーマップ」を作成します。このマップ上で、「認知段階ではテレビCMSNS広告」「比較検討段階では比較サイトとオウンドメディアの記事」「購入段階ではECサイトと店舗」といったように、各フェーズで顧客が接触するメディアと、そこで提供すべき情報を設計します。これにより、顧客の行動に寄り添った一貫性のあるメディア展開が可能になります。

 戦略を実行に移す前に、各施策の成果を測るための重要業績評価指標(KPI)を明確に設定することが重要です。例えば、認知拡大が目的なら「Webサイトへのアクセス数」や「SNSでのインプレッション数」、販売促進が目的なら「資料請求数」や「ECサイトでの購入数」などがKPIとなります。施策開始後は、定期的にKPIを測定・分析し、計画と実績の隔たりを把握します。そして、その結果に基づいて施策を改善していく「PDCAサイクル」を回し続けることが、クロスメディア戦略を成功させる鍵となります。

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新聞広告の強みとは?信頼性と到達率の高さで企業メッセージを効果的に届ける

CONTENTS ・新聞社の強み ・各メディア広告との相乗効果 ・事例紹介 ・読者特性

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ここでは、クロスメディア戦略を巧みに活用して大きな成果を上げた企業の事例を二つ紹介します。

 スマートフォンゲームのリリース前から、テレビアニメ、漫画、CDYouTubeチャンネルといった多様なメディアでコンテンツを展開し、ファンの期待感を醸成しました。各メディアがそれぞれのファン層にアプローチしつつ、YouTubeチャンネルがハブとなって情報を集約。その結果、ゲームのリリース直後から爆発的なヒットを記録し、クロスメディア戦略の成功例として広く知られています。

参考:『ウマ娘』アニメ、漫画、動画配信、音楽などのクロスメディア展開総まとめ。ゲーム以外も全部おもしろい! | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

 サービス開始当初から、タレントを起用した大規模なテレビCMで一気に認知度を高めました。同時に、YouTuberとのコラボレーション動画やSNSでのキャンペーンを多数展開し、若年層への利用を促進。さらに、地方自治体と連携したポイント還元キャンペーンや、福岡PayPayドーム(現:みずほPayPayドーム福岡)」のようなリアルな場での体験を通じて、キャッシュレス決済の利便性をあらゆるタッチポイントで訴求し、圧倒的なシェアを獲得しました。

参考:2024年の「PayPay」の決済回数が74.6億回を超え、キャッシュレス決済全体の約5回に1回が「PayPay」に | 2025年3月31日のプレスリリース | PayPay株式会社

 クロスメディア戦略は強力な手法ですが、成功させるためにはいくつかの注意点があります。計画を立てる際に、以下のポイントを必ず確認しましょう。

 戦略を始める前に、最終的に何を達成したいのかというゴール(KGI:重要目標達成指標)を明確にすることが最も重要です。例えば、「ブランド認知度を10%向上させる」「新商品の売り上げを半年で5億円達成する」「Webサイトからの問い合わせ件数を倍増させる」など、具体的で測定可能なゴールを設定します。このゴールがあいまいだと、各メディアの役割分担が不明確になり、戦略全体が機能しなくなってしまいます。

 クロスメディア戦略は、単に多くのメディアを使えば良いというものではありません。各メディアの利用者層、特性、長所・短所を深く理解し、自社のターゲットと目的に合致したものを選定する必要があります。例えば、若年層にアプローチしたいのに新聞広告に多額の予算を投じたり、複雑な商品の説明を短時間のテレビCMだけで完結させようとしたりするのは非効率です。メディアごとの最適な役割を見極めることが成功の鍵です。

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新聞広告の強みとは?信頼性と到達率の高さで企業メッセージを効果的に届ける

CONTENTS ・新聞社の強み ・各メディア広告との相乗効果 ・事例紹介 ・読者特性

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 施策を始めてから「どうやって効果を測ろうか」と考えるのでは手遅れです。各メディアの成果をどのように測定するのか、事前に計画を立てておく必要があります。Webサイトであればアクセス解析ツールを導入し、各広告からの流入経路を特定できるようにパラメータを設定します。オフライン広告であれば、専用の電話番号やQRコードを用意するなど、メディアごとの貢献度を可視化できる仕組みを整えてから、戦略をスタートさせましょう。

 本記事では、クロスメディア戦略の基礎からメリット、成功のためのステップ、具体的な事例までを解説しました。消費者の行動が多様化し、メディアが複雑に絡み合う現代において、クロスメディア戦略はマーケティング活動の成果を最大化するために不可欠な考え方です。自社のターゲット顧客を深く理解し、彼らの行動シナリオに沿って各メディアを効果的に連携させることで、認知拡大から売り上げ向上まで、大きな成果が期待できます。この記事を参考に、ぜひ自社のマーケティング戦略を見直してみてください。