インタビュー
2026.07.07

慶應義塾の研究を、社会に届く「未来」の物語へ。Keio FUTUREを支えたASAHI ACCOMPANY の伴走支援

慶應義塾
慶應義塾の研究を、社会に届く「未来」の物語へ。Keio FUTUREを支えたASAHI ACCOMPANY の伴走支援

慶應義塾は2026年4月、公式サイトのリニューアルに合わせ、研究発信プラットフォーム「Keio FUTURE」を公開した。朝日新聞社は法人向け伴走型ソリューション支援事業「ASAHI ACCOMPANY」の一環として、プロジェクト立ち上げ時の課題整理から研究者リサーチ、企画設計、さらにはウェブメディア「朝日新聞GLOBE+」編集部と連携した取材・制作、進行管理までを支援。慶應義塾広報室・室長の河越英代氏、同室・課長の吉岡栄司氏、同室・寺西奏奈氏に、プロジェクトの背景と、ASAHI ACCOMPANYとの協働のプロセスを聞いた。

分散していた研究発信が広報の課題に

――今回のサイトリニューアルにあたり、慶應義塾としてはどのような課題意識をお持ちだったのでしょうか。

河越氏 ウェブサイトのリニューアル自体はここ数年の課題になっていました。
本学の広報の体制は私たちがいる三田キャンパスの広報室以外にも、キャンパスごとに広報担当がありますし、大学の入学広報という観点では入学センターという部門もあります。さらに、KGRI(慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュート)という組織でも研究紹介をしていまして、広報の機能が分散していました。
それぞれがいろいろなところで研究発信をしていたため、見逃される、あるいは発信者目線で「これを読んでもらいたいから出す」ということになりがちでした。

慶應義塾_河越氏_KeioFUTURE 河越英代氏

――単なるサイトリニューアルではなく、慶應義塾全体の情報発信のあり方を見直す取り組みでもあったということでしょうか。

吉岡氏 ウェブサイトのリニューアルというだけでなく、広報のDXといった側面も強いと思っています。目標は大きく二つあり、一つが、徹底的に閲覧者目線のサイトに変えていくこと。もう一つが、部署の縦割りではなく、慶應全体で魅力をアピールできる基盤を作っていくことです。
AIなどによってみなさんが情報に接するスタイルも変わる中で、慶應全体で力を合わせて魅力を伝えていくことが、これからの時代には必要でした。

「未来」を切り口に、研究を社会とつなぐコンテンツへ

――Keio FUTUREでは、どのような研究発信を目指されたのでしょうか。

河越氏 今回は「Keio FUTURE」という形で、慶應が描く未来の姿を、教員である研究者の技術を使って、より良い未来をみなさんにご覧いただきたいと思っていました。それから、学内には文系、理系両方の研究者がいる中で、文系の研究者の研究成果をなかなか発信しづらいところもあります。プレスリリースなどで発信するのは、どうしても論文が有名な雑誌に載ったというようなケースが多い。こうした研究成果の発信がスムーズにできるような分野以外の研究者にも、光が当たるようにしたいと考えていました。 

――研究発信のパートナーとして、朝日新聞社の伴走支援を選択した理由はどのようなものでしたか。

吉岡氏 研究者の紹介は、大学広報のコンテンツとしては王道で、慶應義塾でもいろいろな部門が研究者や研究所の紹介を行っています。
そうした中で、慶應義塾にまだ興味がない方や、慶應義塾の研究に触れたことがない方にも触れていただくものを作る場合、広く社会に向けて発信されている朝日新聞社とパートナーを組んでコンテンツを作るのが、一番近道ではないかと思っていました。

慶應義塾_吉岡氏_KeioFUTURE 吉岡栄司氏

河越氏 朝日新聞は教育に熱心な方が読む新聞というイメージで、その朝日新聞社と一緒に取り組めるのがとても良かったです。教育に熱心な読者が読む朝日新聞だからこそ、こちらが思いつかなかったような研究者同士の組み合わせなど、我々に普段無いような視点を与えていただいたと思っています。

研究者データの整理から始まった、伴走型のコンテンツ設計

――具体的に、初めてASAHI ACCOMPANYからの提案を受けたときは、どのような印象を持たれましたか。

寺西氏 こちらからは慶應の研究紹介をやりたいということと、未来感、フューチャーにふさわしいコンテンツを、という要望を出し、そこからご提案をいただきました。

提案資料は、最初は(「人類の未来」のような)結構大きな話題から始まっていまして。その後、慶應義塾のパーパスにも触れていただいており、まさに慶應義塾が先導者として進んでいく、社会のみなさんと一緒に歩んでいく、というところから考えてくださった企画案だなと思いながら拝見しました。

――研究者の選定やテーマ設定も、相談しながら進めていったのでしょうか。

河越氏 すごくありがたかったのは、朝日新聞社から本学の研究、研究者の全てをいろいろな角度から分析し、データを見てフィードバックしてくださったことです。

本学のほぼ全ての研究者のデータをまとめていただいて、研究者の名前や所属学部だけでなく、紹介動画のリンクや研究者データベースのリンクも貼られている。そういうものが一覧で見られるリストを作っていただきました。
学内のデータベースで探しても「その研究者って前も取り上げたかな?」「いま何の研究をされていたかな?」ということがあるのですが、そういったデータを一覧で見られるようになりました。しかも、プロジェクト開始後のとても早い時点で作っていただけたのは、本当にありがたかったです。

寺西氏 外部からの視点だと、他の媒体でも取り上げられている研究者のご提案が多くなる一方で、我々としては、まだあまり世に出ていない若手の教員に光を当てたいという思いもありました。そういった点で、うまく話し合いをしながら、どちらかというと我々が要望を出して、朝日新聞社のみなさんが応えてくださったという形が近いと思います。

今回の企画始動段階では、伊藤塾長や研究担当常任理事、学部長・研究科委員長などに対し、朝日新聞社のみなさんと一緒にヒアリングを行いました。教員から見たおすすめの教員や、今力を入れていることも聞きながら進められたので、朝日新聞社の視点と、広報の視点、教員や研究部門の視点、いろいろな視点・観点を組み合わせてできたコンテンツになったと思っています。

慶應義塾_寺西氏_KeioFUTURE 寺西奏奈氏

GLOBE+編集部の取材力が引き出した、Keio FUTUREならではの切り口

――世界をつたえるウェブメディア、「朝日新聞GLOBE+編集部が取材に入ったことで、どのような違いを感じられましたか。

吉岡氏 今回、まさに研究といった世界の取り組みを伝えている「GLOBE+」の玉川透編集長も入ってくださり、第一線の方が編集してくださるので、各拠点にも協力してもらいやすかったです。すごく熱のこもったプランが学内の研究者にもきちんと信頼感をもって伝わったというか。

寺西氏 それに加えて、取材の時間と使い方が大変ありがたかったです。タイトな時間の中でもたくさん質問をされていて、それでも居心地が悪いわけではなく、研究者の話も遮らず、良いタイミングで質問してくださるのが、さすがプロだなと。研究者の話も「散歩が好きで」というようなプライベートな部分のほか、以前に取り組んでいた研究や今後取り組もうと思っていること、それに関連する慶應義塾への思いといったように多角的に話していただけた、というのが他のコンテンツと大きく違うと感じています。

吉岡氏 取材も熱量が高くて。ヒアリングの段階で、こちらから主要な研究関係の要職者を提案していたのですが、更にその方との話の中で出てきた研究の取り組みや学内で行っている成果発表イベントにもわざわざ足を運んでくださって。記者魂というか、色々な目を持ってアンテナを広げた上で、取材対象と相対してくださるので、上辺ではたどり着けない領域まで踏み込んでくださっているんですよね。

河越氏 あと、できあがった記事だけでなく、(記事につく)サムネイル画像もとても良くて。

寺西氏 1本の記事にサムネイルを10案も出していただいて、選ぶのが楽しいなと思っていました。

吉岡氏 それからタイトルですよね。まさに記事を読みたくなるようなタイプです。

リサイズ_KeioFUTUREスクリーンショット 「Keio FUTURE」より

急ピッチの制作を支えたプロジェクトマネジメント

――スケジュール面では、かなり限られた期間で進める必要があったとうかがいました。進行管理については、どのように感じられましたか。

寺西氏 Keio FUTUREのプロジェクト開始が2025年秋でサイトのオープンが約半年後という、かなり急ピッチで、きついスケジュールでした。さらに入試などで取材できない期間もありましたが、教員の都合に合わせて時間を調整いただきました。1日に取材を3本詰め込んだこともありましたし、三田キャンパス(東京都港区)で取材してから日吉キャンパス(横浜市港北区)に行ったこともありました。感謝してもしきれないです。

――定例会議や資料面でのサポートはいかがでしたか。

吉岡氏 毎回、定例で打ち合わせをするときに資料をご用意してくださるのですが、そこに現時点までの経過やスケジュールがきちんとまとめられていました。

こちらの立場からすると、今の作業がいつ、どのように終わるのかが見える。プロジェクトマネジメントの面で安心感がすごくありました。新聞社は決まった時間に新聞を出すために作業を緻密に積み上げて制作されていると思うのですが、そういうところがロジ回りにも色濃く出ていて、とても助けられました。

慶應義塾_3人_KeioFUTURE

研究と社会、学内外をつなぐ発信基盤へ

――公開後、学内外からの反響はいかがでしょうか。

河越氏 学内からは、まだこれから意見を聞く段階だと思っていますが、先日、他の大学の広報担当者との集まりがありまして、そこで「すごくいいコンテンツですね」という声をいただきました。「どうやったら朝日新聞社と一緒にこれを作れるのか」とも言っていただいて。
我々広報部門だけだと研究の紹介はなかなか難しい。研究支援部門でないと、日頃の研究がどう進んでいるのかも分からない中で、朝日新聞社のみなさんが研究部門とも話してくださり、いい形で取り上げていただいた。そういったところが大学関係者にも新鮮な感じに映ったのかなと思っています。

――今後、Keio FUTUREをどのような発信基盤に育てていきたいと考えていますか。

河越氏 慶應義塾には、大学でいうと10学部・14大学院研究科があり、文系から理系まで幅広く、学際的な研究分野も含めてかなりいろいろな領域があります。それが慶應義塾の特徴だと思っています。

研究の幅広さや、文系の研究者も理系の研究者もいて、一緒にやっていることもある。そういう自由な研究環境を知っていただいて、「こういう研究をして学んでみたい」と思っていただけたり、企業の方に「こういう研究を一緒に共同研究したい」と思っていただけたりする。そういったヒントになるコンテンツに育てていければと思っています。

――今後、朝日新聞社にはどのようなことを期待されていますか。

吉岡氏 僕らがいつもPRしようとする内容は、どうしても大学目線になりがちだと思うんです。
そうではなく、ジャーナリストの目線で、慶應の研究が社会にどう影響しているのか、どういうものがみなさんにハッとしてもらえるのか、そういったところをどんどん掘り下げていっていただきたいと思っています。

今の体裁が必ずしもこのままである必要はないと思っています。まさに伴走支援という言葉の通り、より良い形を一緒に作っていけたらいいなと思っています。

◆ 慶應義塾「Keio FUTURE」
https://www.keio.ac.jp/ja/keio-future/

AsahiAccompany_事例資料表紙_2607

ASAHI ACCOMPANY 伴走支援事例

今回ご紹介した慶應義塾「Keio FUTURE」への伴走支援の内容をまとめた資料をダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。

ASAHI ACCOMPANY 公式サイト