インタビュー
2026.07.09

「自分にとっての心の豊かさとは何か」を問いかける。JTの対話型キャンペーン「この広い広い世界で。」

日本たばこ産業株式会社パブリックリレーション部 戦略担当部長 古川将寛氏
「自分にとっての心の豊かさとは何か」を問いかける。JTの対話型キャンペーン「この広い広い世界で。」

日本たばこ産業株式会社(以下、JT)は20264月から、「この広い広い世界で。」をコンセプトにした、新たな企業広告キャンペーンをスタートした。すでに俳優・柳楽優弥さんを起用したテレビCMシリーズ「キャプテン・モットの冒険」が放送されている。79日には、朝日新聞に15段広告を出稿した。キャンペーン全体やテレビCM、新聞広告出稿の狙いを、日本たばこ産業株式会社パブリックリレーション部戦略担当部長の古川将寛氏に聞いた。

一人ひとりの「心の豊かさ」を応援する、「この広い広い世界で。」キャンペーン

ーー この度、JTが「この広い広い世界で。」キャンペーンを始めた背景や、この取り組みに込めた思いを聞かせてください。

 私どもでは現在、「心の豊かさを、もっと。」をパーパスとして掲げています。「心の豊かさ」とはよく聞く言葉ですが、よく考えると奥が深い言葉です。簡単には説明しきれない概念だと感じていました。このパーパスをいかに生活者のみなさんに届け、受け入れていただけるかを考えてきたなかで生まれた言葉が「この広い広い世界で。」です。

 「心の豊かさ」と言っても、そのあり方は人それぞれです。私たちが「これこそが正しい心の豊かさです」と正解を押し付けるようなものではありません。一人ひとりに、他の人とは異なる自分だけの豊かさがあっていいはずです。私たちはそんな一人ひとりの「心の豊かさ」を応援したいと考えています。

 この世界には、私たちが知らない、まだ見ぬ「心の豊かさ」がたくさんあるのではないか。そんな思い、スケール感や広がりを伝えるために生まれたのが「この広い広い世界で。」というコピーです。このキャンペーンではテレビCMや新聞、SNSやラジオなど様々なメディアを多角的に使い、生活者のみなさんに「自分にとっての心の豊かさとは何か?」を考えていただくような対話型のキャンペーンを展開していきます。

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ハートウォーミングだけではない「心の豊かさ」を表現したテレビCM

ーー テレビCM「キャプテン・モットの冒険」で柳楽優弥さんを起用したのはなぜですか。

 このCMでは柳楽優弥さん演じる探検家のキャプテン・モットが世界を旅しながら、現実に存在する様々な人々と出会います。その出会いによって、これまで知らなかった「心の豊かさ」を知る、という設定です。柳楽さんは優れた役者でありながら、新しいことや思わぬことに遭遇した時、素直にリアクションしていただける。そんなピュアな人という印象があったからです。

ーー CMの第1弾「船出篇」では、柳楽さん扮する探検家が広大な海に出航する雄大なシーンが描かれます。続く第2弾の「アントマン篇」では柳楽さんがアリ探求家の島田拓さんと地面にはいつくばり、アリを眺めている。そのギャップが印象的でした。

 第1弾では「この広い広い世界で。」という言葉にこめたスケール感や壮大さを表現しました。第2弾では、何の成果がなくても、ひたすら何時間もアリを見続けることに「心の豊かさ」を感じる島田さんに登場いただくことで、「心の豊かさ」には驚くほど幅があることを表現しました。「世界は広い」というスケール感だけでは、視聴者のみなさんから遠い世界の話になってしまうので、地に足がついたリアルな世界とのバランスを大切にしています。

ーー 今回のテレビCMは、従来のJTのCMと比べると、かなり攻めている印象があります。

 そう言っていただけるとうれしいです。これまでのJTの広告は、どちらかといえばハートウォーミングで、ほっとするような世界観のものが多かったと思います。でも「心の豊かさ」のなかには、もっとアクティブなものもあるはずです。そんな従来の固定観念を超えた「心の豊かさ」を表現したかったんです。ですから音楽も、これまでにないアップテンポで躍動感があるものを使っています。社名を出さなければ、誰もJTのCMだとは思わないようなものをあえて目指しました。

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ーー チャレンジングな試みだけに、社内でコンセンサスを得るのに苦労したのではないですか。

 そうですね。このキャンペーンは抽象的な概念、内面的な心の機微を扱うものだけに、社内で企画を通すうえでは、ロジックをとことん重視しました。社会心理学や行動経済学、自己決定理論などのアカデミックな理論も使って企画を説明しました。

 「心の豊かさ」を「動的」「静的」「結果重視」「プロセス重視」といった四象限に分類しました。例えば島田さんは、結果よりもプロセスを大切にし、静かな心の豊かさを体現しています。でも世の中には、結果を重視する人もいれば、アグレッシブな人生観を持っている人もいます。今後もテレビCMには、様々な価値観や「心の豊かさ」を持つ人が登場する予定です。

新聞広告は多様な価値観と出会い、対話を生み出す“公共的な場”

ーー 7月9日に朝日新聞に15段広告を掲載した狙いを教えてください。

 私たちは「心の豊かさ」の答えを提示したいわけではありません。「こんな心の豊かさもあるんですよ」と新しい視点や驚きを提供し、みなさんに「自分にとっての心の豊かさ」とは何かを考えていただきたいんです。そして心の豊かさを探究する輪を、社会に広げていきたいと考えています。

 そのうえで、新聞は非常に相性のよいメディアです。新聞は日常生活の中では出会う機会のない価値観や、遠い世界の出来事に触れ、自分の視野を広げることができるメディアです。人々に新たな視点を提供し、対話を生み出す“公共的な場”ともいえます。ですから今回、「この広い広い世界で。」キャンペーンにおいて、私たちが一番伝えたいキーメッセージを新聞広告という形で社会に発信したのです。

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2026年7月9日付 朝日新聞全国版朝刊 全15段PDF
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ーー 新聞広告に、柳楽さんが洞窟へ足を踏み入れようとするビジュアルを採用したのはなぜですか。

 新聞広告にどのビジュアルを使うかでは私も悩み、社内で時間をかけて議論しました。ビジュアル的な美しさといった意味では、第1弾の大海原での船出シーンを使うのが普通かもしれません。実際、社内でもそのような意見がありました。でも私たちが今回、最も伝えたいのは「航海」ではありません。新しい価値観や心の豊かさと出会うために、一歩踏み出すこと。「探検」こそが、このキャンペーンの本質です。そう考え、ドキドキ感やワクワク感が伝わる洞窟の写真を使うことにしたんです。

ーー 柳楽さんが洞窟の入り口に立つ姿には、未知の世界への好奇心や期待感が象徴されているわけですね。

 はい。ただ不安感が出ないよう、後ろのきれいな海の抜け感を大切にし、洞窟の形状や光の見せ方に細かな調整を重ねました。ワクワク感やドキドキ感は残しながら、希望を感じられるビジュアルになるよう工夫しました。この新聞広告をきっかけに、読者の一人ひとりが「自分にとっての心の豊かさ」を探究していただきたい。新しい世界を探検するように、自分ならではの「心の豊かさ」を見つめる時間そのものを楽しんでいただきたい。そんな思いを、この新聞広告には込めました。

ーー 今後、どのような広告展開やコミュニケーションに力を入れていきたいですか。

 「この広い広い世界で。」キャンペーンがまさにそうなのですが、企業が一方的に答えを提示するのではなく、生活者のみなさんと対話をしながら、ともに考え、つくり上げていく。そんな生活者と共創していく広告を、これからもつくっていきたいですね。そのうえで、公共性があり、対話の場を生み出していける新聞メディアを、今後も積極的に活用していきたい。デジタルメディアやSNSが発達した今でも、新聞でこそメッセージが深く届く層は確実に存在します。そのような方々の「心の豊かさ」も、私たちはもちろん応援していきたい。今後も新聞メディアと連携しながら、多様な価値観に光を当てるコミュニケーションを続けていきたいと思っています。