「かかわり」が消費を動かす <キーパーソンは「グランマ」世代>

 人はさまざまな人との「かかわり」の中で生きている。夫や妻、両親、子ども、兄弟、祖父母といった家族から、職場の仲間や友人、地域の人など・・・。日ごろ「かかわり」のある人々から、私達の生活や意識はどのような影響を受けているのか。 2010年3月に関東と関西の主要エリアを対象に「かかわり意識調査」を行った。調査結果によると、「かかわり」がいろいろな行動に影響を及ぼしていることがわかった。特に「かかわり」の幅が広い女性でその構造をみると、祖母、母、娘、姉妹、友人といった女系の幹がどっしりと根をおろし、その根幹には50代、60代の「グランマ」世代の存在がある。 新聞読者の中心でもあるこの「グランマ」世代が、女性の「かかわり」を通して、どのように消費や意識に影響を与えているのか、またその構図の中で新聞はどのような役割を果たしているのかを2回にわたって紹介する。

女性の資産はふだんの生活で築いた多くの「かかわり」

 ふだんの生活の中で、日常的なやりとりや何らかのお付き合いのある人を尋ねたところ、圧倒的に女性はかかわっている人の幅が広いことが確認できた(図1)。「職場の同僚や上司」を除きすべて女性の方が高く、特に家族関係では「夫」「自分の母親」「自分の子ども」「自分の姉妹」が、仲間関係では昔からの友人だけでなく、「子どもを通して知り合った友人、知人」「近隣の人、地域のコミュニティーを通じた友人」といった、大人になってから自ら築いたネットワークともいえる存在が目立つのが特徴的だ。年代別では20代、30代と、その母親世代にあたる50代、60代の「母娘」の関係の強さがうかがえる。

女性の「かかわり」は消費行動にも大きな影響

 この1年間に購入したものを見ると、女性は婦人用品や化粧品以外にも紳士用品や子ども用品、菓子類に生活用品と、かなり幅広い消費を行っている(図2)。女性の紳士服や紳士用下着の購入率は高く、既婚女性に限れば紳士用下着は男性とほぼ同率となる。

 60代女性の購入品からは、「ベビー服、ベビー用品」やランドセルなどの「子ども服、子ども用品」「おもちゃ」など、孫等へのプレゼントであることが明らかだ。

 実際、この1年間に購入したものが、それぞれ誰のための買い物だったかを尋ねると、夫や子ども、母親など家族のためと答えた人は女性全体の約8割にのぼり、家族以外の友人や知人のためと答えた人も女性全体の4割を超えた(図3)。男性では家族のための消費が5割、仲間のための消費が2割弱であることからも、いかに他者との「かかわり」によって女性の消費が生み出されているのかがわかる。

図2
ふだんのお買い物目的分類

生活上の課題についても、女性は多くの人とかかわる

 子どもの教育や両親の介護、身の回り品や大型家電の購入など、生活上の課題から買い物にまつわることまで、女性は「かかわり」のある人々の中で様々な相談を行っている。いくつかの項目から、その特徴を見てみよう。

子どもの教育・進路についての相談相手

 子どもの教育・進路については20代女性が「夫」の次に「母親」に相談しているのが特徴。30代女性も「夫」「その他の友人・知人」に次いで3割以上の人が「母親」に相談している。グランマ(祖母)世代が娘世代を通じて、孫にかかわっていることがうかがえよう。

 


両親や祖父母の介護、医療についての相談相手

 両親や祖父母の介護、医療については夫婦間で話し合っている状況が垣間見える。20代、30代では「自分の母親」、50代、60代では「自分の姉妹」「自分の子ども」にも相談している割合が高まっている。

 


食や健康についての相談相手

 食や健康に関しても20代、30代女性と「母親」とのかかわりの強さがうかがえる。男性は年代が高くなるにつれ、「妻」への相談が強まる傾向があり、ここでも50代、60代女性の「母親」として「妻」としての家族の中での存在感の大きさが見えてくる。


洋服や靴、化粧品など身のまわり品の購入についての相談相手

 50代女性は「その他の友人・知人」に次いで、「自分の子ども」に相談しており、60代女性では「自分の子ども」が圧倒的に一番の相談相手となっている。20代女性にとっても「自分の母親」は「その他の友人・知人」に次いで高く、30代、40代女性でもその傾向が見られることから、ファッション関連の買い物における「母娘」間のやりとりは年代を超えているようだ。


テレビや冷蔵庫など大型家電の購入についての相談相手

 大型家電では全般的に「夫」の関与が高くなっている。年代別の特徴をみると、20代女性では既婚率も低いせいか「自分の母親」に相談している人が一番多い。一方、50代、60代女性では「自分の子ども」が「夫」に次ぐ相談相手となっており、この年代においては、家電の選択に子どもの世代がかかわっていることがわかります。

女性の「かかわり」の中核は50~60代の「グランマ」世代

 生活上での悩みから消費にまつわる相談まで、20代、30代女性の母親世代にあたる50代、60代女性の影響力の強さと広がりを見てきたが、彼女達は経済的な面でも家族運営の中心にいることが(図4)から確認できる。また、「家族の中で女性の意見が比較的強い」という項目に対して6割近くの女性が同意し、男性ではトータルのスコアは女性ほどではないものの、年代が上がるごとにその意識は高まっていることから、この世代が家族にとって大きな存在であることは疑いない(図5)。

図4、5

新聞の情報は「グランマ」世代を中心とした女性の「かかわり」から広がる

 これまでの女性の「かかわり」から、50代、60代の「グランマ」世代の、「母」として、「妻」として、「祖母」としての存在感の大きさが見えてきた。この年代の「娘」にあたる20代、30代女性との「母娘」のつながりが、お互いの暮らしや消費に影響を与えあっている。

  「日ごろかかわりのある人にどのようなことを話していますか」という質問からも、20代、30代女性は「お金に関する話題」「仕事」「美容や健康」「グルメ」「ショッピング」「旅行」などについて母親と話題にしている(図6)。その母親にあたる50代、60代女性にとっては、新聞がこうした話題の情報源となっている(図7)。

 また、「新聞はあなたにとってどのような存在ですか」との問いに対して、この「グランマ」世代は「世代を超えて共有できる」「誰かに伝えたくなる情報がある」「家族にとって必要な」「友人や仲間と共有できる」という評価がどの年代よりも高く、新聞の情報が女性の「グランマ」世代を中心とした「かかわり」を通して世代を超えて広がっているのだ。

図6、7
 「商品のブランド認知が上がっても、なかなか売り上げに結びつかない」という声を最近よく聞く。それでは、いったい人は何によって購買へと動かされるのだろうか。
 
 今回の「かかわり意識調査」結果から、女性の他者との「かかわり」の幅広さと、日ごろの生活や意識への影響力の強さが確認できた。女性は自分自身の考えや判断だけでなく、あらゆる人との「かかわり」によって、いろいろな動きを生み出している。その「かかわり」から生まれる生活シーンやニーズは、同時に消費のシーンやニーズを創り出している。消費力のある女性の「かかわり」の構造を紐解くことが、ものを動かし、新しい市場を発掘するヒントになるのだ。
 
 世代を超えて共有でき、女性にとって「誰かに伝えたくなる情報がある」新聞は、女性の「かかわり」を通して広く波及し、影響を与える。新聞を通して女性の「かかわり」の源泉となる「グランマ」世代を刺激し動かすことが、新たなマーケットの創出につながるのである。

「かかわり意識調査」調査概要
【調査対象】20~69歳男女個人(楽天リサーチモニター)
【調査地域】関東圏 東京30キロ圏/関西圏 近畿2府3県主要地域
【標本サイズ】6,500サンプル
※居住市区町村、年代別の人口構成比はACR調査に準じている
【調査方法】インターネット調査
【調査期間】2010年3月5日~8日
【調査企画】朝日新聞大阪本社広告局
【調査実施・レターヘッド】(株)市場調査社 大阪