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2026.05.22

「au卒業応援サプライズ企画」で生徒たちに何年後も記憶にのこる体験を 朝日新聞社の学校ネットワークを活用

KDDI株式会社
「au卒業応援サプライズ企画」で生徒たちに何年後も記憶にのこる体験を 朝日新聞社の学校ネットワークを活用

KDDIは、auのCM出演者が卒業式にお祝いコメントを届ける「au卒業応援サプライズ企画」を2021年から実施している。朝日新聞社と朝日学生新聞社は、独自の学校ネットワークを活用し、実施する学校の募集をはじめ、事務局対応や開催後の情報発信など同企画をサポートしている。本企画を実施する背景や狙い、若年層向けのコミュニケーションについて、KDDI ブランド・コミュニケーション本部 コミュニケーションデザイン部長の山中雅貴氏に話を聞いた。

「お客さまの心に」認知の先にある純粋想起 卒業式に着目した理由

――au卒業応援サプライズ企画が誕生した背景を教えてください。

山中氏 au卒業応援サプライズ企画は、卒業式は誰もが思い出に残るものであり、それががもっと思い出深いものとなるように、auのCM出演者が卒業式にサプライズでお祝いコメントを届けるという企画で、2021年から実施しています。今年は、全国約100校の応募の中から選ばれた10校の中学校・高校に向けて、auのCM「三太郎」シリーズに出演されている有村架純さんから「卒業お祝いムービー」をお届けしました。また、希望する学校にはauのCMソング『とどけ、ぜんぶ。』を卒業生が合唱するプログラムも盛り込んでいます。

事例紹介KDDI画像1_KV1 KDDI提供

 この企画を始めたのは、今ではスマートフォンはいつも肌身離さず持っているものですが、普段の生活の中で通信ブランド自体を意識される機会が少ないという課題があるからです。もちろん、テレビCMなどの広告など露出を増やせば、一定の認知は得ることができます。ただ、私たちが長年大切にしている指標は、その先にある「純粋想起」です。お客さまの心の中に、auに対するポジティブな感情をどう残していくか。その問いの答えとして私たちが着目したのが、人生の大きな節目である「卒業式」でした。

 今はAIをはじめ、テクノロジーが進化していますが、人の心の動きそのものは変わらないはずで、卒業式で体験した感動は、何年経っても語り継がれるものだと思います。そんな一生の思い出となる卒業の場にauも参加させていただき、数年後、ふとした瞬間に「そういえば、あのときauが・・・」と思い出してもらいたい。そんな思いから、auのCM出演者がサプライズでお祝いコメントを届ける「au卒業応援サプライズ企画」をスタートしました。

事例紹介KDDI画像7

――今年で6年目となります。一過性の施策ではなく、継続されている理由は。

 たとえば、auの「三太郎」シリーズのお正月CMは、毎年元日から放映し、今年で12年目を迎えました。応援歌のようなCMソングとストーリーのある内容で、今ではSNSで話題にしていただけるほど、恒例行事として受け入れられています。au卒業応援サプライズ企画も同様に、「au」ブランドの純粋想起を獲得するために継続が必要だと考えています。

「とどけ、ぜんぶ。」記憶に刻む楽曲とメッセージ

――今年は「とどけ、ぜんぶ。」というメッセージを起点としたコミュニケーションが展開されています。この言葉に込められた思いを教えてください。

山中氏 KDDIの事業の根幹は「通信」であり、社会のインフラとしての役割を担っています。しかし、ただ電波がつながるだけでは十分ではありません。通信によって新しいコミュニケーションが生まれ、大切な誰かと誰かがつながって思いが届く。それこそがお客さまにとっての本当の価値だと捉えています。そこで、私たちは「つながること」にとどまらず、その先にあるお客さまの体験や喜びに寄り添っていく—そんな思いを込めて、今年は「とどけ、ぜんぶ。」というオリジナルの楽曲をつくり、そのメッセージを軸にコミュニケーションを展開しています。
 このサプライズ企画では、希望する学校にはCMソングを卒業式で合唱してもらっています。その狙いは、サプライズの体験に、歌の記憶を重ねるためです。10代の頃の思い出の曲を大人になって聞き返すと、当時の風景や感情などが鮮明に蘇ってくることってありますよね。そんな風に、auのCMソングも思い出の一部になれたらいいなと思っています。

事例紹介KDDI画像2_ムービーカット KDDI提供

――タレントからのメッセージ動画の内容で工夫されている点や、こだわっていることはありますか?

山中氏 まず、「とどけ、ぜんぶ。」というメッセージを届けることが一番の目的なので、タレントからのコメントにauのサービスに関するセールストークなどは入れていません。最も意識しているのは、タレント本人の口から、必ずそれぞれの学校名を呼んでもらうことです。冒頭で自分たちの学校名が呼ばれると、「自分たちに向けられた特別なメッセージだ」と受け止められて、会場の熱気が一気に上がります。

独自の学校ネットワークで朝日新聞社が運営サポート

――朝日新聞社をパートナーに選ばれた理由や、期待されたことは何でしょうか。

山中氏 この企画の初回は、auのSNSでオープンに参加校を募集しました。生徒さんや保護者の方、PTA会長など多方面からたくさんの応募をいただいたのですが、実施に向けて進めていく中で「学校独自の許諾」や「組織内の合意形成」といった高いハードルがあることがわかりました。
 そこで、2回目以降は朝日新聞社と連携し、運営から情報発信まで一貫してお願いしています。朝日新聞社にお願いしたのは、媒体力はもちろん、教育現場とのネットワークをお持ちだからです。学校関係者の方々からの信頼が厚い朝日新聞社や朝日学生新聞社のブランド力を活用させていただけることは、我々にとって非常に大きなメリットだと感じています。実際、校長先生をはじめとする意思決定層に直接企画の趣旨を届けることができるようになり、現場の調整も非常にスムーズになりました。

事例紹介KDDI画像3_高校2校 KDDI提供

――参加された生徒や学校関係者からはどのような反響が寄せられましたか?

山中氏 実施後のアンケートでは、生徒さんから「一生の思い出になった」「いつもテレビで見ている俳優からメッセージをもらえて貴重な体験になった」「これからも続けてください」など、喜びの声をいただいています。また、卒業式に参加された下級生からも「羨ましい、ぜひ続けてほしい」という声がありました。さらに、事後の様子をエモーショナルにまとめた動画を弊社のYouTubeに公開しています。そちらには、保護者の方からも感謝のコメントが寄せられていました。

YouTube「とどけ、ぜんぶ。卒業ver.」

――メディアでも取り上げられていましたね。

 メディアへの波及で特に力を入れているのが、地方のローカルテレビ局です。今年は、14番組ほどで取り上げていただきました。ローカル局の番組がTikTokなどSNSの切り抜き動画として広がり、結果的に全国に拡散されることも珍しくありません。この広がり方には手応えを感じています。
 社内からの評価としては、活動自体は非常に賛同されています。ただ、「このよい取り組みを、より多くの人たちに知ってもらうにはどうすべきか」という認知拡大が、常に今後の課題として挙げられています。

事例紹介KDDI画像5

届ける相手は人、客観的な視点を持ち続ける

――今回の企画も含め、学生や若年層に向けたコミュニケーションについて展望をお聞かせください。

山中氏 若年層向けのコミュニケーションについては、様々なアプローチを模索しています。中高生などへの直接的なデジタル広告のターゲティングには年齢制限があるため、保護者の方向けのコミュニケーションが多くなりがちです。だからこそ、このサプライズ企画のように、中高生時代「auが思い出になる体験を届けてくれた」という実体験を直接提供できることに意義があると思っています。

――最後に、今回のサプライズ企画のような、相手の心に寄り添い、感情を揺さぶるために、山中さんが普段から大切にされていることを教えてください。

山中氏 「若い子だから、Z世代だからこうだよね」と一括りにするような、表面的なマーケティングトレンドを根底に置くのではなく、自分が面白いと思うこと、その先で常に「一歩引いた視点」を持つよう心がけています。企画を考えている最中は「こんなことやったら感動するだろうな」と作り手として盛り上がりますが、一度立ち止まる。自分の身近な人に伝えたときにどう感じるか、そうした視点を大切にしています。
 どんなにテクノロジーが進化しても、結局届ける相手は人間です。人の感情は毎日違うものですし、一億人いれば一億通り、みんなバラバラですよね。最新のメディアを使うことが正解なのではなく、その先にいる人にどう感じてもらいたいか。客観的に見たときに、その目的が正しければ手段として選べばいい。あくまでも、目の前の「人」を前提に置くべきだと考えています。

事例紹介KDDI画像8