アース製薬が挑む 歯科医院起点のオーラルケア啓発と多角的なプロモーション
アース製薬は、2017年から歯科事業に本格参入している。同社の看板商品である洗口液「モンダミン」の使用率向上を目指し、2020年8月にプロデンタルリレーション事業部として歯科医院専売の「ハビットプロ」を本格的に発売 。さらに、歯科医師などから直接オーラルケアの情報を伝える「アースオーラルケアセミナー」を全国で開催し、朝日新聞は集客やイベント運営、プロモーションなどをサポートしている。こうした取り組みと、新聞広告やデジタルを掛け合わせた多角的なプロモーションの手応えについて、取締役副社長執行役員の降矢良幸氏と執行役員プロデンタルリレーション事業部事業部長の和田守弘氏に伺った。
アース製薬が歯科事業に挑む理由
ーー アース製薬が、なぜ「歯科事業」に取り組まれているのでしょうか。
降矢氏 アース製薬といえば、ゴキブリホイホイなどの虫ケア用品を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、実は1987年から洗口液のモンダミンを販売しています。洗口液は海外では広く使われていますが、刺激の強いものが主流だったため、日本人の口に合う味を追求して開発しました。
和田氏 モンダミンはテレビCMの効果もあり知名度は高いのですが、使用率の低さが長年の課題でした。海外では6〜7割の方が洗口液を使用しているのに対し、日本では約3割。しかも、毎日正しく使っている方に限ると、1割にも満たないのが現状です。
降矢氏 そこで、洗口液を日常的に正しく使ってくださる方をさらに増やす施策として考えたのが、歯科医院の先生や歯科衛生士から直接患者さんに勧めていただくアプローチです。プロの皆さまに信頼して使っていただける商品を開発するために、歯科専門の部署を立ち上げたのが現在の歯科事業の始まりです。
ーー 歯科医院専売品「ハビットプロ」の特徴を教えてください。
和田氏 歯科医師が自信を持って患者さんに推奨できるように、「ハビットプロ」は、エビデンス(科学的根拠)に基づいて開発しました。最大の特徴は、市販品よりも高い殺菌力がありながら低刺激であることです。ノンアルコール処方なので、口腔内に傷があるデリケートな状態でもしみにくく、継続して使いやすいように味の良さにもこだわっています。
専門知識を楽しく伝えるアースオーラルケアセミナー
ーー 一般の方々向けに「アースオーラルケアセミナー」を開催されています。
降矢氏 近年、歯周病菌が全身のさまざまな疾患に関わっていることが分かってきましたが、まだご存じない方も多いのが実情です。痛みがなくても定期的に歯科医院へ通っていただくためにも、まずは「お口の健康が全身の健康の第一歩である」ということを広く一般の方々にお伝えする必要があると考えています。
和田氏 2022年に2会場でスタートし、現在は全国7カ所で開催しています。工夫しているのは、専門的な話を楽しく分かりやすく伝えることです。具体的には、各地域の大学教授や開業医の先生、歯科衛生士など「お口のプロ」からオーラルケアにまつわるお話をしていただきます。学びになる内容なので、どの会場でも途中で席を立つ方が少なく、最後まで熱心に耳を傾ける姿がとても印象的です。
降矢氏 普段はオーラルケアにあまり関心がない方にも足を運んでいただくため、著名なタレントをゲストとしてお招きしています。たとえタレントに興味を持って来場された方でも、先生方の話を聞いていただけたら、オーラルケアを意識するきっかけになるはずです。実際、20代や30代の若い世代の方々の参加も増えています。
朝日新聞社との協業と多角的なメディア展開
ーー 全国で開催されている「アースオーラルケアセミナー」は、集客から当日の運営、さらにはゲストのキャスティングまで朝日新聞と一緒に取り組まれています。
降矢氏 朝日新聞社と連携する一番の理由は、購読者層が私たちのメインターゲットと合致しているからです。お口のトラブルへの関心が高まる50代以上の方々にアプローチしたい私たちにとって、同紙の読者層は非常に親和性が高いと考えています。
「お口と全身の健康」という少しアカデミックで専門的なテーマであっても、朝日新聞の読者は、「これは自分にとって有益な情報だ」としっかりと受け止めて、休日に「学びに行こう」と自ら足を運んでいただける。健康への意識が高く、熱心な読者の方々に向けて確実にお知らせできる、非常に心強い媒体です。
ーー 反響や手応えはいかがでしょうか。
和田氏 募集には、朝日新聞社のネットワーク(紙面やデジタル)を活用する一方で、地道なアナログ施策も大切にしています。具体的には、歯科医院にチラシを置いていただき、先生から患者さんへ手渡しで案内していただく形です。こうした取り組みの結果、以前、東京会場では定員の10倍を超える応募をいただくなど、非常に大きな反響がありました。
あと、朝日新聞社の集客力や媒体力だけでなく、柔軟なサポート体制にもすごく助けられています。単に集客をお任せするだけでなく、イベントの企画・運営からタレントさんのキャスティング提案まで、こちらの「こうしたい」という細かな要望にも迅速かつ柔軟に応えて一緒に作り上げてくれる。そこもパートナーとして信頼している大きな理由です。
ーー セミナー開催後の動画制作やデジタル配信なども、朝日新聞と連携して展開されているそうですね。
和田氏 実際の会場にお呼びできる人数には限りがありますので、イベントの中身をまとめたダイジェスト動画などを朝日新聞社に制作していただき、YouTubeやSNSでも配信しています。これが非常に大きな反響を呼んでおりまして、何百万回も再生されることもありました。
動画をきっかけに弊社のホームページを見てくださる方も増え、最近では、一般の方々から「どこに行けば買えるのか」というお問い合わせや、歯科医院の先生方からも「どうすれば取り扱いできるのか」というお問い合わせを直接いただけるようになりました。リアルなイベントの熱量をそのままデジタルに乗せて広げていただくことで、実際のビジネスの広がりに直結していると実感しています。
ーー 2025年12月には、新聞紙面でも30段見開きの大型広告を展開されました。
和田氏 今はSNSなどでも手軽に情報を発信できますが、情報の真偽が疑われやすいものも散見されるように感じています。だからこそ、朝日新聞のような老舗媒体で発信することは、安心感につながり、情報の信頼性が段違いに高いと考えています。
新聞広告は一般の方々だけでなく、多くの歯科医師の先生方もご覧になっています。紙面に掲載されている登壇者の先生を見た他の先生から「どうやったらあのイベントに出られるのか」と問い合わせもあります。信頼のおける媒体に掲載していただくことが、業界内での周知やブランド構築においても効果を発揮していると実感しています。
降矢氏 私たちがメディアを通じて本当にお伝えしたいのは、ただ商品を宣伝して売るということではなく、「商品と歯科検診をセットにして習慣化していただきたい」ということです。歯科医院へ通って、プロである歯科医師や歯科衛生士の方々からお口の状態を診てもらい、正しい使い方を教わりながらケアを続けていただく。そうした啓発活動を社会に広く、正しく伝えていく上でも、新聞という媒体は非常に意義があると感じています。
災害の備蓄用にも、徹底したお客様目線で描く未来
ーー 最後に、今後の歯科事業の展望をお聞かせください。
和田氏 現在、私たちの商品は全国で約15,000件の歯科医院様にお取り扱いいただいています。ただ、全国には約65,000件の歯科医院があると言われていますので、事業としての伸びしろは、まだまだ大きいと確信しています。
社会課題に合わせた新しい提案も進めています。たとえば、災害などで断水した際、歯磨きができずに口腔内の菌が繁殖し、それが原因で肺炎などにかかられる方もいらっしゃいます。水が使えないときのために、洗口液を備蓄用にすることを歯科医師会と連携して提案するほか、日中の外出先でも使える「持ち運び用の小型サイズ」を開発するなど、ラインアップの拡充なども検討しています。
降矢氏 これまでは「モンダミン」から派生した商品として認知を広げてきましたが、今後は「ハビットプロ」をプロフェッショナル向けの“歯科専売ブランド”として確立させていきたいと考えています。社内で一番大切にしている言葉は「お客様目線」です。これからも生活者の方々に寄り添いながら、お口の健康を通じて社会の健康増進に貢献していきます。