タイヤ販売と技術系サービスが事業の二本柱

 黄色のカウボーイ・ハットがトレードマークのイエローハット。タイヤを始めとするカー用品の販売に加え、近年は車検・板金・塗装といった技術系サービスの売り上げが好調だ。代表取締役社長の堀江康生氏に聞いた。

──事業ポリシーや企業文化について聞かせてください。

イエローハット 代表取締役社長堀江康生氏 堀江康生氏

 店舗は地域密着型でローコストの運営を行っています。また、価格競争的な安売りは行わず、ソフトとハードの両面でサービスの質の向上に努め、独自のスタイルを築いています。

──自動運転化、新車販売の不振、カーシェア、カー用品のネット販売やオークションなど、クルマを取り巻く環境が様々に変わり続けています。

 一部のカー用品、例えば、スポーツパーツやカーアクセサリーなどは、売れ行きが鈍化しています。その一方で、タイヤ販売は好調が続いています。さらに、車検や軽板金といった技術系の店舗サービスの売り上げが伸長しており、現在はタイヤ販売と技術系サービスが事業の二本柱となっています。

──技術系サービスの特徴は。

 ちょっとしたクルマのキズやヘコみの補修をディーラーに頼むと、部品ごと交換されたり、修理工場で大がかりな板金・塗装を施されるなど、費用がかかる場合があります。最近は1台のクルマを大切に長く乗る方が多く、そのぶん「新品の状態に戻らなくても、キズが目立たなければいい」というニーズが増えている。そこで、ちょっとしたキズやヘコみなら1万円台で対応するなど、リーズナブルなサービスを提供しています。他にも、クルマのボディーコーティングや、ヘッドライトのクリーニングなど、多様なサービスを提供しています。こうした技術系サービスは、前年比150%の成長を実現しています。

──タイヤ販売の特徴は。

 扱うブランドの豊富さです。高品質・高価格の有名ブランド商品から、「それほど距離を走らないので、ハイスペックなタイヤでなくてもいい」というお客様のニーズに対応する低価格の商品まで、様々な品をそろえています。また、近年は中古タイヤ販売が業績を伸ばしており、中古タイヤの店舗を拡充しています。

──売り場の新たな動きは。

 ここ1、2年、前年比150%の勢いで、ドライブレコーダーの売り上げが急伸しています。ドライブレコーダーは製品によって機能や性能の差が著しいのですが、当社は高品質な商品をリーズナブルな価格で提供しています。

──現在、注力している取り組みについて聞かせてください。

 新規出店、イエローハットの店舗以外への卸売り、2輪事業などです。新規出店は年間30店舗のペースで行っており、都内や関西の都市圏など、主要地域をしっかり押さえていきたいと考えています。

 また、店舗においては、女性が入りやすい売り場づくりを進めています。クルマの出し入れに緊張しないように駐車スペースをゆったり取ったり、くつろげる休憩コーナーを作ったり、店頭のポップは専門的な知識がなくてもわかりやすい内容にしたりと、様々な工夫をしています。

──国内377の加盟店との関係性構築や、意思統一の上で心がけていることは。

 当社の店舗運営は、45%が子会社、55%がフランチャイジー(加盟店)です。子会社に求める役割は、質の高い店舗運営を通じてフランチャイジーの手本になること。フランチャイジーには、加盟店企業の視点に立った経営指導を手厚く行い、広告費をサポートするなどして、黒字経営を応援しています。

──これまでのキャリアの中で、リーダーとして組織を率いる上で、糧になっている職務経験は。

 社長就任時は、業績低迷のさなかで、直前にはリーマン・ショックがありました。ただ、私はそれまでに会社のほぼすべての部門を経験していたので、課題や問題点を把握していました。また、店頭公開、東証2部、東証1部の上場に際し、準備チームで日夜働き、厳しい審査を乗り越えた経験もあります。そうした経験がV字回復の大きな糧となりました。また、創業者である鍵山秀三郎から直接社長職を託されたこと、加盟店企業のオーナーや社員から信頼してもらっていると感じられたことも原動力となりました。

──今後の課題や展望は。

 技術系サービスの売り上げ構成比は、現在20%。これを25%程度まで引き上げたい。あるいはもっと比率が高まるかも。いずれにしても、変わり続ける市場環境に臨機応変に対応していくことが何より大切だと思っています。

──リーダー信条は。

 リーダーは決断をしなければなりません。そうした時に、社員や周囲の意見に耳を傾けて参考にはするけれども、あまり尊重しすぎてもいけない。すべての人を満足させることはできないと覚悟し、人にどう思われるかということは気にしないで、物事を決断しています。モットーは、誠実に頑張っている社員を評価し、楽しく働ける会社にすること。そのために力を尽くしていきたいですね。

──愛読書は。

 当社の創業者・鍵山秀三郎の著書『あとからくる君たちへ伝えたいこと』は、鍵山が全国各地の学校を訪れ、秩序や忍耐、感謝や奉仕の大切さなどについて講演した内容をまとめたものです。難しくない文体なので、新入社員を始め、若い人に薦めています。

堀江康生(ほりえ・やすお)

イエローハット 代表取締役社長

1952年京都府生まれ。京都工芸繊維大学卒。繊維会社を経て76年ローヤル(現・イエローハット)入社。常務取締役などを経て2008年10月から現職。

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(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.108(2018年4月27日付朝刊 東京本社版)1.3MB


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