昨年12月に青山学院大学学長に就任した三木義一氏。同学で教鞭(きょうべん)をとりながら、「青学」のブランドイメージの向上や、新しい時代に貢献できる人間育成のための環境整備に取り組んでいる。今後の展望などについて聞いた。
──青山学院大学の強みや特性について、聞かせてください。
青山学院大学に対する高校生たちの評価は、「女子力」「おしゃれ」「明るい」「校舎がきれい」など、ポジティブなイメージがとても多く、それは大変うれしいことです。その一方で、本学で行われている様々な学問研究についてあまり知られていないことを残念に思っています。
例えば、理工学部の原田実教授率いる原田研究室では、人工頭脳の開発を行い、その技術はヒューマノイドロボットを始め、様々な分野で活用されています。そうした研究活動をいきいきと伝えられたら、中高生を含めて多くの学生たちがわくわくしてくれるはずです。学長として、優秀な教員と好奇心旺盛な若者たちとの出会いの場を増やしていけたらと思っています。
──新たに加えていきたい大学のイメージは。
青学生はとかく「チャラい」という言葉で形容されます。どちらかというとネガティブな意味で使われてきましたが、私はほめ言葉として捉えています。箱根駅伝で活躍した学生たちが象徴的でした。彼らは陰で大変な努力をしていますが、本番はのびのびと楽しみ、好成績をあげても努力をひけらかすことはありませんでした。優勝後のコメントはスマートでウイットに富んでいました。
今後は、そうした精神を「青山アカデミックアスリート(Aoyama Academic Athletes)」、略して「AAA(トリプルエー)」という言葉で表現し、大学のブランドイメージとして打ち出していきたいと思っています。努力至上主義、根性至上主義の日本のスポーツ文化と一線を画すものとして支持されるのではないかと思っています。
──グローバルに活躍できる人間育成に定評があります。
世界各国に海外留学の道を開く一方、海外から多くの留学生を受け入れています。グローバルに活躍できる人材というのは、語学力はあって当然。本学が目指すのは、プラスアルファの知識や見識を携えて国際社会で活躍できる人間の育成です。
昨年は、地球社会共生学部を新設しました。これからの時代に求められるのは、中国や東南アジア、アフリカなどの新興国や途上国に精通する人材です。そうした地域で起こっている差別、貧困、紛争、情報格差などの課題解決に寄与できる人間育成を目指しています。
──今後、力を入れていきたいことは。
これから力を入れていきたいのは、国内の地域振興に寄与できる人間育成です。すでに複数の市と連携関係を築いており、夏休みなどに教員や学生を地方に派遣して英語の授業を行ったり、インターンシップの学生を地方自治体に派遣して街づくり構想に参画してもらったりと、新しい試みを始めていきます
──リーダー信条は。
私の学長としてのモットーは、「ゆっくり急げ」。教育基本法の改正により、学長の権限の範囲は広がりました。ただ、それを幸いに権限を行使するのは間違いで、情報の透明性を高め、徹底的な議論を通じて教職員と理解し合い、改革を進めていきたいと思っています。
──愛読書は。
大学時代に読んだ『法というものの考え方』は、法学者としての自分の礎となった本です。法の価値や法治主義の意義を学びました。『タックス・ヘイブン 逃げていく税金』は、民主党政権下の政府税制調査会や、政策提言組織「民間税制調査会」でともに活動した志賀櫻氏の未来への提言が詰まった一冊です。自分の専門分野の書としては、『間接税と労働者階級』『私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史』『21世紀の資本』なども読み応えがありました。
青山学院大学 学長
一橋大学大学院修了。法学博士。静岡大学人文学部法学科教授、立命館大学法学部教授、同大大学院法務研究科教授などを経て、青山学院大学法学部教授。ドイツでミュンスター財政裁判所客員裁判官も務めた。2015年12月から現職。
※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、三木義一氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)