解説
2026.01.26

ESG経営とは? メリット・デメリットから具体的な始め方まで徹底解説

ESG経営とは? メリット・デメリットから具体的な始め方まで徹底解説

ESG経営とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素を重視する経営手法です。この記事では、ESG経営の基本的な意味から、取り組むことのメリット・デメリット、そして具体的な導入ステップまでを分かりやすく紹介します。企業の持続的な成長と価値向上を目指す担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

 近年、企業の持続的な成長を測る指標として「ESG経営」が世界的に注目されています。単なる利益追求だけでなく、環境や社会、そして企業統治に対する配慮が、投資家や消費者からの評価を大きく左右する時代になりました。しかし、「ESGという言葉は聞くけれど、具体的に何をすれば良いのか分からない」と感じている経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。この記事では、ESG経営の基本的な概念から、そのメリット・デメリット、さらには具体的な導入ステップまで、網羅的に解説します。

ESG経営とは?注目される背景と基本を解説

 ESG経営とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)という3つの要素を重視した経営アプローチのことです。これらは企業の長期的な成長に不可欠な非財務情報として、投資家が企業価値を判断する際の重要な基準となっています。

ESGを構成する3つの要素(環境・社会・ガバナンス)

 ESGは、以下の3つの頭文字から成り立っています。それぞれの要素が具体的にどのような内容を指すのかを理解することが、ESG経営の第一歩です。

要素

英語表記

具体的な取り組み内容の例

環境

Environment

温室効果ガス排出量の削減、再生可能エネルギーの利用、廃棄物削減、水資源の保全、生物多様性の保護

社会

Social

従業員の労働安全衛生、人権への配慮、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、地域社会への貢献、サプライチェーンにおける労働問題への対応

ガバナンス

Governance

取締役会の多様性確保、役員報酬の透明性、コンプライアンス順守、汚職・贈収賄の防止、株主権利の尊重

 これらの要素は相互に関連しあっており、バランスの取れた取り組みが求められます。

SDGsやCSRとの違い

 ESGと共によく耳にする言葉に「SDGs」(Sustainable Development Goals)や「CSR」(Corporate Social Responsibility)があります。これらは密接に関連していますが、その成り立ちや視点が異なります。

  • SDGs(持続可能な開発目標)
    国連が定めた、2030年までに達成すべき世界共通の17の目標です。主体は国や企業、個人と広範に及びます。ESG経営は、このSDGsという壮大な目標を企業が達成するための「手段」と位置づけることができます。
  • CSR(企業の社会的責任):企業が社会の一員として、ステークホルダーに対して責任ある行動をとるという考え方です。企業の利益活動の中から社会貢献活動を行うという側面が強く、企業からの視点に基づいています。一方、ESGは投資家が企業の持続可能性を評価するという「投資家からの視点」で始まった点が大きな違いです。

項目

ESG

SDGs

CSR

視点

投資家・企業

国連・世界全体

企業

目的

企業の長期的成長とリスク管理

持続可能な世界の実現

社会的責任の実践

関係性

SDGs達成のための手段

世界共通の目標

企業の自主的な社会貢献活動

【関連記事】企業におけるSDGsとサステナビリティ・コミュニケーションの重要性と成功事例|朝日新聞 Business Hub

なぜ今、ESG経営が世界的に注目されるのか

 ESG経営が注目されるようになった背景には、いくつかの要因があります。2006年に国連が提唱した「責任投資原則(PRI)」が大きなきっかけとなり、投資家が投資判断を行う際に、従来の財務情報だけでなくESGの観点を考慮する流れが加速しました。

 特に、気候変動や人権問題といった地球規模の課題が深刻化する中で、企業の活動が社会や環境に与える影響は無視できなくなっています。消費者の意識も変化し、環境や社会に配慮した製品やサービスを選ぶ傾向が強まっています。このような社会全体の価値観の変化が、企業に対してESGへの取り組みを強く求める要因となっているのです。

ESG経営に取り組む4つのメリット

 ESG経営は、単なる社会貢献活動ではなく、企業の持続的成長に直結する経営戦略です。ここでは、ESG経営に取り組むことで得られる具体的なメリットを4つ紹介します。

資金調達の有利化と企業価値の向上

 最大のメリットは、投資家からの評価が向上し、資金調達がしやすくなる点です。世界の年金基金や機関投資家は、ESGの観点を投資先の選定基準に組み込む動きを活発化させています。ESG評価の高い企業は、長期的に安定した成長が見込めると判断され、投資が集まりやすくなります。結果として、企業価値そのものの向上にも繋がります。

ブランドイメージの強化

 ESG経営に積極的に取り組む姿勢は、顧客や取引先、そして社会全体からの信頼獲得に繋がります。「環境や社会に配慮している企業」というポジティブなブランドイメージは、製品やサービスの競争力を高め、売り上げ向上に貢献します。特に、サステナビリティへの関心が高い若年層に対して、強力なアピールポイントとなります。

経営リスクの軽減

 ESGの3つの要素は、それぞれが経営上のリスクと密接に関連しています。

ESG要素

関連する経営リスクの例

環境(E)

気候変動による物理的リスク(自然災害)、移行リスク(炭素税導入、規制強化)

社会(S)

労働問題による人材流出、サプライチェーンでの人権侵害による不買運動

ガバナンス(G)

不祥事による信用失墜、法令違反による罰金・訴訟

 これらのリスクを事前に特定し、対策を講じるリスクマネジメントのプロセスは、ESG経営の根幹をなします。強固なガバナンス体制を築き、環境や社会の変化に対応することで、経営の安定性を高めることができます。

人材獲得力の強化と従業員の定着

 ESG経営は、従業員にとっても魅力的な職場環境を創出します。公正な評価制度や多様な人材が活躍できる職場環境(ダイバーシティ&インクルージョン)、安全な労働環境の整備などは、従業員のエンゲージメントを高め、離職率の低下に繋がります。また、企業の社会的姿勢に共感する優秀な人材が集まりやすくなり、採用競争においても有利になります。

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ESG経営のデメリットと乗り越えるべき課題

 多くのメリットがある一方で、ESG経営の推進にはいくつかの課題やデメリットも存在します。これらを事前に理解し、対策を講じることが成功の鍵となります。

コスト増加

設備投資、コンサルティング費用

長期的なリターンを考慮した投資計画、補助金・助成金の活用

成果の可視化

ブランドイメージ、従業員エンゲージメント

KPIの設定、非財務情報の定期的な測定・開示、ステークホルダー調査

全社的な推進

部門間の連携不足、従業員の意識の差

経営トップのメッセージ発信、研修の実施、推進部署の設置

短期的なコストの増加

 ESGへの取り組みには、初期投資が必要となる場合があります。例えば、省エネルギー設備への更新、再生可能エネルギーの導入、労働環境改善のための制度設計などには、相応のコストがかかります。これらの投資は長期的に見ればリターンが期待できますが、短期的な収益を圧迫する可能性があることは否めません。

成果の可視化の難しさ

 ESG活動の成果は、売り上げや利益のように明確な数値で測ることが難しいものが多くあります。ブランドイメージの向上やリスクの低減といった効果を定量的に示し、投資対効果を説明するには工夫が必要です。また、取り組みの成果が表れるまでには時間がかかるため、中長期的な視点を持つことが不可欠です。

全社的な取り組みの推進における困難

 ESG経営は、特定の部署だけで完結するものではなく、経営層から現場の従業員まで、全社一丸となって取り組む必要があります。しかし、部門間の連携がうまくいかなかったり、従業員一人ひとりの理解や意識が伴わなかったりすると、取り組みが形骸化してしまう恐れがあります。

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ESG経営の始め方を5つのステップで紹介

 ESG経営を効果的に導入し、推進していくためには、計画的なアプローチが重要です。ここでは、具体的な5つのステップに分けて、その進め方を解説します。

ステップ

主な活動内容

1.現状分析

データ収集、自社の強み・弱みの把握

2.マテリアリティ特定

課題の優先順位付け

3.目標・KPI設定

具体的な数値目標と評価指標の策定

4.実行と体制構築

アクションプランの実行、推進体制の整備

5.情報開示と対話

レポート作成、ステークホルダーとのコミュニケーション

ステップ1:現状分析と課題の洗い出し

 まず、自社の事業活動がESGの各側面(環境、社会、ガバナンス)にどのような影響を与えているかを分析します。エネルギー消費量や廃棄物排出量、従業員の労働時間や多様性に関するデータ、コンプライアンス体制などを収集し、現状を正確に把握します。このプロセスを通じて、自社の強みと弱み、そして取り組むべき課題を洗い出します。

ステップ2:重要課題(マテリアリティ)の特定

 洗い出した課題の中から、自社の経営にとって特に重要度が高い課題(マテリアリティ)を特定します。マテリアリティの特定にあたっては、「自社の事業への影響度」と「ステークホルダー(顧客、従業員、投資家、地域社会など)への影響度」という2つの軸で評価することが一般的です。これにより、取り組むべき課題の優先順位が明確になります。

ステップ3:目標設定とKPIの策定

 特定したマテリアリティに対して、具体的な目標を設定します。この際、「SMART」原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限)を意識すると良いでしょう。さらに、目標の達成度を測るための重要業績評価指標(KPI)を設定し、進捗を定期的にモニタリングできる体制を整えます。

ステップ4:具体的な施策の実行と体制構築

 設定した目標とKPIを達成するための具体的なアクションプランを策定し、実行に移します。ESG経営を全社的に推進するため、専門の部署を設置したり、各部門に担当者を置いたりするなど、実効性のある推進体制を構築することが重要です。

ステップ5:情報開示とステークホルダーとの対話

 ESGへの取り組み状況や成果を、統合報告書やサステナビリティレポート、自社ウェブサイトなどを通じて積極的に情報開示します。透明性の高い情報開示は、投資家や顧客からの信頼を高める上で不可欠です。また、アンケートや対話の機会を設け、ステークホルダーからのフィードバックを次の活動に活かすPDCAサイクルを回していくことが求められます。

【関連記事】朝日新聞社の伴走型サステナビリティ支援 専門家ネットワークとデータ分析で企業の未来を創る|朝日新聞 Business Hub

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ESG経営の国内企業事例

 多くの日本企業がESG経営に積極的に取り組んでいます。ここでは、特に参考となる事例をいくつか紹介します。

【環境】花王株式会社の取り組み

 花王株式会社は、2019年にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表しました。「脱炭素」や「プラスチック包装容器の革新」などを重点テーマに掲げ、具体的な中長期目標を設定して活動を推進しています。特に気候変動対策では、「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」提言に基づいたシナリオ分析を行い、事業戦略に組み込むなど、先進的な取り組みが高く評価されています。

参考:花王 | 花王、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表

【社会】エーザイ株式会社の取り組み

 製薬会社のエーザイ株式会社は、「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」という企業理念のもと、ESG経営を実践しています。特筆すべきは、ESGの取り組みが企業価値にどう貢献しているかを定量的に分析し、統合報告書で開示している点です。「女性管理職比率とPBR(株価純資産倍率)」や「育児時短勤務制度利用者数とPBR」の間に正の相関関係があることを示すなど、非財務情報の価値を可視化する好例として知られています。

参考:ダイバーシティと企業価値の関係性: 「柳モデル」と女性登用の実効性

ESG広報戦略と朝日新聞の活用ポイント

 ESG経営を推進する企業にとって、取り組みを社会に伝える広報戦略は不可欠です。ここで、信頼性の高いメディアである朝日新聞を活用することには、次のようなメリットがあります。

ESGと朝日新聞の親和性

 朝日新聞の購読者や朝日新聞デジタル版のユーザーは、商品の品質にこだわり、社会課題や環境問題への関心が高い人が多いです。例えば値段の安さよりも、少々値が張っても高品質の商品を買うとの回答が見られました。

 また、SDGsに関心を寄せている人が多いため、企業がSDGsに対する取り組みをアピールすることで共感が得られる可能性があります。
【詳細はこちらの記事をご覧ください】新聞広告と他メディアの組み合わせで最大化する広告効果 生活者の情報感度に応えるメディアプランニング|朝日新聞 Business Hub 

朝日新聞が提供できる具体的なサービス

・広告、タイアップ記事:ESG活動やSDGs関連の取り組みを特集記事として発信
【関連記事】企業・団体のSDGsへの取り組みをともに考え、発信 朝日新聞SDGs ACTION!|朝日新聞 Business Hub

・ターゲティング広告:ESGSDGs関心層などに向けた精緻な広告配信。

・ブランドストーリー発信:企業の社会課題解決ストーリーを記事化し、SNSやデジタル広告と連動。

・伴走型コンサルティング(ASAHI ACCOMPANY):専門家ネットワークとデータ分析を活用した広報支援。

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 「ESG×信頼性のあるメディア」という組み合わせは、企業の取り組みを単なる広告ではなく、社会的意義のある情報として伝えられる強みがあります。

ESG経営を成功に導くためのポイント

 ESG経営を単なるスローガンで終わらせず、企業文化として根付かせ、成果に繋げるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

成功のポイント

具体的なアクション

トップのコミットメント

経営戦略へのESGの統合、トップメッセージの発信

従業員の理解・浸透

社内研修の実施、ESG関連の目標設定

サプライチェーン連携

取引先選定基準へのESG項目の追加、協働での課題解決

経営トップの強力なコミットメント

 ESG経営の推進には、経営トップの強い意志とリーダーシップが不可欠です。社長や役員がESGの重要性を深く理解し、その方針を社内外に明確に発信し続けることで、全社的な取り組みの原動力となります。経営戦略の中にESGを明確に位置づけ、リソースを配分することが重要です。

従業員の理解と全社的な浸透

 ESG経営は、従業員一人ひとりの協力なしには成り立ちません。なぜESGに取り組むのか、自社の事業とどう関連しているのかを丁寧に説明し、共感を得るための社内研修やワークショップを実施することが効果的です。また、各部門の目標にESG関連のKPIを組み込むことで、日々の業務の中で意識を高めることができます。

サプライチェーン全体を巻き込んだ取り組み

 企業の事業活動は、自社だけで完結するものではありません。原材料の調達から製品の販売、廃棄に至るまで、サプライチェーン全体で人権や環境に配慮することが求められます。取引先に対してもESGへの協力を求め、共に課題解決に取り組む姿勢が、企業の社会的責任を果たす上で重要となります。

まとめ

 ESG経営は、気候変動や人権問題といった社会課題に対応し、企業の持続的な成長を実現するための世界標準の経営モデルです。資金調達の有利化やブランドイメージの向上といったメリットがある一方で、短期的なコスト増などの課題も存在します。

 成功のためには、経営トップの強いリーダーシップのもと、自社の重要課題を特定し、全社一丸となって計画的に取り組むことが不可欠です。この記事で紹介したステップやポイントを参考に、自社の企業価値向上に向けた第一歩を踏み出してください。