日本市場でもっとも魅力的なプレミアムブランドを目指す
自動車産業に吹く逆風の中、昨年度は全世界における販売台数を4.1%増加させ、史上初めて百万台を突破したアウディ。国内においても、新型A4をはじめとする9モデルの果敢な新車攻勢で前年比5.4%増と存在感を高めた。今年は創立百周年のアニバーサリーイヤー。ドミニク・ベッシュ社長は、「これまで以上の挑戦の年になる」と語る。
──昨年の成功をどう見ていますか。
成功という言葉を使うのは時期尚早です。アウディにとって本当の成功とは、日本市場のポテンシャルをすべて開拓することですから。ただ、よい業績を残せた理由は、2年前に開始した戦略を一貫して前進させてきたからだと思います。戦略というのは、積極的な新車導入とマーケティング活動によってブランドの理解を深めることと、質量両面におけるネットワークの開拓、そしてお客様に最高の体験と満足を提供するという3点です。
──アウディブランドのコアな価値とは。
一つめは先進。これは技術のみならず、販売やマーケティング活動における新しい挑戦もそうです。二つめは洗練。特にアウディのクオリティーの高さは、日本人の感性に合致したものだと思います。そして三つ目はスポーティー。それらのすべてをシンプルに伝えるとするならば、アウディに乗るということは他のドイツ車のブランドと違い、財力の表われではなく、テイストだということでしょう。
── 各社が環境技術に取り組む中、高性能と低燃費の両立を目指す「ダウンサイジング」という独自コンセプトを推進しています。
より環境に配慮した車を生み出すことは、我々にとって大きな挑戦です。多くの競合はハイブリッド技術や電気自動車のような環境技術に開発資本を集中させています。しかし、実際にこれらの車のマーケットシェアはまだ全体の5%以下であり、アウディは市場全体に目に見える形でインパクトをもたらす技術が必要だと考えています。その答えのひとつが、排気量を下げながら過給器を用いてパフォーマンスを高め、走る楽しさを失わずに燃費と環境性能の向上を図る「ダウンサイジングコンセプト」です。
また環境への関心の高まりとともに、消費者が車に求める機能も変わってきていると思います。かつて車は移動のための道具でしたが、現在はライフスタイルの一要素という面が高まりました。我々は昨年から積極的な商品攻勢をかけていますが、今年もそれは続きます。10年ほど前、アウディには5つほどの車種しかありませんでしたが、現在は細かいモデルを入れれば約40のラインナップがそろっています。
──アウディ ジャパンは、「2009ミス・ユニバース・ジャパン」に協賛しています。最終選出者には、Audi TT Coupéが贈呈されるそうですが。
昨年12月、アウディ フォーラム東京でファイナリストの方々とお会いしました。もちろん皆さん美しいですが、アウディが価値を置いているのは外面的な美しさだけではありません。美しさとは内面的な輝きを作り出すプロセスにこそあるもので、例えばそれは何かに挑戦する生き方であったり、現状に満足することない挑戦心が生むものです。さらなる洗練を求める気持ちに、我々は共感しています。
──2009年の目標は。
まず数字的なことを申し上げますと、プレミアムセグメントでのアウディのマーケットシェアで昨年の16.3%を上回り、17%を超えることです。また登録台数においても、日本市場での過去最高の記録を塗りかえることです。そして質的な目標は、もっとも魅力的で、もっともダイナミックなプレミアムブランドとして、日本のお客様に認知されることです。
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休日に心掛けているのは、「発散と吸収」。サーフィンやゴルフで自分を解放し、また月に一度は歌舞伎やオペラなど、芸術に触れて感性を研ぎ澄ます。「偉大な功績とは、大志と愛情の結果であるというのが自分の信念。仕事が好きであるということが、よい結果を残すためのガソリンだと思います」。42歳。
略歴
1991~ 1993年
フォルクスワーゲンAG 製品輸出担当マネージャー
1993 ~1998年
アウディAG
この間、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、スペイン、トルコ担当セールスマネージャーを歴任
1999 ~2002年
フォルクスワーゲングループ フランス、アウディ事業部
セールスプランニング&ディストリビューション担当マネージャー
フランス担当セールスマネージャー
2003 ~2004年
フォルクスワーゲングループ シンガポール、アウディ事業部
アジア・パシフィック地域 マネージングダイレクター
2004 ~2007年3月
アウディ コリア マネージングダイレクター
2007年4月
アウディ ジャパン 代表取締役社長 就任
文/松身 茂 撮影/星野 章
(『広告月報』2009年03月号)