パルコは2026年1月1日の朝刊に、アニメ映画『パプリカ』とコラボした冬の大セール「PARCO GRAND BAZAR」の15段広告を出稿。『パプリカ』は筒井康隆の同名小説を原作に、今 敏監督がアニメ映画化した作品で、夢と現実の境界が揺らぐ世界を描く。店舗での施策にテレビCM、特設サイトなどを多角的に使ったメディアミックスのキャンペーンについて、宣伝部の草刈洋氏、甲藤夕佳氏、本橋乃衣絵氏に伺った。
世界から注目される『パプリカ』の魅力を幅広い人に知ってもらいたい
──今回、パルコが『パプリカ』とコラボした「GRAND BAZAR」を開催した背景を教えてください。
甲藤氏 パルコの「GRAND BAZAR」は創業以来50年以上続くセール企画です。近年はマリオやポケモン、ゴジラなどさまざまなキャラクターの他、松平健さんや西川貴教さん、パルコの初期広告を手掛けたイラストレーター山口はるみ氏とコラボするなど、その時代にパルコが注目するコンテンツやアーティストとタイアップしてきました。今年は公開20周年を迎えた今 敏監督のアニメ映画『パプリカ』とコラボすることにしました。『パプリカ』を筆頭にした今 敏監督の作品は、国内外に熱狂的なファンがいます。宣伝部のメンバーの多くも今さんの作品を深くリスペクトしています。
パルコは単に商品を売るだけではなく、渋谷から文化を発信することを重視しています。世界が注目する作品『パプリカ』の魅力を、より幅広い人に知っていただきたい。そんな思いで今回、タイアップさせていただくことになりました。
──「GRAND BAZAR」全体のキャンペーンについて教えてください。
本橋氏 「GRAND BAZAR」は1月上旬の10日間ほど、全国のPARCO15店舗で開催しました。『パプリカ』は他人と夢を共有できる装置が開発された近未来を舞台に、セラピストの千葉敦子が、性格も容姿も別人の夢探偵パプリカに姿を変え、事件の真相を追うSFサスペンスです。夢と現実が入り乱れ、どこまでが現実でどこからが夢なのか、あいまいな映像が最大の魅力です。
私どもではそんな『パプリカ』の世界観を表現したキービジュアルポスターと、CM動画を制作して全国のパルコで展開しました。動画は『パプリカ』を象徴するキャラクターの有象無象が渋谷の街を侵食しながら行進し、最後はエレベーターガールに扮したパプリカが、パルコの「GRAND BAZAR」へ誘うといったしかけです。渋谷の街を撮影した実写とアニメのキャラクターを合成することで、現実が夢に侵されていく物語の世界観を表現しました。同時に特設サイトでも、夢の世界が侵略してくるような体験が得られる工夫をしました。
──店舗ではどのような施策を行いましたか。
本橋氏 豪華なオリジナルグッズが当たる抽選会や、対象のレストラン・カフェでの「オリジナルブックマーカー」のプレゼントの他、SNSで対象の投稿をリポストして『パプリカ』への愛のコメントをしてくださった方にポスタープレゼント。また、パプリカの声を担当した林原めぐみさんによる館内放送、リバイバル上映、パルコの運営するカフェ&バー「QUATTRO LABO」でのオリジナルコラボドリンクの提供など、『パプリカ』の世界を体験できる企画や、POP UP SHOPでの『パプリカ』オリジナルグッズ販売など、多数の企画を用意しました。
信頼性ある新聞だからこそ 元旦に伝えたパルコのメッセージ
──キャンペーンのなかで新聞広告にはどのような役割を期待しましたか。
草刈氏 今回、公開20周年という節目に『パプリカ』の文化的価値を幅広い方に伝えたいとの思いがありました。そのためには幅広い年齢、性別の方が読み、信頼性が高い新聞メディアでの発信は不可欠だと思いました。とりわけ文化欄に定評があり、アートやカルチャーに深い関心を持つ読者が多い朝日新聞はうってつけだと考えました。
──元日広告ということで意識されたことはありますか。
草刈氏 パルコでは長年、元日に「GRAND BAZAR」の新聞広告を出稿していました。元日には多くの企業がメッセージ広告を出しますが、「GRAND BAZAR」の広告も集客が目的というより、パルコのカルチャーを発信することやブランディングを重視しています。
今回の新聞広告は「GRAND BAZAR」のキービジュアルポスターを新聞15段にリサイズしたものです。キービジュアル制作では、夢と現実が混合したパプリカの世界観を表現するために、アニメのコマを一つひとつ選んでは組み合わせる作業を何度も繰り返しました。20年前の映画なのでデータの状態や解像度がバラバラで、それらをコラージュして統一感あるビジュアルにするのには苦労しました。
──コピーが「GRAND BAZAR」の文字と日程、場所だけというのも潔いですね。
甲藤氏 私どもの思いやメッセージはクリエイティブに込めています。よって新聞広告にも文字を必要最小限に抑えることは、制作陣のなかで最初から一致していました。ビジュアルを際立たせたことで、「この絵はなんだろう?」と思った読者が自ら「GRAND BAZAR」についてネットで調べ、このビジュアルが『パプリカ』の世界観を表現したものであることを知る。そのようなかたちで『パプリカ』に興味をもっていただけた方もいるのではないかと思います。
ファンへのサプライズとなり 写真をSNSに投稿する人も
──出稿後の反響はいかがでしたか。
甲藤氏 今回の新聞広告はとくに事前の告知はしていなかったので、今さんのファンにとってはサプライズで、みなさん何げなく新聞を開き、このビジュアルが現れた時は、驚かれたようです。喜びとともに、新聞紙面を写真に撮って、SNSにアップされている方も見かけました。その投稿を見て、コンビニに新聞を買いに走った方もいらっしゃったようです。
このように読者を起点に、私どもが意図していないムーブメントが起き、新たな価値が生まれていることはとても面白いと思いました。
本橋氏 今回制作したキービジュアルポスターは店舗に掲出するものです。基本的に販売していません。このポスターが欲しい方にとっては、この新聞広告は貴重です。新聞紙面をポスターのように部屋に飾って楽しまれた方もいるのではないかと思います。
草刈氏 私の周りからも「新聞見たよ」「いいビジュアルだね」などといった嬉しい声をたくさんいただきました。この新聞広告をきっかけに『パプリカ』のことを知り、ファンになってくださった方も多いようです。『パプリカ』の魅力を次世代にも伝えたいとの私どもの願いがかなって嬉しいですね。
甲藤氏 おかげさまで期間中の売り上げや来客数も昨年より大幅にアップしました。抽選会の参加者も前年より多く、数字の上でも大きな効果がありました。
──最後に今後の広告展開についてお聞かせください。
甲藤氏 私どものベースの考え方として、性別も年齢も国籍も問わず、幅広い方にパルコの魅力を知っていただきたいとの思いがあります。そのうえでその時々、発信したい対象に合わせて適切なメディアを選んでいます。今の時代、メディアミックスは不可欠です。今後も私たちのメッセージをしっかり伝えるために、ポスターや店舗イベント、SNSやデジタル広告、雑誌や新聞などを上手に組み合わせながら発信していきたいと思っています。
草刈氏 パルコが一般企業の宣伝と少し違うのは、表現コンテンツによってアプローチの方法も大きく変えているところです。つまりその時々のコンテンツに応じて、もっともビジュアルとの相性がいい媒体を選んでいます。今回の新聞出稿を通して、ページをめくって紙面が現れた時の迫力、紙というフィジカルなものの力をあらためて感じました。すぐ流れ去るSNSや映像と違い、お客様が保存でき、後々まで残るところも新聞の良さです。パルコには昔からポスターをとても大切にする文化があります。デジタル全盛の今だからこそ、同じ紙メディアである新聞の力を、これからも有効に使っていきたいと考えています。