キャンペーンリポート

時代を経ても変わらない宝島社の姿勢を示す企業広告 今年は新型コロナの感染対策がテーマ

宝島社「ねちょりんこ、ダメ。」「言われなくても、やってます。」

 宝島社は2021年1月6日と1月7日の2日間連続で、朝日新聞全国版の朝刊に全30段の企業広告を掲載した。いずれも新型コロナ感染症対策をテーマにした内容で、SNSでも大きな反響を呼んだ。メッセージ性の強い企業広告の制作プロセスと掲載後の反響、また1998年から継続して企業広告を制作し続ける理由について、宝島社 広報課課長の山﨑あゆみ氏に聞いた。

2021年1月6日 東京本社版朝刊 2021年1月6日 東京本社版朝刊
30段カラー1.4MB
2021年1月7日 東京本社版朝刊 2021年1月7日 東京本社版朝刊
30段カラー2.1MB

刻々と変わる社会情勢を見ながら企画をブラッシュアップ

 宝島社が今年、朝日新聞に2日間連続で掲載した企業広告は「ねちょりんこ、ダメ。」と「言われなくても、やってます。」という二つのシリーズだ。いずれも、新型コロナ感染症対策がテーマ。1月6日に掲載した「ねちょりんこ、ダメ。」は不用意な濃厚接触は避ける必要があり、その面白みに欠ける日常を「ねちょりんこ」というユニークな造語と葛飾北斎による「北斎漫画」のビジュアルで表現した。1月7日には、日本人の衛生観念についてうたった「言われなくても、やってます。」を掲載した。偶然にも1月7日は2回目の緊急事態宣言が発出された日で、タイムリーな内容だったことも注目を集める後押しとなった。

 新型コロナにまつわる社会情勢が刻々と変化している中で、どのように広告は制作されたのだろうか。山﨑氏は次のように話す。

 「私たちは1998年から継続して新聞に企業広告を掲載しています。年の始まりに掲載することが多いですが、“いま企業として伝えたいメッセージ”を発信しているため、必ず時期が決まっているわけではありません。制作の進行もその年によって違います。今年は、最初のプレゼンが20年4月ごろ。最初の打ち合わせの段階から、弊社社長の蓮見清一が挙げていたキーワードのひとつが『衛生』でした。コロナが日本で抑えられているのは、国民一人ひとりが衛生に対する意識が高いからだろうと。今回は最初の段階からテーマは決まっていましたが、今のクリエイティブに落とし込むまで、幾度も打ち合わせを重ねました。クリエイティブの方向性が見えてからも最後まで社会情勢を見ながらブラッシュアップしていくのは常なのですが、特に今回はその点を意識していました」

 テーマ出しからクリエイティブのアイデア、完成まで、クリエイティブチームと蓮見社長はディスカッションを重ねていくという。会話の中から進行中のテーマとは別に、全く新しい企画が生まれることもあるそうだ。ちなみに「ねちょりんこ、ダメ。」というコピーは、蓮見社長が使っていた造語から着想を得て生まれたという。

 「弊社は企業広告制作に限らず、コミュニケーションを大切にしています。社内でも、役職や部署間の垣根なくコミュニケーションがとれるような工夫や、社長と社員が会議以外で雑談ができる場などを設けています。企業広告においてもクリエイティブチームとのブレストの時間を大切にしています。人と人との雑談の中からこそ、大切な情報が得られたり、新しいアイデアが生まれてくると考えているからです。今回も、衛生や除菌、ぞうきん掛けをする生活習慣など、様々なキーワードからアイデアを練り上げていきました」

コミュニケーションを誘発する企業広告、賛否両論は狙いどおり

 完成した企業広告は、朝日新聞のほか、他紙でも掲載した。テーマは各紙違ったが、その理由は「今伝えるべきメッセージを考えていく中で、結果的に3テーマになった」と山﨑氏。朝日新聞のみ2部作になっているのは、どちらも伝えるべき内容であり、2部作にすることでより強く発信できると考えたからだ。政府の姿勢に切り込む記事の多い朝日新聞との親和性が高いと捉えているという。

 毎年多様なクリエイティブの企業広告を制作しているが、「企業として今、社会に伝えたいメッセージを発信する」という企業広告の方針は一貫している。その背景にあるのが、宝島社のルーツだ。現在、ファッション雑誌販売部数トップシェアの同社は、出版業界をけん引する中心的な存在でもあるが、もともとは「宝島」や「別冊宝島」などサブカル雑誌から始まった。

 ファッション誌も、コンサバなファッションが中心だった時代に、ストリートファションに着目。メーンカルチャーに引き上げた。世の中の潜在的なニーズや読者層を掘り起こし、新たな価値として世の中に提示していく。そのマインドは今も変わらない宝島社らしさであり、企業広告のメッセージからも感じとることができる。「新しい視点や価値観をコンテンツとして提供し、世の中に投げかけていくという点では、商品も企業広告も、その考え方は一緒なんです。商品だけでは伝えきれない、企業として伝えたいメッセージを、広告にして発信しています」。

 社会に渦巻く問題と向き合い、インパクトのあるビジュアルやコピーで表現する同社の企業広告は、賛否両論を巻き起こすことも珍しくない。「様々な意見があっていいと思っています。広告がコミュニケーションツールとして活用されることは、狙いの一つ」

 今回の反響は「近年の中でも特に大きく、そのほとんどが好意的な意見だった」という。SNSで発信する人も非常に多く、「よく言ってくれた」「代弁してもらえてスッキリした」など、大半はポジティブな内容だった。「今回は『とても共感したので、どうしても直接伝えたかった』と電話をくださる方もいました」

 特に広告の右下に配した「感染拡大は、個人の責任だそうです。」という、含みのあるメッセージが心に刺さった人も多かったはずだ。もともとは「個人の責任です。」だったが、感染が拡大しながら政府が迷走していることを鑑みて、クリエイティブチームからの提案で「個人の責任だそうです。」に、掲載直前で急遽変更したのだという。

 1998年から新聞で企業広告を掲載している理由について、山﨑氏は「新聞は全30段というサイズが手元に広がる、五感に訴えられるメディアだから」という。

 「スマホやタブレット、パソコンなど画面で情報を得ることに慣れたからこそ、全30段の新聞広告はより大きく強く感じられる。そのインパクトによって、メッセージもより深く伝わるように思います。また記者が取材した信頼度の高い情報を伝えるメディアであり、有料で情報を得ている意識の高い読者にメッセージを届けることができる点でも、新聞広告を重視しています。企業広告はおかげさまでSNSやウェブニュースでも拡散され多くの方に目にしていただいていますが、若い世代の方々にも実物を手元で見てもらいたい。そのほうが、新聞の価値も伝わると思います」

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