中身はそのまま、パッケージとプロモーションを変更。新聞広告による啓発活動も寄与し、売り上げ3倍に

 商品のコモディティ化が進んで差別化が難しくなり、広告やマス媒体がかつてほど機能しなくなったと言われる時代でも、マーケティングの工夫次第で、まだまだ売り上げは大きく伸ばすことができる―まさにそうした成功事例といえるのが、森永乳業の「トリプルヨーグルト」だ。この商品は2019年4月に「トリプルアタックヨーグルト」をリブランディングしたもの。中身はそのまま、パッケージとプロモーションを変え、新聞広告で啓発活動や商品理解を深めたことも寄与し、売り上げを3倍以上伸ばすことに成功した。その取り組みを、同社営業本部マーケティング統括部の益田多美氏に聞いた。

生活習慣でお悩みの方に商品の価値をきちんと理解してもらうためにリブランディング

益田多美氏 営業本部 マーケティング統括部
益田多美氏

 「トリプルヨーグルト」はもともと2018年の4月に、「トリプルアタックヨーグルト」の名前で発売された。店頭で目立つ金色のパッケージと、「塩糖脂」という言葉を連呼する印象的なテレビCMで認知を広げ、30代、40代の若い層の売り上げはそれなりに良かった。しかしインパクトを重視するCMやパッケージに対し、「栄養ドリンクのよう」「実際にどのような商品なのか、いまひとつ分からない」との声も、高齢者を中心にあったという。

 「そこで機能性表示の届け出が受理され、『血圧』『血糖値』『中性脂肪』という言葉を使って訴求できるようになったタイミングに合わせ、生活習慣でお悩みの方にこの商品の最大の価値である『血圧』『血糖値』『中性脂肪』への効果をしっかり伝え、その価値をしっかり理解してもらい、自分ごと化してもらえるようリブランディングを行いました」

 パッケージは、ヨーグルトらしい白をベースにした清潔感あるものに変更。商品名から「アタック」の文字をとり、「塩」「糖」「脂」のロゴから、「血圧」「血糖値」「中性脂肪」をボディにつけることで、誰にでも伝わりやすいパッケージになった。さらに2020年3月から、浅田真央さんを起用し、お客さまに寄り添い、健康を気遣うメッセージが伝わるプロモーションをテレビCMと新聞で展開した。

2020年10月11日森永乳業新聞広告 2020年10月11日付 朝刊1.8MB

管理栄養士が地域の食習慣とともに健康管理を訴える新聞広告を掲載

 「日本国民みんなの娘、ともいえる好感度抜群の浅田さんを起用したプロモーションの効果は高く、ターゲットとする生活習慣でお悩みの方は大きく動きました。当社としてはこの機会に、できればさらに若い層にも、日頃から健康のための生活習慣に気を配ってほしいとの思いがありました。そこでこの秋、全国の管理栄養士さんに登場していただき、地域の食文化や食習慣とからめて血圧や血糖値、中性脂肪に関するケアを啓発する新聞広告を掲載することにしました」

 保存食文化が根付く北陸では、塩分の取りすぎに注意。朝食を喫茶店で食べる文化があり、野菜摂取量が少ない東海エリアでは偏った食生活を防ぐ健康管理を。うどんなどの麺類がおいしい四国では、食事に野菜や副菜をプラスして。などとその地域ならではの食文化や生活習慣を盛り込んだ記事は、読み物としても面白い。

 「確かにうちの地域ではこういうことあるよね、といった風に暮らしに役立つ記事として楽しみながら読んでいただき、日々の健康管理の大切さを自分ごと化していただく。そのうえで、商品の価値を理解していただこうと考えました。毎日、さまざまな分野の専門家がオピニオンを寄せている新聞というメディアで、8人もの管理栄養士に登場してもらい、コメントを寄せていただいたことが大きな説得力につながったのだと思います」

2020年12月5日朝刊 北海道・東京・名古屋版383KB
2020年12月5日朝刊 大阪・西部版367KB

幅広い世代を対象に、生活習慣やケアの大切さを訴える啓発活動を今後も展開

 この広告は、新聞広告効果調査の「J-MONITOR」では、これまで出稿した同商品の広告の中で一番「信頼度が高い」との結果が出た。お客さま相談窓⼝には「どこで売っていますか︖」との問い合わせも数多く寄せられた。

「この企画は商品の認知を広げるだけでなく、⽇々の⽣活習慣や健康ケアの重要性の啓発をすることも⼤きな⽬的でした。全国の管理栄養士の方が、ご自身が住む地域ならではの生活習慣などを紹介し、それを踏まえて健康に留意するポイントなどを解説する記事体にしたことで、商品に対する理解や親しみがより深まったと思っています。それが問い合わせなどの具体的なアクションにもつながったのだと思います」

 高齢化が進み、健康に対する意識も高まる中、森永乳業では幅広い世代を対象に、身近な食を通して健康に貢献することを最大のミッションとしている。そのため今後も、日々の生活習慣や健康維持のためのケアの大切さを訴える啓発活動に力を入れていくという。

 「そうした活動を進める上で、信頼性があり説得力のあるメディアである新聞を、今後も積極的に活用していきたいですね。例えば『生活習慣サポート110番』で実際に相談にのる管理栄養士さんに紙面に登場いただき、相談を呼びかけるようなものや、40代、50代のビジネスマンに、健康、経営などビジネス寄りの切り口で興味をもって読んでいただけるものなど、そんな新聞メディアならではの企画でお客様の健康維持に役立つコミュニケーションを展開していきたいと思います」