DX、クラウド、5Gを中核事業に据え、明るい未来を拓(ひら)く

 通信キャリア、製造、小売り、商社、金融、官公庁など約10,000社の多様な領域にITソリューションを提供している伊藤忠テクノソリューションズ(略称CTC)。ビジネスの現況と今後について、代表取締役社長・柘植一郎氏に聞いた。

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柘植氏

──コロナ禍をはじめ外部環境が大きく変化しています。そうした中、2021年3月期は最高益を達成しました。この先の外部環境をどのように予測し、さらなる成長につなげていきたいと考えますか。

 国内の景気は依然として厳しい状況にありますが、情報サービス産業においては、テレワーク需要の増加や、通信キャリアの5Gの商用サービス提供開始を見据えた投資が追い風となっています。IoTやAIを活用した新製品や新ビジネスも次々と生まれており、この状況はしばらく続くと考えられます。ビジネスチャンスを逃さず成長を目指していきます。

──今年4月に中期経営計画「Beyond the Horizons〜その先の未来へ〜」を発表しました。

 中期経営計画では、3つの基本方針「Accelerate(顧客の変革を支える新たな取り組みを加速)」「Expand(強い領域におけるさらなる探究と市場拡大)」「Upgrade(未来を捉えた自己変革の実践)」を掲げました。3つの英単語はいずれも動詞で、約9,000人にのぼる社員一人ひとりが自律的にお客様のニーズに応えていくという思いをCTCグループ全体で共有しています。
 また、マテリアリティ(重要課題)を「ITを通じた社会課題の解決」「責任ある企業活動の実行」「明日を支える人材の創出」としています。これまでマテリアリティはCSR的な位置づけでしたが、企業活動すべてにかかわる取り組みとして特定し直しました。例えば、クリーンなエネルギーや環境負荷の低減に貢献するデータ分析のシステム。また、災害から人を守るシミュレーションのシステム。あるいは、5Gで人と人、人と情報をシームレスにつなぎながら、高齢者や障がい者が使いやすいサービスを提供するシステム。こうしたシステムの活用を企業や研究機関に働きかけるなど、あらゆる活動に「持続可能な社会の実現」という視点を取り入れていきます。

──DX、クラウド、5Gを中核事業に掲げています。

 コロナ禍で生活が一変したことにより、企業のDXに対する真剣度は上がっています。データを有効活用し、新しい価値を生み出すDXがあらゆる領域で進展していくでしょう。CTCへの期待も高まっており、相談案件も増えています。DXというと、経営層の話に思われがちですが、DXによって変わるのは働く現場であり、一人ひとりの生活です。この事実を認識した上で、CTCらしい地に足の着いた施策や最適なシステムの実装を提案していきたいと考えています。
 DXの前提となるクラウドと5Gは当社の得意分野で、高速大容量・多接続・低遅延などを実現しています。5G、IoT、AI技術を組み合わせ、現場の業務を効率化し、サポートするようなインテリジェントなエッジコンピューティングも実用段階に入ってきました。DXの加速に対応できるインフラの構築と、提案力の向上をさらに進めていきます。

──「未来実現IT教室」など次世代の育成に力を入れています。

 CTCグループでは、ITで次世代育成に貢献することを目的に2015年に、考える力(論理的思考)、創り出す力(創造性)、伝える力(表現力)を養う場として子ども向けのプログラミング教室「未来実現IT教室」を始めました。小学校高学年向けの出前授業を行い、子どもたちがITエンジニアにチャレンジする活動を通して物事を論理的に考える「プログラミング的思考」を学ぶとともに、ITの可能性やITエンジニアの仕事に親しむことができます。社員が講師を務めており、社員の社会貢献への参画意識を醸成する取り組みでもあります。

──今も心に残っている職務経験や、リーダーを務めるうえで糧になっている経験について。

柘植氏

 伊藤忠商事では、ニューヨークとシンガポールに合わせて10年ほど駐在しました。国内ビジネスと勝手が違うことが多く苦労もありましたが、グローバルビジネスを体感した経験はCTCの経営においても役立っています。
 また、昨年5月までの5年間はコールセンターのアウトソーシングを展開するベルシステム24の経営を担いました。約35,000人のコミュニケーターを抱える会社でしたので、全体のパフォーマンス向上のためにとにかく現場の声を聞き、その声をもとに職場環境の快適化などに努めました。
 この時から言っていた私の信条は「現場・現実・実態」です。仕事を進めるにあたっての第一歩として、現場と現実を見て実態を把握し、小さいところから取り組むようにしています。状況の変化に対応し、現場に即した形で試行錯誤を繰り返す現実的なアプローチです。
 CTCでも現場の声に耳を傾けていきたい。コロナ禍で直接の対話を控えざるを得ず、隔靴掻痒(かっかそうよう)の感もありますが、社員の7割がエンジニアなので、それこそITの力を借りて声を拾っていきたいと思っています。

──愛読書は。

柘植氏

 『私たちはどこまで資本主義に従うのか 市場経済には「第3の柱」が必要である』や、『欲望の資本主義』シリーズは、個人的に欧米の株主資本主義の限界を感じていただけに、示唆に富む内容でした。『言志四録』はリーダー論として参考にしています。半藤一利さんの著書も好きで、中でも『世界史のなかの昭和史』は、グローバル社会におけるトップのあり方や個のあり方について、考えさせられる内容でした。

柘植一郎(つげ・いちろう)

伊藤忠テクノソリューションズ 代表取締役社長


1958年東京都生まれ。80年慶應義塾大学経済学部卒。同年伊藤忠商事入社。2009年紙パルプ部長。12年執行役員。16年ベルシステム24ホールディグス代表取締役兼社長執行役員CEO、ベルシステム24代表取締役兼社長執行役員。20年6月から現職。

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(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

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