より迅速で細やかなサービスを提供できるビジネスモデルへ

 地域に根ざした店づくりに取り組み、メニューやプロモーションの進化を図っている日本マクドナルド。サラ・カサノバ社長と二人三脚で改革を進める下平篤雄代表取締役副社長兼COOに聞いた。

──昨年3月に副社長兼COOに就任されました。どんな決意でしたか。

下平篤雄氏 下平篤雄氏

 従前以上の企業努力によって、信頼回復を果たさなければと心に誓いました。

 食の安全・安心を最優先課題とし、リカバリープランを推進した結果、昨年は全国で延べ10億人以上ものお客様にご利用いただきました。感謝の気持ちでいっぱいです。

 引き続き信頼回復に努めていきたいと思います。

──サラ・カサノバ社長とは、どのようなことを確認し合いましたか。

 今から10年ほど前、カサノバはマーケティング本部長として、私はコーポレートリレーション本部長として、ともに本社業務に携わりました。カサノバは、目指す方向が一緒だと感じて私を副社長に任命したのだと思います。目指す方向とは、マクドナルド本来の価値の提供です。すなわち、「ワクワクするような店舗体験」と、QSC&V(Quality〈品質〉Service〈サービス〉Cleanliness〈清潔さ〉そしてValue〈価値〉)です。

──マクドナルド本来の価値を提供するために心がけていることは。

 食の品質や情報の透明性の向上、「スマイル0円」の復活、新しい掃除の道具やマニュアルの開発・導入など、様々な取り組みを行っています。また、ビジネスの回復の加速と、将来の成長の礎を築くため、「よりお客様にフォーカスしたアクション」「店舗投資の加速」「地域に特化したビジネスモデル」「コストと資源利用効率の改善」という四つの柱からなるビジネスリカバリープランを策定しました。

 「よりお客様にフォーカスしたアクション」においては、魅力的な新メニューの導入や、お客様の真の声をリアルタイムにうかがえるモバイルアプリ「KODO(コド)」のリリースなど。「店舗投資の加速」においては、既存店の改装など。「地域に特化したビジネスモデル」においては、日本を三つのエリアに分け、マーケティング、人事、財務といった機能を各地域に持たせ権限委譲を進める「地区本部制」の導入など。「コストと資源利用効率の改善」においては、人材や資金などのリソースの最適な配分や抜本的なコスト構造の見直しなどを、それぞれ推進しています。

──ビジネスモデルの変化はありますか。

 「地区本部制」の導入は、大きなビジネスモデルの変化です。本社に権限を集中させて売り上げを伸ばした時期もありましたが、その後、コンビニの台頭や外食産業の多様化、中食需要の増加など、市場環境は大きく変化しました。フランチャイズ化が進みオーナーオペレーターとのコミュニケーションを深化させ、QSCの向上とナショナルプロモーションの最大化のため地域の活動を実行していくことでお客様により迅速で細やかなサービスが提供できるようになります。各地に人材開発の担当者を配置するなど、フランチャイズをサポートする体制も整えました。店舗とオーナーオペレーターをサポートするオフィスともに、リーダーの育成に力を注いでいきたいと思っています。

──今後の取り組みについても聞かせてください。

 今年に入り、「グランドビッグマック」や「クラブハウスバーガー」などが大ヒットしましたが、今後もこうしたマクドナルドらしい、創意工夫に富んだおいしいメニューを、お手頃な価格で次々打ち出していく予定です。もちろんQSCの向上が大前提です。

 また、スポーツ支援、食育支援、地域貢献活動、職場体験学習など、地域の活動に力を入れていきたいと考えています。お子様たちがマクドナルドの調理室に入り、品質や衛生管理の様子を見て体験できる「マックアドベンチャー」なども大変ご好評をいただいています。こうした地道な活動を通して、お客様との絆を強めていきたいですね。

──愛読書は。

 歴史小説が好きで、吉川英治の『三国志』と司馬遼太郎の『峠』は二度読みました。『見えざる顧客』は、仕事においてブレイクスルーのきっかけをくれた本です。

 『ビジョナリー・カンパニー(2) 飛躍の法則』は、理想のリーダー像を発見できた本です。私が理想とするリーダー像は、本書に記された「第五水準のリーダーシップ」に集約されます。「自尊心の対象を自分自身にではなく、偉大な企業をつくるという大きな目標に向けている。個人としての極端なほどの謙虚さと、職業人としての意志の強さをあわせ持つ」。そんなリーダーでありたいと思います。

下平篤雄(しもだいら・あつお)

日本マクドナルドホールディングス 日本マクドナルド 代表取締役副社長兼COO

1953年東京生まれ。76年國学院大学法学部卒。78年日本マクドナルド入社。中央地区本部長、コーポレートリレーション本部長、営業推進本部長などを経て、2005年日本マクドナルド代表取締役。09年大手FC(フランチャイズ・チェーン)のクオリティーフーズ(新潟市)に出向・入社。15年本社に戻り、上席執行役員フィールドオペレーション本部長を経て昨年3月から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、下平篤雄氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.86(2016年6月25日付朝刊 東京本社版)