もしかしたら当たるかも! 海外旅行意欲をかき立てる大規模キャンペーン
ニュージーランド航空は、ニュージーランドと日本を含むアジア、オセアニア、北米間を運航している国際航空会社だ。日本からニュージーランドへは、オークランドへの直行便を毎日1便運航している。オークランド経由でニュージーランド国内20都市以上への乗り継ぎも可能。飛行機に乗った瞬間からニュージーランドを感じられる、フレンドリーなおもてなしを提供しているのも魅力の一つだ。
新型コロナが流行する前まで、利用客は順調に伸長していたという。しかし、新型コロナ禍によってフライトができない時期が続き、生活者にとっては海外旅行自体が縁遠いものになりつつあった。そんなムードを少しでも変えようと、ニュージーランド航空では、新型コロナによる規制が緩和され始めた2022年7月から、ニュージーランドの魅力や自由な旅の楽しさを伝えるキャンペーン『ニュー自由ランド』を実施していた。日本からニュージーランドへの観光客も徐々に増えつつあり、一定の効果があったと評価しているという。
それに続くキャンペーンとして企画されたのが、今回の「ハネムーンって、一度だけ?」キャンペーンだ。50組100名に成田-オークランド往復航空券を抽選でプレゼントするという大胆なキャンペーンを企画した意図について、矢我崎氏はこう話す。
「狙いの一つは、話題づくりです。ニュージーランドへの関心を高めるためにも、今までよりも大きな企画で何か目立つことをやりたいと思っていました。そのアイデアの一つが航空券のプレゼントキャンペーンだったのですが、5組10名ほどのキャンペーンは珍しくなく、どうせやるなら50組100名分のプレゼント企画にして、インパクトを狙おうと考えました」
「もしかしたら当たるかも!」と期待できる大規模なキャンペーンにすることで、ニュージーランドにあらためて注目してもらい、海外旅行に行きたい意欲をかき立てようという考えだ。100人分の座席を確保できる日程から、出発日は2024年6月13日、帰国日は6月17日に決定した。
矢我崎氏は「単なるプレゼントキャンペーンではなく、ニュージーランドへの旅行が“自分ごと化”となる、何かストーリーが必要でした」と話す。議論を重ねる中、6月はジューンブライドと呼ばれる結婚式の多いシーズンでもあり、「ハネムーン」というキーワードが浮上したという。
「本当にハネムーンとして行かれる人だけをターゲットにするのではなく、ハネムーン以来、数十年海外旅行に行っていない人や、新型コロナ禍で海外旅行を自粛していたカップル、家族や友人同士など、年代問わず間口はできるだけ広げようと考えました」(矢我崎氏)。
そして考案されたのが、「ハネムーンは、一度だけ?」というフックのあるキャッチコピーだ。ハネムーンが一生に一度なんてもったいない。大切な人と何度でもハネムーン気分で旅行しよう。そんな今までになかったハネムーンの新しい考え方を創出した。その思いは、ニュージーランドの魅力とともに、ボディーコピーで丁寧に伝えている。
全15段広告のビジュアルは、ニュージーランドを代表する景勝地、テカポ湖。天の川を捉えた広々とした星空と、テカポ湖の象徴でもある教会の建物を含めた美しいビジュアルが目を引く。ビジュアルにテカポ湖を選んだ理由は、数年前、旅行会社のアンケートで「プロポーズされたい場所・したい場所」として世界で一位に選ばれたからだという。
朝日新聞読者のパスポート保有率が高く、旅行検討層にリーチできる
今回、キャンペーンは新聞広告とデジタル媒体で展開した。新聞広告を選んだ理由について、矢我崎氏は次のように説明する。
「とてもいいコピーができたので、インパクトのある広告をできるだけ海外旅行に関心のあるターゲットに届けたいと考えました。デジタル広告はターゲティングできるメリットがありますが、ニュージーランドに興味があると推察される層はあまり広くないことから、同じ人に何度も広告が届いてしまう可能性があるんです。それは逆効果になる可能性もあるので、きめ細かに調整する必要があると思っています。かといって、ターゲットを広げて海外旅行に関心が薄いことが予測される方々に届けるのも、効率が良いとは言えません。そうした課題がある中、幅広い層に届けられる可能性が高い新聞を選びました」
新聞広告の掲載先として朝日新聞を選んだのは、読者のパスポート保有率の高さだったという。
2022年外務省・旅券統計によると、日本人人口におけるパスポート保有率は17.1%。一方、朝日新聞社が読者に2024年4月に調査したところ(※)、保有率は約40%と高水準で、期限が切れたが更新予定を含めると60%超という結果だった。旅行会社や外国政府観光局からの広告出稿量も朝日新聞は他紙よりも多いなど、海外旅行に意欲がある層にリーチできる可能性が高いことも加味したという。
※「J-MONITOR」(新聞広告共通調査)より
実際、広告掲載後は「予想を超える大きな反響だった」と矢我崎氏。広野氏は「キャンペーンのスタートから旅行の出発日まで1カ月半ほどと短く、応募の際の必須記入項目も多かったので、ひょっとしたら定員割れするのでは・・・と心配していました。しかし、最終的には、20代から80代と幅広い年代からの応募があり、応募者数は数万人規模となりました」と話す。
特に情報解禁の初日の朝、4月22日付の朝日新聞朝刊が配布された直後から、紙面に掲載した二次元コードから続々と応募があったという。「リリースの配信はこの日の朝9時で、それよりも前にものすごい数の応募があったんです。それは確実に新聞広告の効果です。反応も早く、正直なところ、ここまでしっかり手応えを感じられるとは思っていなかったので、本当に驚きました」(矢我崎氏)
新聞広告掲載後、SNSでも「たしかにそうだよね」といった共感の声や、「ニュージーランドはたしかにすごく良い場所だった」といった、過去に旅行したことを思い出したような投稿もあったという。新聞広告を掲載した感想について、広野氏は次のように話す。
「早朝、朝日新聞からの応募者の中心はシニア層で、朝日新聞に掲載した二次元コードからの応募者総数も想定以上でした。今回のキャンペーンは幅広い層を狙っていましたが、ニュージーランド航空はもともとシニア層の利用客が多いことが強みでもあります。そのため、シニアの方々の旅行意欲をかき立てることは大切なミッションでもあったので、新聞広告を通じて良い反応を得られてとても満足しています。15段の全面広告は久しぶりに掲載したのですが、新聞媒体にも活用の仕方次第では可能性があることがわかりました」
キャンペーン後も続いた応募者とのコミュニケーション
今回のキャンペーン企画の背景には、ニュージーランドがもともと抱えている課題もあった。ニュージーランドへの旅行に関する調査をすると、「ニュージーランドには、いつか行ってみたい」という好意的な声が圧倒的に多いものの、実際、行動に移す人の割合が少ないこと。そのため、「いつか」ではなく、「今、行ってみたい」と、行動に移すきっかけづくりが必要だと考えていたという。
そんなニュージーランド航空の思いが届いたことは、応募理由のアンケートからも読み取れる。「コピーに共感した」「妻を誘ってみようと思う」「コロナ禍で行けなかったから、旅行にいきたくなった」という、狙い通りのコメントが寄せられたという。
さらには抽選で外れた人にも「たくさんの方々に応募していただいた感謝の気持ちと、抽選にもれてしまったおわびを伝えたい」と、航空券を値引きしたセールを実施。そこでも予想を超える反響があったという。「売れ行きは期待していなかったのですが、予想以上に購入していただけました。『すっかり旅行に行く気分になっていたので、買います』とコメントを寄せてくださった方もいて、本当にありがたいです」と広野氏。
当選した人の帰国後のアンケートでも「非常に良いコメントが戻ってきている」と矢我崎氏。結果は集計中だが、「満足度も非常に高く、絶対にもう一度行きたいという回答が、今のところ80%以上」だという。「ニュージーランドは人々が親切で治安が良く、食材豊富で食事もおいしいので、日本人の口に合いやすいと思います。自然の豊かさはもちろんのこと、ニュージーランドの自由な雰囲気を味わえる街歩きも楽しいので、とにかく一度行っていただくと、その良さを実感していただけると思います」(広野氏)
ニュージーランドは、ユーモアを大切にしているお国柄という。「独創性や革新性はニュージーランドの国民性でもあり、面白いことが大好きなおおらかな方々が多いんです」と矢我崎氏。「ニュージーランド航空のカルチャーも同様で、機内安全ビデオを見ていただけるとわかるのですが、かなりユニークな内容です。今回のキャンペーンのような話題となる新しくて面白いことに、今後も挑戦していきたいと思っています」と締めくくった。
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