親しみやすさと圧倒的インパクトによる企業レピュテーションの獲得

 2006年に光洋精工と豊田工機の合併により誕生したジェイテクトが、10周年の節目を迎えるにあたり視点の異なる2種類の広告を出稿。BtoBの取引を中心とした同社の広告戦略は、インナーコミュニケーションやリクルーティングを主眼に置いています。

キャラクターを使用して製品・技術の特性を分かりやすく

※画像は拡大表示します。 2015年11月25日付 朝刊(名古屋本社版)<br />(c)Fujiko-Pro 2015年11月25日付 朝刊(名古屋本社版)
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 2015年11月25日(水)、朝日新聞が実施している広告特集シリーズ「藤子・F・不二雄×朝日新聞 みんなの未来ドア」に「見えないところで社会を支える技術」というテーマで広告企画を掲載したジェイテクト。人気キャラクターを使用し、親しみやすさを強調した紙面は社内外で大きな反響を呼んだ。

 製品写真の掲載だけでは、一般消費者にアピールしにくいBtoB企業。「紙面に登場したキャラクターの世界観は、ものづくりを通じて未来を語る当社のビジョンと合致しました。自動運転やIoTなどアニメの世界での出来事が現実になりつつあること、そして、その実現に同社の技術・製品が深く関わっていることを効果的に伝えられました」と、同社広報部の水藤嘉亮主任は手応えを語る。

 株主、投資家、取引企業、工場の近隣住民など、同社を取り巻くステークホルダーとの信頼関係構築はもとより、この広告展開で同社が期待を寄せていたのが、従業員の士気向上や企業としての一体感醸成などインナーコミュニケーションの側面だ。06年に光洋精工と豊田工機の合併により誕生して以来、それぞれの出身母体によって会社への“軸足”の置き方が異なることは、同社の大きな課題のひとつだった。社内報を通じ「ひとつのジェイテクト」を読びかけてきたが、内部の人間による発信に限界も感じていた。

 「新聞広告という外部視点が加わることで、互いをリスペクトしあえる関係が築かれ、従業員一人ひとりの『自分はジェイテクトの人間だ』という認識を高めることができました」と水藤氏。さらに、広告紙面が家庭や社会生活の中で話題に上る機会が増えたことも、従業員としての誇りや自覚を芽生えさせているという。

「歴史ある若い会社、ジェイテクト」150年の歴史と弛まぬ挑戦心を発信

2016年1月6日付 朝刊 2016年1月6日付 朝刊

 一方、合併から10周年の節目を迎えた2016年、同社では「歴史ある若い会社、ジェイテクト」というキャッチコピーを用いた広告展開に注力している。そのコンセプトは、企業規模にふさわしいレピュテーションの獲得だ。

 広告企画考案にあたり、同社は地元・愛知県在住の理系学生を対象に、BtoB取引を中心とするものづくり企業のイメージに関するヒアリング調査を実施。業界内知名度と一般社会における知名度の乖離、という課題を突きつけられた。「単にイメージが良くないのか、事業内容や業績が認知されていないのか、とにかく深刻な危機感を抱きました」と振り返る水藤氏。

 新卒者数の目減り傾向が続き、競争が激しさを増す採用活動を優位に戦う上でも企業認知とブランドイメージの向上は喫緊の課題。そこで、10周年をPRする広告展開では、母体となった光洋精工と豊田工機が積み重ねてきた計150年の歴史を明示しつつ、両社の融合体であるジェイテクトが新たな10年を迎えたことを「歴史ある若い会社、ジェイテクト」というフレーズでシンプルに表現。さらに、イメージキャラクターとして市川海老蔵氏を起用し、歌舞伎という伝統芸能の世界で革新への挑戦を続ける姿に同社のビジョンを重ねた。1月6日付で掲載された本紙全面広告では、あえて製品写真を掲載せず、海老蔵氏の“眼力”に象徴される迫力を強調。「未来に向けた革新に切り込む情熱」をイメージした赤と黒のスラッシュ構図など、圧倒的なインパクトで読者の目を惹きつけるデザインが各所で話題となっている。

 また、昨年11月には同社では初めてとなる広告に関する記者発表を実施。一般紙や経済紙に加えてウェブニュースでも取り上げられるなど、「想像以上に反響が大きかった」と水藤氏。今後は学生向け企業説明会での紙面掲出や、新聞広告のビジュアルと連動したウェブ展開など、リクルーティングツールとしての活用している。

“ビジネスのコミュニケーション手段”新聞広告ならではの価値

水藤嘉亮氏 水藤嘉亮氏

 10周年のPRに新聞広告を活用した理由を、水藤氏は次のように説明する。「レピュテーションの向上とともに、取引先企業や従業員間の会話のきっかけとして活用することが今回の広告展開の大きな目的でした。テレビCMも並行して展開していますが、やはりビジネスの世界では『新聞広告を見ましたよ』という話題こそ、スマートなコミュニケーション手段。迷わず新聞広告を選択しました」

 また、主体的な態度で読まれる新聞はメッセージを正確に届けやすく、形として残ることにも他の媒体にはない価値を見出している。「例えば、広告紙面を社内報に挟んで一人ひとりに届ければ、自宅のリビングに飾って励みにする従業員がいるかもしれないですね」と水藤氏。

 情報があふれかえる現代、同社が掲げるメディア戦略のキーワードは「とがらなければ刺さらない」。世界各地に136のグループ会社を持ち、グループの総売り上げが1兆円を超える企業規模にふさわしいレピュテーションを示すため、今後も新聞広告を中心にクリエーティブな広告展開を推し進め、確たる同社のコンセプトをグローバルに発信していく。