インタビュー
2026.11.05

パーパスを「掲げる」から「動かす」へ ユニ・チャームが実践する「共振の経営」

ユニ・チャーム株式会社ESG本部 ESG推進部長 辰巳研一氏

企業が社会に存在する意義を示す「パーパス」。その重要性が広く認識される一方、理念を社員一人ひとりの行動や事業成果にどう結びつけるかは、多くの企業にとって課題となっている。
2026年9月に開催したウェビナー「事業に効くパーパス経営 130社調査と先進事例から紐解く実装プロセス」にパーパス経営の先進企業としてユニ・チャーム株式会社 ESG本部 ESG推進部長の辰巳研一氏が登壇。
同社のパーパスである「SDGsの実現」や「共生社会の実現」という志を、経営と現場の双方に浸透させた独自のマネジメントモデル『共振の経営』について伺った。

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グローバル展開を支えるのは共通の価値観

ユニ・チャームは、人々とペットのさまざまなライフステージに寄り添う事業を展開している。2025年度の連結売上高は9,453億円、コア営業利益は1,089億円。海外売上高比率は約7割に達し、約1万6,500人の社員が80を超える国・地域で事業に携わっているという。
多国籍で多様な背景を持つ社員が同じ方を向き、継続して成果を上げるために欠かせないのが、組織全体に共有された価値観とマネジメントの仕組みだ。生活者が抱える困りごとや負担を解消し、QOL(生活の質)を高める商品を届けること自体が、同社にとってのパーパスの実践となっている。

理念を「静的な体系」から「動的な仕組み」へ刷新

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「当社は2024年、企業理念の体系図を従来のピラミッド型から同心円型へ刷新しました。パーパスを頂点とした静的な階層構造から、社是が中心にあり、ビジョン、ミッション、パーパスと円状の広がりが一心同体となって連動する姿となったのです。
理念を一方的に現場へ伝えるだけでなく、経営陣と社員が双方向に影響を与え合い、実践を繰り返す仕組み『動的なマネジメントモデル』に進化させる必要があり、この形になりました」(辰巳氏)

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明確な目標として掲げている「2030年までに不織布・吸収体事業で世界一を目指す」についても、単なる市場シェアなどの相対的な価値だけではなく、不快、不便、不衛生などの「不」を解消し、生きる喜びや楽しさの実感、「夢」の実現に貢献するという社会的な価値を含めた「絶対価値」との両立が示されている。また「SDGsの実現」という同社のパーパスを数値目標や事業戦略と結びつけ、「共生社会の実現」というミッションに貢献する姿勢が伺える。

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経営と現場をつなぐ『共振の経営』とは

こうした考えを実行に移す組織のOSが、『共振の経営』であると辰巳氏は語る。
「一般的なピラミッド型組織では、経営陣の意図が現場へ十分に届かなかったり、現場の課題や知恵が経営側へ伝わりにくかったりするギャップが生じがちです。これに対して『共振の経営』では、経営陣が現場の情報や知恵に頻繁に触れ、社員は経営陣との対話を通じて、経営者の視点や時間軸を学ぶ。経営と現場が振り子のように行き来し、互いに共鳴することで、社員がパーパスを自分ごととして捉え、自律的に課題を解決できる共振人材になっていく仕組みです」(辰巳氏)

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グローバルでも「思考×行動」の型を共有、一致させることはできる

パーパスを社員の行動につなげるため、ユニ・チャームでは価値観や行動指針をまとめた「The Unicharm Way」を整備している。スマートフォンなどで閲覧できるアプリとして9カ国語で展開され、世界各地の社員が共通の行動規範を参照できる。
さらに、現場では少人数制の「スクラムミーティング」を実施。全世界で約1,300のスクラムが稼働している。金曜日にリーダーが計画の枠組みを提示し、各メンバーが翌週の行動を30分単位で組み立て、週初めの会議で共有・議論する。実行後も進捗を把握しながら、状況に応じて軌道修正を繰り返す。現状を観察(Observation)し、変化に気づき(Orientation)、意思決定して(Decision)行動する(Action)「OODA-Loop」(ウーダ・ループ)メソッドを導入。過去の成功体験にとらわれず、日々仕事の進め方を柔軟に見直すことで、環境変化に対応できる自律的な人材を育成している。

パーパスを「自分ごと化」させるのは小さな対話の積み重ね

企業文化の浸透には、制度だけでなく、トップと社員の継続的なコミュニケーションも欠かせない。同社では、社長が社員の誕生日にメールを送る取り組みを続け、その累計は10万通を超えたという。また、週次の全社会議でトップがメッセージを発信する取り組みも、2003年から1,000回を超えて継続している(2026年時点)。

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「パーパス経営とは、単にきれいな理念を掲げることだけではありません。経営目標や事業戦略、日々の会議、社員一人ひとりの行動にまで落とし込み、対話と実践を繰り返すことで初めて、大きな事業成果を生み出します」(辰巳氏)
同社の実践は、パーパスを組織の力へ変えるためには、経営陣と社員が双方向に影響を与え合い実践を繰り返す動的な仕組みと、日常業務での小さいが具体的な対話や行動の積み重ねが必要であることを示している。