日本大学は2026年1月18日、朝日新聞朝刊に全15段の新聞広告を掲載した。16学部と通信教育部に所属する教員がモデルとして登場し、写真撮影およびビジュアル制作は芸術学部の教職員のサポートのもと、同学部の学生が担当した。コピーの設計から撮影、表現に至るまで、広告制作は学内の所属メンバーのみで行われた。日本大学本部広報部・部長の小野浩樹氏、同部特任事務長の金澤德智氏、同部広報課・課長の影井篤氏に、学生たちに制作を委ねた背景や、キャッチコピーに込めた思いについて聞いた。
創立記念日、入試シーズン 節目にあわせて続けてきた新聞広告の活用
──日本大学のコミュニケーション施策の現状について聞かせてください。
小野氏 新聞広告は他大学も展開し、特に入試のシーズンの前になると願書の提出期日や入試日程を紹介する広告を出すことが多いと思います。本学もこれまでそうしたコミュニケーションを行っていますが、ここ数年は総合教育機関としてのスケールメリットを可視化するようなコミュニケーションに注力しています。
一昨年、日本大学創立記念日の10月4日に出稿した新聞広告では、「新しい日大」に向けた決意を大貫進一郎学長自らが表明しました。
昨年1月の大学入学共通テストの時期には、学内の多様性や「学生が主役」という教育方針を、16学部と通信学部、合わせて17人の学生たちの勇姿を通じてお届けしました。
金澤氏 日本大学の認知度は高い一方で、どんな学部があるのか、どんな学生たちが学んでいるのかなどについてはご存じない方がまだ多くいます。ここ数年のコミュニケーション施策はその課題に向き合ったものと言えます。伝え方としては、昨年1月の新聞広告で展開したフォトグラファーのレスリー・キー氏の撮り下ろしのように、スケールメリットが明快なイメージとして伝わるコミュニケーションを心がけています。
影井氏 前々回は大貫学長、前回は各学部の学生にスポットを当てましたので、今回の広告では、各学部の教員にスポットを当てました。本学は教育機関としてのスケールメリットに加え、研究機関としてのスケールメリットも国内屈指であり、各学部の教員は研究の第一線で活躍されている方々です。
広告紙面には、16学部と通信学部、合わせて17人の研究者(教員)にモデルとしてご登場いただきました。
──今回の広告で最も伝えたかったメッセージは。
小野氏 本学では、自分の所属する学部・学科以外の授業を受講できる相互履修制度や、学部・学科を横断した連携研究、学生の自由な発想を応援する「自主創造プロジェクト」、16学部・短期大学部の学生が混在してグループワークを行い新しいアイデアを生み出す「日本大学ワールドカフェ」、学生・教員・職員が一堂に会して教育改善について議論する「日本大学学生FD CHAmmiT」など、様々な取り組みを行っています。
こうした総合大学のスケールメリットをあらためて伝えたいと考え、その思いを「ひとりひとりの『知』の連携 未来を創る日本大学」というコピーに込めました。
写真撮影を通して生まれた学生と教員の一体感
──制作の流れと、広告クリエイティブのポイントについて教えてください。
小野氏 制作の流れとしては、メインコピーの文言と教員たちにモデルになっていただくアイデアを広報部でまとめ、ビジュアルやメッセージの制作は芸術学部の教員と学生たちに委ねました。芸術学部にはプロのクリエーターを目指してアイデアや能力を磨いている学生が大勢おり、「学生が主役」という教育方針を広告でも実現したいと考えたのです。その思いを芸術学部デザイン学科の笠井則幸教授と同学部写真学科の西垣仁美教授に相談したところ、快諾していただきました。
金澤氏 広告制作は授業の一環として行われました。撮影当日は、学生たちが教員たちの個人プロフィール写真を撮るところから始まりました。このときに学生と教員の間で活発な交流が生まれ、撮影を待つ教員同士もいろいろと会話が弾んでいました。その雰囲気が最高潮に盛り上がった段階で、教員の集合写真が撮影されました。
コピーにある「ひとりひとりの『知』」は、学生ひとりひとり、教員ひとりひとりを意味するものですが、それらが可視化された紙面になったと感じています。広告紙面の2次元コードを読み込むと、撮影風景をYouTubeで見ることができる仕組みにしました。
日本大学新聞広告メイキング動画はこちらからご覧いただけます
芸術学部の教授陣からも広告への思いや、制作に携わった学生たちの様子についてコメントをよせてもらったので紹介させてください。
広告を見た瞬間に「この大学で学んでみたい」と感じてもらえるような空気感を作ることを大切にしました。若手からベテランまで、多様な先生がいきいきと活躍している雰囲気を紙面にまとめることで、大学全体が「一つの家族」であるかのような温かいイメージを表現しました。
デザインでは、写真の余白を活かしつつ、各学部の先生から「知」のDNAのような線をつなげ、上部をクラウドのような表現で日本大学のスケールメリットを視覚的に示しました。それぞれの学問領域を表現するアイコンも学生がデザインしたものです。
学生たちが学びを得ながら実学として広告制作に携われたことは、とても良い経験になったと思います。当日はかなり緊張していたようですが、大きな仕事をやり遂げたという達成感を得られたようです。
影井氏 写真学科の学生たちは、撮影前日からキャンパス内のスタジオに入って下準備をするなど気合が入っていました。当日は服装のディレクションも学生が行い、教員の皆さんと積極的にコミュニケーションを取っていました。
教員の皆さんは研究にちなんだ小道具を持って撮影に臨み、学生たちがそれを見て「先生はどんな研究をされているのですか?」「同じ学内でそうした研究が進んでいるとは知りませんでした」などと、新たな発見を楽しんでいる様子も印象的でした。
一方、出演教員の中には芸術学部の写真スタジオに初めて入って「これほどの規模のスタジオが学内にあるとは知らなかった」と驚いている方もいました。そうしたやり取りを通して全体の一体感が生まれていきました。
教員・学生の姿を通じたコミュニケーション、信頼・イメージの向上を実感
──広告掲載後の反響はいかがでしたか?
影井氏 新聞広告共通調査プラットフォーム「J-MONITOR」の調査結果によれば、好意的な反響が大半でした。特に「すべてを自前で制作したことがすばらしい」という感想が目立ちました。また、モデルとなった教員と広告制作に携わった学生たちの名前を紙面に掲載しましたが、このことについて芸術学部の教員陣から、「自分たちの名前が全国紙に掲載されることが学生たちの大きなモチベーションになった」という声をいただきました。
小野氏 J-MONITORの結果から、今回の広告が日大に対する信頼やイメージアップにつながったことも明らかになりました。今後も継続的なコミュニケーションを通して日大の特性や魅力を発信していきたいと思っています。
──新聞広告についてはどのような印象がありますか?
影井氏 新聞は各家庭に届けられることで、より多くの読者に読んでいただけるメディアです。そのマスに訴える力が強みだと感じています。
その中でも朝日新聞は大学教育についての発信も多く、関心を持った読者の方に届いていると感じます。
──今後のコミュニケーションの展望を教えてください。
小野氏 具体的なことはまだ検討中ですが、10月4日の創立記念日と、受験シーズンの1月の新聞広告はこれからも続けていきたいと思っています。
金澤氏 一昨年からの一連の新聞広告の反響を考えますと、これからもいろいろな可能性があるのではないかと感じています。いずれにしても、学生ひとりひとりに合わせた教育と、スケールメリットを活かした「知」の連携という強みを今後も変わらず訴求していくつもりです。