インタビュー
2026.05.01

個性が交わる 世界と混ざる これが、関大。

関西大学総合企画室広報課 課長補佐小林亮介
個性が交わる 世界と混ざる これが、関大。

 140年の歴史を持つ関西大学は202613日、新キービジュアルを初公開する15段広告を朝日新聞朝刊に掲載した。描きたかったのは、整った国際性ではなく、多様な価値観が混ざり合い、見る人の感性を動かす関大らしさだ。制作を手掛けたのは、国内外で高い評価を受けるイラストレーション・デザインスタジオのIC4DESIGN(アイシーフォーデザイン)。出稿の背景や思い、掲載後の反響を聞いた。

記憶に残るビジュアルをじっくり見てもらうために

 関西大学を象徴するキービジュアルを作り替える時期にきていた2025年。

 「大学をよく見せるためではなく、見た人の記憶に残るような新しいビジュアルを作りたい」という思いが原点にあったそうだ

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 多様な国籍や背景、個性を持つ人がごちゃっと混ざり合っているのに、不思議とまとまっている――それが関大らしさだと感じていたと小林氏

 一方で、制度や実績としての魅力を説明するだけではなく、関西大学がどのような価値観を持った場所なのかを感じてもらうことが重要ではないかという考えもあった。これまで元気”“親しみやすいといったイメージで語られてきた関大を、別の角度から捉え直し、その本質を少しずつ「ずらして」伝えていきたい。その思いが、新キービジュアル制作の出発点となった。

 デザインを模索するなかで出会ったのがIC4DESIGNだった。緻密な描写と、何度も見返したくなる表現に惹かれ、制作を依頼した。

 同社は、The New York Times MagazineのカバーイラストやUN Womanキャンペーンなど海外での案件も多く、手掛けた絵本『迷路探偵ピエール』シリーズは世界30カ国以上で出版されている。国際的な広告賞のカンヌライオンズで銅賞を獲得するなど、国内外で活躍中だ。

 依頼に対し、「まず大学を実際に見たい。自分たちが描きたいと思えるか確かめたい」との言葉が返ってきた。その姿勢に共感し、単なる受注関係ではなく、同じ方向を向いて制作に向き合えるパートナーだと感じた振り返る

 2025年夏、カミガキヒロフミ氏らが関大のキャンパスを訪問。学生街を含めた空気を体感したうえで制作が進められた。

 「なんだかすごく居心地がいい」

 その一言に、関西大学の本質を捉えてもらえたと感じたという。

 「画力が素晴らしく、緻密なタッチのキービジュアルができたので、最初に見てもらうなら新聞広告だと考えました。紙面全体を使うことで、じっくり見てもらえる。年初に出稿することで、読者だけでなく、教職員や卒業生など内向きへのメッセージとしても届くと考えました」

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2026年1月3日 朝日新聞大阪本社版朝刊7.4MB

多様な人たちが混ざり合う風景を描く

 新キービジュアルには、学舎やグラウンドなどで学ぶ学生や教職員に加え、関大ゆかりのキャラクターや歴史上の人物なども登場。歴史や文化を感じさせる要素も盛り込まれている。今にも動き出しそうなほど生き生きと、多様な人物が描かれているのが特徴だ。

 制作にあたり、小林氏が伝えたのは国際的な学びや大学の理念といったキーワードのみで、細かい要素はあえて指定しなかった。

 コピーは「これが、関大。」という言葉を軸に、「異なること、認め合い、混ざり合えば、これまでになかった、何かが生まれる。」というメッセージを添えた。

 言葉を最小限にしたのは、視覚で感じてもらうためであると同時に、見る人それぞれが自分なりに解釈できる余白を残したかったからだという

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 IC4DESIGNのカミガキ氏は、こう語る。

 「関大のキャンパスや、学生街を歩き、多様な人たちが楽しんでいる雰囲気を表現したいと思いました。任せてもらえることで、描きたい気持ちに拍車が掛かり、自分たちも楽しむことができ、それが絵に表れます。仕事は、関わる人たちと共鳴してできるものだと感じています」

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モニターに映るカミガキ氏(左)とデザイナーの松原氏

大阪という土壌が育む混ざり合い

 キービジュアルには大阪の街の要素も盛り込まれている。

 関西圏では関西大学のイメージはある程度共有されている一方で、関西を出ると名前は知られていても、その中身までは十分に伝わっていない側面がある。そこで、大学だけでなく、その背景にある大阪という街の魅力もあわせて伝えたいという思いがあった。

 「関西大学は、多様な価値観が混ざり合う場ですが、それは大学の中だけで完結しているものではありません。大阪という街自体が、さまざまな価値観や文化を受け入れながら発展してきた場所で、その空気の中で大学も育まれてきました」

 「大阪・関西万博でも、多様な文化や価値観が混ざり合うことで生まれるエネルギーが世界中から注目され、多くの人が集まりました。そうした土壌の上に関西大学もあると考えています」

 大学単体ではなく、街と重ねて捉えることで、関西で学ぶという選択肢の価値をより具体的に感じてもらいたいという狙いもある。

 「受験生にとっては、どこで学ぶかという環境も重要です。このビジュアルを見て、大阪という街のワクワク感や、多様な価値観に触れながら学べる環境を想像してもらえたらうれしいですね」

国際化を“感性”として捉える

 関西大学はこれまで、国際教育に関する多様な取り組みを重ねてきた。しかし、それを人数や制度だけで語ることには違和感もあった。

 国際化とは、留学者数や語学力ではなく、異なる価値観の中に身を置いたときに、それを受け止めながら前に進める感性を育てることではないか。

 関西大学では、学生・教職員・地域・企業など、多様な人が日常的に交わる環境がある。その中で自然と培われる受容力や柔軟性こそが、本質的な意味での国際性につながると考えている。

 今回のビジュアルでも、「グローバル」を象徴的に描くのではなく、多様な価値観が混ざり合う状態そのものを表現することを重視。こうした見方の転換も、関西大学の価値を少しずつ「ずらして」伝えていく試みの一つ教えてくれた

学内に向けたメッセージとしての広告

 掲載後、最初に大きな反応があったのは学内だった。国際寮のラウンジに掲示したいという声があがるなど、「関大らしさをよく象徴している」との評価が寄せられたという

 また読者からも「すごくワクワクした」「長く見ていられる」といった声があり、狙い通りじっくり見てもらえるビジュアルとなった。

 今回の広告は外向けの広報であると同時に、学内へのメッセージでもある。

 多様な価値観の中で日常を過ごしている学生が、その意味に気づき、自分の言葉で語れるようになること。

 約3万人の学生がそれぞれの言葉で関西大学を語ることができれば、それ自体が強いブランドにつながると考えている。

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宣言”としての新聞広告とこれから

 新聞広告は信頼性が高く、形として残る媒体である。今回のように新しいビジュアルを打ち出す際、「宣言」としての意味を持たせるには適した場だと判断。

 一方で、今回の取り組みは新聞広告単体で完結するものではない。今後はウェブやイベントなども含め、複数の接点を通じて一貫したメッセージを発信していく予定だ。

 「今回のビジュアルを通じて、大学の魅力を単なる特徴ではなく、多様な価値観が混ざり合う場として感じてもらいたい。そして関西大学は、世界と混ざりながら進化していく大学でありたい。そうした姿を、これからも発信し続けていきます」