「人を喜ばせる魅力」を、マーケティングで最大化

 2009年、総合通信販売大手のフェリシモが社名変更20周年を記念し、1992年以来の復刻発売を行った「500色の色えんぴつ」。発売から1年間で5万件を超える売り上げを記録するなど、販売促進活動が高く評価され、第2回日本マーケティング大賞地域賞に選ばれた。同じ商品を、月ごとにデザイン・色などを変えて届ける「コレクション的販売手法」を特徴とする同社商品の中でも、担当者が「新規市場を開拓した」と位置づける商品のマーケティング活動が評価されたことは、大きな自信につながっているようだ。同社販売企画チームの野村義浩氏とWEB推進チームの藤原悠子氏に話を聞いた。


500色というゴール設定
その過程を楽しんでもらう

――「500色の色えんぴつ」の販売促進活動が、第2回日本マーケティング大賞の地域賞に輝きました。

野村義浩氏 野村義浩氏

 昨年の第1回を含めて、名だたる企業・団体のマーケティング活動が受賞されており、その仲間入りができたことは光栄です。この商品は、500色を毎月25本ずつ、20カ月をかけて集めるという手法のもと、2010年5月現在で約5万2千人のお客様にご購入いただいています。20回をかけて5万人を超える方に商品をお届けするということは、単純に考えても100万回以上、お客様との接点を持てることになります。マーケティング活動を通して、そんな機会が実現できていることを評価いただいたのでは、と喜んでいます。

――商品の特徴を教えてください。

 例えば「赤」をとっても、その中に微妙なグラデーションの変化を持たせて、色を表現していることです。さらに「新鮮なラディッシュ」「インカの太陽」「夕暮れの彼岸花」といったように、オリジナルのネーミングと、色のイメージがさらにふくらむストーリーを全色に付与しています。500本が時間の経過とともに完成していく、そのプロセスまで楽しんでいただけることも特徴のひとつ。仮に500色一括での販売であれば、「アーティスト向けの専門的なツール」で終わっていたかもしれません。

藤原悠子氏 藤原悠子氏

 また20カ月という販売期間も、当社商品では異例の長さです。しかし大多数のお客様が購入を中止せず、最後までご購入いただけるのではと感じています。500色という「ゴール」を明確に設定し、すべてそろった瞬間の「壮観な」姿をお客様がイメージしながら、20カ月を楽しんでもらっているのではないでしょうか。

――ヒットの背景は、どんなところにあると分析していますか。

 「描く」という、色えんぴつ本来の機能を超えた「完成していく魅力」、さらには「人を喜ばせる魅力」に尽きるのではないかと思います。「20カ月間、こっそり娘のために集めて、すべてそろったらプレゼントしようと思います」「子どもと、色の名前あてゲームを楽しんでいます」「この商品のおかげで同僚と共通の話題ができ、新しい職場が心地よいものになっています」など、お客様から寄せられるエピソードは、すべてにストーリーがあり、私たちも感動しています。


ウェブ時代に不可欠な、バイラルを巻き起こす仕掛け

――受賞理由のひとつに「ウェブ上のコミュニティーで、顧客との関係強化をめざした」ことがあります。

 18年前の販売当時と大きく違うのは、やはりウェブ環境の発達です。お客様とは20カ月の間、お付き合いが続きます。毎月お届けして終わりではなく、その期間をいかに楽しんでいただき、お客様との結びつきを強められるかを念頭に置き、ウェブでのコミュニケーションを展開しました。具体的には「500色の色えんぴつ」の専用サイトを開設。商品の特徴を際立たせたコンセプトムービーを作成し、感性を刺激する構成を意識したほか、その中で「2010年、どんな色にしたいですか?」「あなたの都道府県を色にすると?」「あなたの初恋は、どんな色ですか?」など、色にちなんだコミュニケーションページを設定。「500色のある生活」を一緒に楽しんでもらう仕掛けを行いました。どれも非常に盛り上がり、好評企画として継続中です。お客様にとっては「500色のだいご味を、双方向で体感できる機会」に、私たちにとっては「コミュニケーションの潤滑油」として、ウェブを活用できていると思います。

2009年 4/11 朝刊 2009年 4/11 朝刊

――各メディアでの戦略は。

 この商品が発売される2009年1月ごろから新聞、雑誌、ラジオなど各メディアからの取材をいただきました。おかげさまで多くのお客様から関心をお寄せいただき、上々の滑り出しができました。さらに4月には新聞の全15段広告を出稿し、商品告知とウェブへの誘導で、さらに大きな波を呼び起こすことができました。そこに「受け皿」として、ウェブサイトを用意し、お客様との結びつきを強めていきました。「バイラル(クチコミ)」の力も大きいですね。復刻発売の盛り上がりがパブリシティーとして自然に醸成され、全15段広告が起爆剤となり、ウェブで定着、というひとつの流れができたと思います。現在、特に積極的な広告活動は行っていませんが、継続的にご購入いただけているのは、購入者からの発信によって広がっているところも大きいのではないでしょうか。

――今後の抱負をお願いします。

 今回の色えんぴつのように、長い期間で販売する「長期予約型コレクション」に、私たちは注力しており、日本マーケティング大賞の受賞は大きな自信になります。時代とともに社会状況や市場のし好も変わり、それらの動向をとらえて商品を発表するのがマーケティング活動だと思いますが、「500色の色えんぴつ」には、時代を越えて受け入れられる「人をしあわせにする力」が備わっていると感じます。当社の商品があることで感じてもらえる生活の豊かさを、今後コミュニケーションを通じて生活者にどう伝えられるか。この事例を「財産」として、生かしていきたいと思います。

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