キャンペーンリポート

「わたしと福祉」高校生エッセイコンテスト 「ふくし」の文字に織り込んだ、いま伝えたいメッセージ

日本福祉大学

 余白に浮かぶ 「ふくし」の文字は、細かい文字で形作られている。それらはこれからの社会を担う若い世代、高校生のピュアな言葉の数々だ。

 「ふくしの総合大学」である日本福祉大学では、「わたしと福祉」をテーマにした高校生福祉文化賞エッセイコンテストを毎年開催している。2020年度はコロナ禍の中で試行錯誤の実施となり、11月3日、その結果報告の新聞広告を掲載した。この時期だからこそ伝えたいメッセージを込めた広告展開の背景や、コンテストの歴史、今回の開催について、日本福祉大学学長 児玉善郎氏に聞いた。

2020年11月3日日本福祉大学新聞広告

2020年11月3日付 名古屋本社版朝刊206KB

ふくしの可能性を次世代につなぐ、18年続くコンテスト

 日本福祉大学は愛知県にキャンパスを擁し、日本で初めて「社会福祉学部」という名称を持つ大学としてスタートした。四年制の福祉系大学では国内で最も長い歴史を持つ大学の一つだ。

児玉善郎氏 児玉善郎氏

 「創立は1953年。2003年の50周年を機にスタートしたのが、高校生福祉文化賞エッセイコンテストです。次の時代を担う高校生に、身近な体験を通して感じた『ふくし』への思いを800字以内のエッセイで表現してもらうもので、それを通じて『ふくし』の役割、大切さを社会にアピールし、浸透させたいという意図で生まれました」

 コンテストは朝日新聞社との共催で、2020年で18回目を迎えた。年を追うごとに増えていった応募数は8千~1万点に及んでいる。高校の先生の推奨もあって学校・団体での応募も多く、歴代の行事になっている所も少なくない。全国の幅広い高校から応募があり、さらに近年は海外からの応募も増加している。



 応募テーマを選べるようにしており、今回は下記の三つが提示された。

①ひと・まち・暮らしのなかで―わたしが感じていること―
②スポーツ・文化活動とわたし―わたしが大切にして取り組んでいること―
③すべての人が幸せであるために―わたしが考えるこれからの社会―

 「③など、グローバルな視点も盛り込まれ、それも海外からの応募が増えている理由でしょう。テーマの内容が将来を考える時期にふさわしいとの評価もいただいています」

 直接的な学生募集効果を狙っているわけではないが、これまでの入賞者で日本福祉大学に進学した例もあるそうだ。このコンテストに参加することによって、将来と向き合い、福祉への関心を深めるきっかけになっている。

 審査は3段階。8千を超える応募作を全て読み、抜粋したものから学部長が選ぶ約60点が最終審査へ進む。審査員長を学長が務め、審査員には客員教授である作家の角野栄子氏、同じく元NHKアナウンサーの杉山邦博氏ら、そうそうたる顔ぶれがそろう。

「若い感性で、地域や家族など、高校生なりの様々な触れ合いの中で感じたこと、思ったことがつづられた内容は、どれも800字の中にドラマがあり、毎回感動させられます。次世代を担う若い人たちが社会をしっかりみつめて書いている文章を読むと、この世の中まだまだ捨てたものじゃないなと思わされることも。その中から受賞作を選ぶのが最も苦労する点。力作ぞろいの中、審査員の間で激論になるのが常です」

コロナ禍のもと締め切り延長で例年並み応募数に、授賞式はハイブリッドで

 2020年度は緊急事態宣言、一斉休校の要請が出された状況下、最初は応募数が伸びず、インターネット上や各高校への直接の呼び掛けを行うとともに、締め切りを7月末から8月25日へ約1カ月延ばし、夏休みに取り組めるようにした。結果、例年に並ぶ8,193点の応募があり、最終審査に残った55作品から3分野で各6点・計18点と、併せて学校賞14校が選ばれた。

 授賞式は、例年10月にキャンパスや朝日新聞名古屋本社15階の朝日ホールなどで行っていたが、今回は朝日ホールと受賞者をリモートでつないで表彰し、その様子をインターネットで動画配信するハイブリッド方式で実施した。

 「コロナ禍の中で幸せや支え合いについて改めて考えた今年。その経験からいま思うことを表現し、伝えてもらい、結果として例年より熱いメッセージが集まりました。ハイブリッド授賞式は初めてのことが多く、無事終わった時はどっと疲れが(笑)。参加した高校生からは『みんなに直接会いたかった』という声も多く出て、顔を合わせて触れ合うよさを見直す機会にもなったと感じました」

 一方、ハワイからの参加もあり、距離の壁を越える可能性も示され、来年以降は状況が許せばリアル開催にリモートのメリットを取り入れて、新たなハイブリッド方式を模索していく考えだ。また、書き方の講座もウェブサイト上に公開し、そのために作った動画を今後に生かせるなど、副産物もあった。

平仮名の「ふくし」をモチーフに、新聞紙面を効果的に使う

 11月3日の朝刊に掲載したコンテスト結果報告の新聞広告は、社会状況も鑑み、日本福祉大学のエッセイコンテストらしさが表現できるクリエーティブを練った。

児玉善郎氏

 「社会全体が、普通の暮らしを送れることの幸せや有難さをひしひしと感じている中、そんな時期だからこその新聞広告を届けたいと思いました。そこで採用されたのが、余白を生かしたシンプルな表現に、文字のメッセージを織り込むアイデアです」

 「全ての子どもたちが笑顔で過ごせる社会になるために」「伝えようとする気持ちと行動で人と人とは通じ合える」……エッセイの一部や受賞者のコメントで平仮名の「ふくし」の文字を構成。あとは印象的なコピーと受賞者や学校名を記すに留め、詳細についてはウェブサイトへQRコードから飛べるようにした。

 「平仮名というのにも意味があります。本学では、障害者や高齢者といった狭いイメージになりがちな漢字の『福祉』ではなく、平仮名で『ふくし』と表記することで、その広さ、大きさを感じてもらおうとしています。2014年には、多様な分野を支える専門職を養成する大学であることを表現する『ふくしの総合大学』を商標登録しました」

 紙面を見た卒業生からは「あえて平仮名で表記する意味がよく伝わった」という声も届いた。広告の表現に関してはさまざまな意見があるのが通常だが、今回は否定的な意見がなく、SNSなどで好意的な反響も多数上がった。

 日本福祉大学の広報活動では、大学を幅広く知ってもらうこと、高校生に向けたアピールを主軸に、ウェブやSNSの展開に併せ、要所で交通広告や新聞広告を活用している。「今までは多くが学びの紹介だったが、より力を入れていきたいのは特色ある教育・研究の成果の発信。個々の発信だったものをまとまった形にしたい」と、今後の方針を示す。意識にあるのは2030年の達成をめざすSDGs(持続可能な開発目標)だ。

 「すべての人の『ふつうの くらしの しあわせ』を理念に掲げる本学の取り組みは、『誰一人取り残さない』をはじめとするSDGsの考え方と重なります。学内にSDGs推進委員会を発足し、地域、全国、さらに世界へ発信していこうとしており、また、SDGs活動を高大接続に取り入れる計画もあります。そういったことも積極的に伝えていきたい」

 SDGs関連を含め、大学の取り組みを幅広くアピールしようとする時、新聞広告への期待は大きいという。

 「新聞は幅広い世代に日常的に見られる媒体。ウェブやSNSの存在感が増す中でも、新聞に載るという価値、その信頼性、ブランド力は依然として大きく、それは大学のブランドイメージにもつながると考えています。エッセイコンテストも、新聞社の全面的なバックアップがあったことがこれだけ長く続けて来られた要因です」

 今後も新聞広告も活用しながら、社会的意義のある活動に協力して取り組んでいく予定だ。

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